「こらこのみ!とっとと起きなさい!」

 毎朝の如く柚原邸(邸と言うほどではないが)では春夏さんの声が響く 今日は何時もより声が大きいけど
 今日は日曜日だから、そんなに神経質にならなくてもいいと思うが、今日のこのみは俺とデートの日だ 何時までも眠らせてその時間を減らす訳にもいかないし

「ふあぁ〜〜 タカくんおはよ〜」
「おはよう だらしない顔してないで、顔を洗っておいで」
「ふぁ〜〜〜〜い」
「タカくん、ごめんなさいね〜」
「いえいえ、いつもの事ですから」

 お料理中の春夏さんと談笑してると、笑顔のこのみが現れる うむ、今日も可愛い笑顔だ

「このみ、デートの日ぐらい、ちゃんと自分で起きなさい!」
「わかってるけどぉ……」
「まぁ話によると、何十個も目覚まし時計有るのに起きない上に、難癖付けてパフェをおごらせるやつもいるそうですから、ちゃんと起きるこのみはまだマシですよ」
「えへ〜♪ タカくんに褒められた〜♪」
「いやいやいや、褒めてないから!」

 このこのみの変な前向きさ加減は見習う……べきなのか?
 まぁそれはともかく、春夏さん特製の朝食を美味しく頂いた後のデートは、まずゲンジマルの散歩である
 デートなのに犬の散歩かい!と思う事なかれ このみとラブラブになる前から一応の日課である 家でのんびりも良いけど、こう言うのも悪くないしな


 彼女とのデートと覗き魔二人


「ホラ、ゲンジマル〜!お〜〜き〜〜て〜〜よぉ〜〜!タカくんと一緒に散歩行こうよぉ〜〜!」

 ゲンジマルを起こそうと早30分 まったくこの犬は……まぁいつもの事か
 こんな完全に人畜無害な犬ですら苦手にしてるタマ姉の神経が、ちょっと理解できないと思ってしまったのは内緒だ

「ほら、ゲンジマル ホネだぞ〜〜」

 無駄だと思いつつもホネを出してみるが、ちょっと見ただけで興味をなくしたようで、プイと明後日の方向を向く こいつめ……

「むぅ……しょうがないなぁ……今日はタカくんとデートだからコレで勘弁してあげる!」

 ゲンジマルに起こるような表情ではあるが、ちょっとだけ残念そうなこのみであった


「エヘヘ〜〜 タカくんとデ〜ト、タカくんとデェ〜ト♪」

 その残念そうな表情は数分であっさり笑顔になった まったくこのお姫様は……
 まぁ女は愛嬌って言うし、笑顔の方がいいんだけどな
 俺の腕に抱きついて嬉しそうなこのみに、俺も嬉しくなってしまう
 しかしその途中から、どこからか二つの視線を感じるようになる

「タカくん、どーしたの?」

 俺の様子に気付いたのだろう 可愛らしく首をかしげて俺に訪ねてくる

「誰かに見られてる」
「見られてるって……ちゃるとよっちかなぁ……?」
「……確かに二人いるみたいだけど……その二人にしてはちょっと様子が違うような気がする」

 そう 視線は完全に観察するような凝視と、控えめな視線の二つ このみの二人の大親友の視線ならどっちも真剣に覗くような視線の筈である

「このみ、あそこの曲がり角までダッシュ……行けるか?」
「任せるのでありますよ〜♪」

 嬉しそうに返事をするこのみと共に全力疾走 すぐあった電柱の陰に隠れて様子を見ると、俺達の様子を見ていた二人の姿が現れる
 それは……

「って、いいんちょかよ!しかも郁乃よ、お前もか!?」

 驚いた俺の言葉に、二人はちょっとバツの悪そうな表情になっていた


「つまり、二人は俺とこのみのデートしてる様を見たかった訳だ」

 喫茶店に行って、二人の事情聴取を開始すると、10秒と経たずに郁乃が事情を話してくれた

「あたしは別に興味無かったんだけどねぇ……この姉に無理やり起こされてね」
「わ、わ、わ、私も別に興味は、な、な、な、無かったんですからね!? ただ男の子と女の子のデートと言うものに……」
「お姉ちゃん、認めてる認めてる」
「はっ!?」

 郁乃に指摘され、あっさり真っ赤になるいいんちょである 全く……でも男を苦手としてるいいんちょもやっぱ恋には興味があるのな〜 そこの所は女の子と言ったところか
 ともかく隣のこのみもちょっと苦笑いである こんなこのみも可愛いなー畜生

「あんた、このみの今の表情もちょっと可愛いなーとか思ってるでしょ」
「ギクッ……」
「そうなの? エヘヘ〜〜〜♪」

 郁乃の指摘と俺のリアクションに、このみは満点の笑顔を見せてくれる やっぱりこのみは笑顔が可愛い……

「貴明、デレデレしすぎ 情けないよ」
「い、郁乃ぉ……」

 何だかんだで興味があるのだろう……郁乃も俺とこのみの雰囲気にニヤニヤしながら見つめてる
 その郁乃に注意をするいいんちょだけど……一歩間違えると自分がその表情をしていたことに気付いてないようだ

「ほ、ほら!行くよ、郁乃!」
「はいはい……全くこの姉は……」

 いいんちょの態度に郁乃はちょっとだけ呆れ顔だった

「仲良いよね〜、あの二人」
「仲良しなら俺達の方が上だろ?」
「そうでありました! えへへ〜♪」

 二人を見送った俺達は、今日一日デートを楽しんだのでありました……

 終わり


 あとがき
 欣ちゃんさんのHP「文読む月日」に、以前したリクエストのお礼として書いてみたSSです
 コンセプトはトラブルでツンデレ一歩手前になった愛佳ですね
 しばらくしたらピュアラブシリーズにこのシリーズも挑戦してみるのも面白いかもですね

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