朝6時30分 町の中に響くのが鳥の声だけの中、少女は目をさまします
 彼女は、様々な事情で2年前に今の母親に引き取られました
 しかし母親を始め、様々な人たちに愛され、彼女は優しく、そして明るく元気に毎日を送っています
 これは、少女……高町ヴィヴィオの1日を描くものである……


ヴィヴィオの1日


 ヴィヴィオは目を覚ますと、当然のように顔を洗います
 朝食はいつも母・高町なのはの手料理です
 なのはの実家は喫茶店をやっているらしく、その腕は超一流だったりします
 30分前まで部下たちに鍛錬を施していたはずなのに、ちゃんとしたものを出るのが不思議でならないヴィヴィオは、少し前になのはに聞いてみましたが、

「ヴィヴィオがお嫁さんになったら分かるかもね」

 とはぐらかされてしまいました 要は聞くなという事でしょう
 朝食を食べ終わると、学校に行く準備です
 ヴィヴィオの通うザンクトヒルデ魔法学院はこの世界……ミッドチルダの中でも結構厳しい学校のようですが、彼女はコロナ、リオという二人の親友と共に楽しくやっています
 授業が終わると、コロナやリオと一緒に遊びに行きます
 学院の図書室で本を読んだり、近くの公園で魔法の練習をしたりします
 本日は3人で射撃練習場という名前だけを聞くと結構ヤバそうな所に行くことになりました

「えーっと……」

 きょろきょろとヴィヴィオが見渡すと、目的の人物を見つけたようです

「ヴァイス〜!」
「お、来たな〜」

 ヴィヴィオを迎えた人は、ヴァイス・グランセニックという男性で、2年前に起きたJS事件と呼ばれる戦いでなのはと共に闘った為、ヴィヴィオとも仲良しだったりする

「んじゃ、やってみるか?」
「は〜い!」

 元気な返事とともにヴァイスが持っていたライフル型魔法銃……ストームレイダーを受け取る
 所定の位置につくと、ヴィヴィオはストームレイダーを数メートル先のターゲットに向け、トリガーを数回引きます

「ん、なかなかやるねぇ……」
「しっかり勉強してますから!」

 ヴァイスの誉め言葉に、ヴィヴィオは視線をターゲットに固定しつつ答えます
 1時間程経つと、魔力が少なくなったのか、ヴィヴィオがへたへたと地面に座り込んでしまいます

「よし、なかなか魔力が上がってきたみたいだな」
「ママたちの鍛錬の賜物だよ」

 ヴァイスの言葉にヴィヴィオも笑顔で返します
 ヴィヴィオが笑顔の為、親友二人も笑顔になってしまいます
 ヴィヴィオの疲れが少しとれた後、家に帰ることになりますが、ヴァイスが送ってくれるという事なので、3人はその言葉に甘えることにしました
 その途中、こそこそと言った感じの話が聞こえたので、それを聞くことになってしまいます

「で、これが……」
「なるほどなるほど〜ここに名前を書けばいいのね?」
「そうそう!これでヴィヴィオちゃんも世のアイドル路線まっしぐらって訳だ〜!」

 会話をしているのはどうやらヴァイス同様なのはの同僚だった、シャリオ・フィニーノ……通称シャーリーと、アルト・クラエッタ、そしてルキノ・リリエの3人でした
 会話がまる聞こえなのもそうですが、内容も内容だったので、ヴィヴィオ達は思わず苦笑いをしてしまいます
 しかしそんな時です

「シャーリー……アルト……ルキノ……」

 シャーリーたちの後ろから、地獄の底から聞こえるようなおぞましい声が響きました
 3人の言葉を聞いていたのか、なのはが閻魔様のような表情で立っています

「まずはヴィヴィオの意見を聞いてから……だよね?……少し、頭冷やそうか……」

 いつの間にかなのはの手には、彼女の相棒とも言える杖、レイジングハートが握られていました
 母を止めようとしたヴィヴィオですが、突然自分の体が持ち上げられるのを感じました

「えぇ!あ、ナカジマのおじちゃん……!」

 ナカジマのおじちゃんとは、なのはの愛弟子である、スバル・ナカジマの父親である、ゲンヤ・ナカジマの事でスバルを含めた6人の娘とヴィヴィオとは当然仲良しだったりします 回りをよく見ると、ゲンヤの長女、ギンガ・ナカジマもいます
 ゲンヤは目でヴァイスに合図を送るような仕草をすると、ヴァイスはコロナとリオを脇に抱えます

「ギンガ、頼んだ!」
「え!?ちょ、ま……!」

 ギンガの返事を待たずに突然ゲンヤとヴァイスははのはのいる方向と逆の方向に走り出します
 二人に色々聞こうとするヴィヴィオでしたが、直後に聞こえるシャーリーたちの悲鳴にとりあえず何も聞かない方がいいのかなぁ?などと思ってしまいました
 とりあえず、ヴィヴィオはゲンヤとヴァイスに家まで送ってもらって、夕食の下準備を始めます
 数分後になぜか思いっきりすっきりしたなのはが帰ってきました
 夕食はなのはと一緒に作ります ヴィヴィオがお嫁さんになった時に色々できた方がいいだろうと、なのはと一緒に決めた事です
 ヴィヴィオはなのはとこうやって何かをやる時間が大好きなので、もっと料理も魔法も上手になりたいと思っています
 夕飯を食べると、なのはに見守られながら、魔法の練習を少しやって、お休みの時間になります

(明日も楽しい日になればいいな……)

 ヴィヴィオはそう思いながら、眠りに身を任せることになりました

おしまい



おまけ

 ゲンヤ・ナカジマ三佐は、仕事では良き上司、家に帰ったら6人のよき父親として、周りの魔導師達から尊敬を集めています
 その娘たちのうちの3人、スバルとディエジ、そしてウェンディは仕事を終えておしゃべりを楽しみつつ自宅のドアを開けました
 先頭に立って家に入ったスバルは、真っ先に「あるもの」をみて、思わず固まってしまいました

「スバル?どうしたっすか?」

 唐突に固まった姉を不思議に思ったウェンディとディエジはスバルの脇を通って、前に出ると、スバル同様固まってしまいました
 それもその筈、姉妹の父親、ゲンヤの顔がボコボコにされていたからです
 何事かと聞こうとしましたが、奥にあるキッチンにいる人物がかもしだすオーラで何とか事情を理解してしまいました

(スバル……もしかして……)
(たぶん……ギン姉をスケープゴートにしたって話……)
(ギン姉……なのはさんの魔法を耐えたんっすね……)

 キッチンをよく見ると、この状況に呆れているチンクと、どうしていいか分からないノーヴェがいました
 5人は顔を見合せて、ため息を洩らすしかありませんでした
 ゲンヤがギンガに許しをもらったのは数日後でした

終われ

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