子供と言うのは良く親の真似をしたがるものである
 オレと渚の娘である汐もその例に違わず、幼稚園の年長のころから良く料理や買い物、パン作り等、渚や早苗さんの真似をしたがるようになった
 前に早苗パンの件で追っかけあいをしていた早苗さんとオッサンを見て、何を思ったのか、汐が「私の事が嫌いなんですねぇ――――!」と叫んで家を出て行った事がある
 無論俺は追いかけて行った 途中で俺の悪友で汐の恩師でもある杏がその現場を目撃したらしく、後でさんざん冷やかされてしまった
 ……ともかくだ

「汐、重たくないか?」
「ちょっと重い……」
「無茶はすんなよ?また何時でも出来るんだからな?」
「うん!」

 そう 今俺は汐に膝枕をしてもらっている
 いつも俺が渚に甘えて膝枕をしてもらっていたのを見ていたから、自分もしたいと思っていたのだろう
 だが……

「朋也君としおちゃんが仲良しです!私とも仲良くしてほしいです!」

 いつもの事ながら渚が拗ねていた


  ピュアでほのぼの、そしていちゃラブシリーズ(予定) クラナド朋也×渚編


「いいですか、朋也君」
「はい」

 その後、俺は何故か渚に正座をさせられた なんかいつもと違うパターンの気がするんだが……

「最近、しおちゃんに可愛い可愛いと言い続けて、私には可愛いって言ってくれません!私にも可愛いって言って欲しいです!」
「……可愛いって……お前には最近綺麗になったって言ってた気がするんだが」
「た、確かに昨日綺麗だって言われましたけど、今は可愛いって言われたいんです!」
「お母さん……ヤキモチ?」
「あー……なるほどな」

 何故か俺の隣で正座をしていた汐の一言で、渚のお説教の意味が理解できた
 つーか、汐よ、何故にヤキモチと言う言葉を知っているのだ 俺が小学校の時にはその言葉すら知らんかったよーな気がするんだが

「先生が教えてくれた」

 あー……あいつか……なんでこー言う事を教えるのが好きなのやら……

「つか、汐!お父さんの考えてる事を読むんじゃありません!」
「お父さん、口に出して言ってた」
「はい、朋也君口に出して言ってました」
「そうか……」

 むぅ、迂闊な真似をしてしまったな、これは……これからは気をつけなきゃならん
 それはともかく……

「娘相手にヤキモチ焼くなよ……」
「で、でもしおちゃんばっかり可愛いって言ってると、自信をなくします!」
「だから綺麗になったって言ってるじゃないか!」
「たまには可愛いって言って欲しいんです!」

 なんつーか、堂々巡りになってきやがったな しょうがない……

「あー……渚は可愛いな いい子いい子」
「なんか適当なあしらわれ方をされたような気がします! 凄く最悪です!」
「……風子お姉ちゃん?」
「だなぁ……」

 風子と違うのはなんか鋭いって所かもしれん
 だが、ぷくーっとほっぺたを膨らませた表情はなんか良いかもしれん

「渚」
「なんですか!」
「そんなに可愛い顔をするなよ また怒らせたくなる」
「え……?」

 一瞬俺に何を言われたのか分からない顔になるが、その意味が心に届いたであろう瞬間に、瞬間湯沸かし器よろしく頭から湯気が出てくる

「と、と、朋也君……」
「おう、なんだ?」
「今、凄く恥ずかしい事をいわれた気がします!」
「言うなよ、俺だって恥ずかしいんだから!」
「お父さんとお母さん、仲良し」
「「う……」」

 汐の嬉しそうな一言に、俺と渚は何も言う事ができないのであった


「汐は寝たのか?」
「はい」

 夜になり、風呂からあがると、汐は何時の間にか布団の中に潜り込んでいた
 その傍で渚はとても穏やかで優しい表情で眺めていた
 それはとても綺麗で、何故か神秘的な雰囲気を醸し出している

「渚」
「どうかしましたか?」
「俺は、渚が俺の為にその表情をした事が無いと思う」
「朋也君……?」

 俺の言葉にきょとんとした表情になる 俺が何を言おうとしてるのか分からないのだろう

「まぁ、渚は俺の母親じゃないし、しょうがないんだけどな でも……」
「でも?」
「たまには俺の為にもそー言う表情をして欲しい」
「朋也君……」

 渚はその言葉にちょっと驚いた表情をしたが、すぐに元の表情に戻る

「朋也君、ヤキモチですか?しおちゃん相手にそれは駄目ですよ?」

 その優しい表情のまま、渚にだけは一番言われたくない一言を言うのであった

 おしまい


 あとがき
 まさにやっちまったな!って感じのネタになってしまいました
 でも他のカップリングでもこー言うのをやってみたいと思います

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