劉備が死に、5年経った太和一年(227年) 諸葛亮は劉備の後を継いで蜀の皇帝となった劉禅に、北東にある大国魏に戦争を起こす願いを建てた
 戦いは一進一退で、強いた結果は諸葛亮・ホウ統の後を継ぐであろう軍師にて、武芸にも秀でた麒麟児・姜維を得たぐらいである

 そして太和二年(228年) 諸葛亮は馬謖に、次の戦いで最も重要なポイントである街亭の守備を命じる
 しかし馬謖はその戦いでの総司令官に任命された喜びとその地位に固執し、その副官に任命された姜維や王平の言葉を無視し、自分の策で戦う事に
 それが災いして、魏の大軍師司馬懿によってその命運が風前の灯となって行った

「魏延殿!早く救援に行かないと!」
「オ前ハ……行ケ……」

 その救援に向かっていた姜維と魏延ではあるが、途中で魏延は進行方向とは逆の方向を向いて立ち止ってしまった

「魏延殿……」
「早ク……行ケ……!」

 姜維はその態度に、反骨の相があるからか、とやや不信感を抱きながらも先に進む事数分、気付くと魏延のいた所から大きな声が上がっていた

「まさか……魏は我らを挟撃するつもりで……」

 姜維は今更ながらに魏延の態度の意味を理解し、今まで以上の速さで馬謖の救援に向かう事にした


    反骨の相と呼ばれた男 後半


「よう、諸葛亮 聞けば大変な目にあったそうだねぇ」
「ホウ統……どうかなされたのですか?」

 街亭の戦いから数ヵ月後、魏の生命線の一つである陳倉をこれから攻めようとする諸葛亮の元にホウ統が訪ねて来た

「いやね、馬謖の首を斬ったって聞いたからさ」
「しかし、そうでなくては軍規が……」
「そうだねぇ 馬謖はあんたのお気に入りだから、首を斬らないと思ってからさ」

 ホウ統の表情を見ると、自分は少々からかわれた事に気付いた諸葛亮である

「ともかく、みんなよく頑張ったみたいだねぇ 特に趙雲殿と魏延殿の頑張りは凄かったそうじゃないか」
「そうですね こんなところで殿の威光がまだ残ってるとは思いませんでした」
「そうだよ、ちゃんと魏延殿を認めてあげなきゃ……劉備殿だって馬謖殿より魏延殿の方を認めてただろう?」

 ホウ統の言葉に、諸葛亮は劉備の遺言を思い出していた それは馬謖が「口先だけの男だから、重要な事を任せるな」と言う言葉である

「魏延殿も結構不満そうだったよ 今回の戦いで沢山の兵が死んだって」
「そうでしょうね 私が降格になろうと、死のうと前の戦いで死んだ者が生き返る訳では無いですからね」
「ま、これからは気を付けな じゃあこっちも暇じゃないし、また会おうや」
「はい」

 諸葛亮の返事に、ホウ統が天幕から出ようと……しなかった

「そうだそうだ 大事な用事を忘れてたよ」
「どうかしましたか?」
「ああ、黄忠殿と馬超殿、それに星彩殿の部隊の一部を借りたいと思ってね」
「呉を……攻めるのですね?」
「ああ、そろそろ頃合いだと思ってね 二、三年の内に攻撃できれば完璧だと思ってるんだけどさ」
「わかりました こちらは趙雲と姜維がいるから、問題無いと思います」
「それに月英殿もいるし、ね」
「ほ、ホウ統」
「まったく結ばれてから何十年経ってると思ってるんだい? ま、呉のほうは任せておきな」 

 言いたい事だけ言うと、今度こそホウ統は天幕から立ち去って行った

 ホウ統が来てから数日後、諸葛亮は陳倉に攻撃を開始した
 三国志の中でも数少ない、攻城兵器と守城兵器の使用合戦である
 諸葛亮は正面から激しい攻撃をしている最中に、魏延に特殊なルートに攻撃を指示して、城の中に潜入させた
 その作戦は見事にあたり、守城兵器を全て破壊された魏は混乱し、ここの守備隊長であるカク昭・王双は戦死した

 そして234年、諸葛亮は大軍を持って五丈原に攻撃した
 両軍共に士気が高く、戦いは一進一退の攻防を見せた
 蜀軍が木牛車と言う食糧を運ぶ道具を使ったと思えば、魏軍は投石機を使う……様々な策で互いを攻撃した
 そしてその中で三ヵ月が経とうとしたある日である……

「皆さん、私はもう少しで死にます」

 諸葛亮は激務の中で何時しか病気にかかり、病床の中で戦いの指揮を取っていたのである
 主だった将は、ここにいて、彼の見舞いをしていた

「司馬懿が次に攻めて来た時、この書を開けば問題なく対処できるはずです そのための道具は姜維に命じて設置しておきました」

 それから諸葛亮は、呉に攻めているホウ統の援護や、三国を統一した後の事など、様々な指示を出した後、眠るように死んでいった


 それから一月後、蜀は五丈原にて曹ヒと司馬懿を倒し、呉との国境にある白帝城で、孫権と陸遜を返り討ちにして、三国を統一したのである

「姜維殿?どうかなすったかい?」
「あ、ホウ統殿、魏延殿がどこにもいらっしゃらないのです! どこにいるか、知りませんか?」
「あっしは今ここに来たばっかりだからねぇ 知る訳ないだろう」
「そ、そうでした」

 五丈原における戦いの後、皆が気付くと、この戦いの功労者の一人、魏延がいつの間にかいなくなっていることに気付いたのである
 ホウ統が来るまでの一月、全軍を持って探しているが、影も形も見当たらないのである

「ま、戦いが終わったんだし、自分は用済みだと思ってるんだろ?」
「そ、それはそうかもしれませんが……祝いの席にぐらいは……」
「まぁ良いじゃないか!こっちも黄忠殿が祝いの場に出ないどころか、引退するって言ってるんだし」

 姜維は軍師の一言に耳を疑った 黄忠が80を超えた老人だと言うのを知っていたが、戦いが終わって即引退するとは思わなかったからである

「あの老人も魏延殿同様、戦いを好む気質だからねぇ ま、黄忠殿はのんびり余生を楽しむって言ってたよ」
「そうですか……」
「ま、魏延殿も黄忠殿も後はあっしらに任せるって言いたいんだろ?だったら、二人の気持ちに応えなきゃ、男じゃないよ」
「はい……」

 数日後、劉備と諸葛亮、両方の墓に花束が置かれていた 付近の住民に聞くと、仮面を付けた大男が、数日前に花を買っていたと言う話が多数出た
 その仮面の男……魏延は蜀を出て、新たな戦いを求めて旅立っていったのだ……結局姜維はそう思う事にしたのである……

 終わり

 あとがき
 初の三国無双SSでしたが、やっぱり難しいですね シリアスって言うよりは真面目な話、程度の表現した方が正しいSSでした
 これを書いて私が思った事 私はまだまだだなぁ……って事ですね もっと精進しなきゃ……

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