「ゆのっち、ゆのっち〜!これから沙英さんとこ行こ〜!」

 叫びつつ元気な女の子……宮子は隣の部屋に突入する
 突然の乱入はいつものことなので、ゆのと呼ばれた少女は笑顔でお茶を用意しようとする……が、その視線がとある一転に集中する

「宮ちゃん……その箱……どうしたの?」
「ん?やっぱり気になる〜?」

 宮子は相棒的存在の少女の言葉に期待半分、楽しみ半分の表情で答えた 


  ティーポットラプソディー


「で?……その箱には結局何が入ってるわけ?」

 二人が行こうとしていた部屋の主……沙英の視線が宮子の持ってきた箱に集中する
 この部屋にはもはやこのアパート「ひだまり荘」の住人である6人の少女が集まっている

「いつもの食べ物関係じゃ無いわね……開けてみてくれる?」

 お茶の用意をやろうとして、宮子にとめられた、沙英の隣人・ヒロが5人を代表して頼む

「はいは〜い!えーっと、ちょっとムズイな……っと、あいた!じゃ〜ん!」

 掛け声と共に、中に入ってた物を取り出す
 その中には……

「ティーポット?」
「それと、コップにソーサーなのだ〜!」

 ひだまり荘下級生コンビの片割れ、乃莉の言葉に宮子が嬉しそうに答える
 宮子以外の5人の視線が、ティーポットと箱の中に入ってる物に集中する
 一目見ても、これがそれなりに高い物だというのが分かる
 ……しかし、宮子を知る5人がとある疑問を頭の中に飛来する

「それで宮子……これを何かで当てたのは分かるけど……なんでいつもの食べ物じゃなくて、これにしたの?」

 沙英の言葉やそれに同意する皆の態度をまさに待ってました!と言わんばかりの表情になって宮子は答える

「実はヒロさんやなずなやゆのっちに、これでお茶を淹れてもらおうと思いまして〜!」
「あらあら、宮ちゃんは上手ねぇ〜」
「て言うか、私も〜〜〜!?」
「はうぁぅぁぅ……」

 宮子の明るい言葉に、ヒロはともかくゆのは顔を真っ赤に染める なずなにいたっては恥ずかしさが強く、人間の言葉を忘れてる

「宮ちゃぁ〜ん……私、お茶淹れるのそんなに上手じゃないよ〜!」
「ゆのっち!私はゆのっちの淹れたお茶が飲みたいのだ!」

 う〜、う〜、と抗議するゆのに宮子はいつも通りの笑顔で返す

「ふむ……」
「沙英、どうしたの?」

 ヒロの言葉で今度は沙英の方に視線が集まる

「あぁ、今書いてる小説なんだけどねぇ……
 いわゆる中世ヨーロッパとかそこら辺の騎士とメイドのラブコメとか言う奴なんだけど」

 沙英の言葉にヒロ以外の4人がゴクッ……と唾を飲む

「あぁ、そんなに堅苦しく構えないでいーよ……まだ設定云々も完全に固まってるわけじゃないから
 ……で、その小説を書く際、このティーポットは結構イメージ作るのに使えるかもと思っただけだよ」
「おぉ〜意外なところで私が役に立った!すごい!」
「ちなみにヒロインメイドの性格設定は今のところなずなだぁ!」

 宮子の言葉にやや悪ノリしたのか、ヒッヒッヒ……と沙英が答えたのだが……

「ええええええぇぇぇええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 数秒の間を置いて、なずなの叫びが部屋の中を木霊する

「だ、だいじょーぶだよ、なずな!沙英さんも今のところって言ったから、きっと使わないよ!」

 叫びとともに、真っ赤になって固まったなずなを真っ先に復活した乃莉がガクガクと揺らす

「ご、ごめんなずな!使わない!使わないから〜!」

 沙英達の努力の甲斐あって、数分後になずなが復活したのだが……
 この件で叫んでしまったのは、只単に恥ずかしかっただけで、自分を使っても問題ないと許可を貰ったのは別の話……


 終わり 

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