ラキオスとバーンライトとの戦争勃発……
 それは大陸にある各国に争いの炎を燃え上がらせるには十分な情報だった
 まず聖地の東方にあるアガルティア王国が二国の争いに呼応するかのように、北にある神聖サーギオス帝国に攻撃を開始したのである
 その情報が聖地に着き、早速会議が開かれたのである

「っかしまぁ……俺達『聖地』も甘く見られたもんだな」
「透夜……一応会議中ですよ」

 透夜のあからさまに不機嫌そうな言葉に、初老の女性が嗜める この女性が聖地の教母を努めるイヴェル・ロシュフォルンである
 86歳と言うその年齢ながらも、それをあまり感じさせない足腰の強さがある、精神的にも肉体的にも強い女性である
 そのイヴェルの注意に透夜もその表情を抑えるが、この聖地の政治を任される、通称『聖十二人衆』の一人、騎士カリム・グラシアに「一応私たちも同じ気持ちです、イヴェル様」と発言する

「せやけど、アガルティアがサーギオスに勝つ見込みがあるんか……うちは正直疑問や」
「多分、初手の一歩でつまずくでしょうね」

 はやての疑問にあっさり答えたのは、カリムと同じ聖十二人衆の一人の科学者バブレット・デビッシュの右腕とまで言われる、ベルンスト・ビューローである
 ちなみに当のデビッシュは国境にある砦の整備のため、この場にはいなかったりする

「サーギオスには、国境ギリギリに『法王の壁』をしいています これを破るのは私たち聖地が誇る、エースの一人高町なのは嬢、及びその愛弟子であるスバル・ナカジマ嬢でも簡単なことではないでしょう」
「もし仮に破れたとしても、次は『秩序の壁』と言う訳か」

 自身の言葉を引き継いで発言した透夜の言葉に頷くベルンスト
 ちなみに法王の壁や秩序の壁とは、外見の印象で言えば、中国の万里の長城を連想すると分かりやすいだろう
 問題はそれに使われているレンガであり、それら一つ一つに強力な魔力をかけられており、それを壊すには並大抵の力では不可能なのである
 もちろん、城門にも同じ仕掛けを施されているので、壊すのは簡単ではない

 「それでどうしますか?報告を聞く限り、アカルディアは軍の殆どをサーギオスの方に向けたと言う事ですが」

 イヴェルの言葉の意味に、その場のメンツは思わず首を傾げるが、すぐさまその意味を理解する

「……やるしか、ないんじゃないのか?流石に首都制圧は無理だと思うけど……」

 透夜の言葉に、皆が頷く 上手くいけば、自分達が大陸制覇の足がかりになるチャンスが転がり込んできたのである 躊躇している暇はないだろう……皆、そうおもっているからだ


  戦士達の大陸統一志 第1話 行動開始!


 神聖サーギオス帝国……この国は大陸のちょうど中央にあり、秩序の壁で首都を、そして国境を法王の壁で国境を防ぐ、一目には防御力を自慢とする国である
 兵力は力に勝るスピリットを使うだけでなく、ペカサスやドラゴンを育ててその背に人間を乗せる、いわゆる「ペガサスライダー」や「ドラゴンライダー」を育ててる為、攻撃力も侮れない

「陛下 アガルティア王国がこちらに攻撃してくるようですが、どうしますか?」

 この国の皇帝である、アルツェンハイマーの私室に入ってきた男は、ドラゴンライダーの中でも屈指の力を持つ、秋月瞬である
 彼はサーギオスの士官学校に通っており、現在ラキオスに所属している高嶺悠人とはライバルの関係にあった
 そのため、イレギュラーな形とは言え、悠人と敵対関係になれた事を喜んでいる

「ハン……状況は?」

 アルツェンハイマーは目の前にある食事を貪りつつ、瞬に問いただす

「秩序の壁に攻撃を開始しましたが、特に被害はありません これに呼応するように北からダーツィ大公国も攻撃してきていますが、こちらも特に被害はありません」

 瞬の報告が終わると同時に、彼に杯が投げられうる

「つまらん報告をしてくるな!食事の邪魔だ!出て行くがよい!」
「は……」

 うやうやしく頭を下げて、瞬は部屋を出て行く
 それと同時に瞬は声を殺して笑い出す

(フフ……せいぜい今のうちに贅沢を味わっておくんだな、糞皇帝が…… この大陸を統べるのはこの僕……秋月瞬だ! そうでなければ高嶺悠人が統べるべきなんだ!)

 その静かな笑いはいつの間にか高笑いになっていた




「ハリオン!ナナルゥ!おまたせ!」

 ラキオスとバーンライトの戦いは、現在ラキオスに軍配が上がっている
 悠人を中心とした部隊で、バーンライトの北側にある主要都市を制圧したものの、バーンライトはそれを待っていたかの様に、もう一つあるルートからラキオスを攻撃したのである
 その情報を得た悠人は、兵の半分を残し、重要拠点となる砦に向かったのである

「それで戦況は?」
「特に酷い状況にはなっておりません 敵は戦力を小出しにして来ているため、対処に困りませんでした」

 悠人の問いに赤毛の少女……ナナルゥ・レッドスピリットが簡潔に、そして淡々と答える
 スピリットは奴隷として自身達より力のない人間達に扱われ、虐げられている種族である そのため、ナナルゥのように感情が失ってしまう者も決して少なくないのである
 しかし悠人がラキオスに仕官してからは、彼女に感情と言うものが現れるようになり、彼女の仲間は少なからずそれを喜んでいる

「敵が見えてきました〜!」

 ハリオンの言葉に悠人は彼女から双眼鏡を借り、それの確認をする
 バーンライトの数は人間、スピリットあわせて千人程である

「よし、援護をする!最初の攻撃はナナルゥとヒミカに任せる!」
「「了解!」」
「純白の理力よ……五色の燐光となりここに集えッ!エレメェェェンタル!」

 悠人が叫ぶとともに、2人のレッドスピリットの両腕に赤い光が灯る バーンライトの兵たちにもその光は見えた物の、特に疑問に思う事も無く砦に突撃してくる

「マナよ、炎のつぶてとなれ 雨の如く、かの者たちに降り注げ ……フレイムシャワー!」
「マナよ、我に従え!炎のつぶてとなりて、敵を燃やせ! ……ファイアボルト!」

 その直後、バーンライトの兵たちに炎の雨が降りそそぐ 兵たちは苦しみの声を上げ、次々と地面に膝を付く

「よし、俺達は攻撃を開始!前衛はアセリアとセリアに任せる!エスペリアとハリオンは二人のフォローを!」
「ん、任せろ!」
「「「了解!!」」」
「ここで一気にバーンライト首都サモドアを陥落させる!全軍攻撃開始!」

  悠人の叫びに、ラキオス軍は一斉にバーンライト軍に突撃していった

 次回に続く


 あとがき
 大陸群雄割拠SS とりあえずラキオスVSバーンライト風味です(どんな風味だよ)
 ネタがネタだけにもう少し政治的な物を絡めるのが賢いんでしょうけど、私の技術では今のところこれが限界だったりします(笑)
 しかしブログとHPではSSの書き方も微妙に変えなきゃダメだと痛感させられる今日この頃 取りあえずぎゅうぎゅうずめよりは今回のようなタイプの方が読みやすいかも(笑)

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