「えっと……ほら、ハンカチ……」
（う、うん……えぐえぐ……）

　ある日のデートの帰り、もうこれでもか、と泣きじゃくる彼女……リリィに、そっとハンカチを差し出してみる
　別に僕・トーマ・ナカジマが泣かせた訳では無い　僕達の近くにいる女の子の何人かも、リリィ同様泣いていたりする
　理由は扱く単純……映画館で、大恋愛の映画を見たからである

　母子家庭で育った主人公がとあるきっかけで大富豪のお坊ちゃんだと分かったのだが……その総帥の立場を引き継ぐ為に、努力する、と言うストーリーだったのだが……
　その過程でメイドなヒロインと恋に落ちたけど……最後に住んでいる豪邸が火事にあい、そこにヒロインに懐いている妹メイドだけが取り残され……
　主人公とヒロインは、その妹メイドを助けるために、その火事場に突撃し、命からがら助けることに成功して、ハッピーエンド、と言う物だった

　まぁ、正直に言えば、ヒロインをやってた女優さんよりもリリィの方が可愛くて綺麗だったー、とかそういうのはあるけど、ストーリーとしてはリリィの気持ちもよく分かる、と言うのも事実である
　どっちにしても、このチケットをくれた我が６人の姉には感謝の一言に尽きるのだが……

（えぐえぐ……）
（念話なのに、上手く泣けるよな、リリィって……）

　色々あって口がきけないリリィにとって、恐らくは「泣き声を上げる」事も出来ない筈なのに……
　こうやって泣き声を上げるリリィは、ある意味では器用なのかもしれない……
　それはそれとして、いい加減泣きやんで欲しいけど、ね


　ピュアでほのぼの、そしていちゃラブシリーズ　魔法戦記リリカルなのはＦＯＲＣＥ　トーマ×リリィ編


（ごめんなさい、トーマ……）
「いや、気にしなくていいよ」

　あの後、なんとか泣きやんでくれたリリィと一緒に、喫茶店に入って……一緒にお茶をする事にしたけど、リリィはしきりに恥ずかしがっている

「でも、リリィって感動屋さんだったんだね」
（恥ずかしい……）

　僕の一言が余程恥ずかしかったのか、顔を両手で隠し、只俯くだけ……
　なんと言うか……そんな仕草がとても可愛らしい、の一言に尽きる

（で、でも、素敵なお話だったね）
「うん　でも、ヒロインの女優さんよりも、リリィの方が可愛いよ？」

　俺の一言に、リリィはさらに顔を真っ赤にする

（でも、主人公の人は、トーマみたいでカッコいいかな？）
「え！？」

　そして、そんなリリィが次に言った台詞は……俺を真っ赤にするには、十分だった

（あのね、トーマ）
「？　どうしたの？」

　そんな俺の態度に、ちょっと嬉しそうで、そして珍しくちょっと意地悪な表情でリリィが問いかける

（私があの小さなメイドさんみたいに、火事の中に閉じ込められたら……トーマは私を助けに来てくれる？）

　その表情を見る限り、リリィは俺の答えを分かってる様だ　多分、言葉にして応えて欲しいんだろう

「勿論だよ　リリィは俺の大事な人なんだから」
（えへへ……ありがとう……）

　そして、俺の答えに……リリィは、顔を赤くしながら、俺が今まで見た中で、一番嬉しそうな表情になるのでした

　余談ながら数日後……

「うわ、リリィ、すっごく可愛い！」
（ホント？）
「うん！　てか、やっぱアイシスって器用だよねぇ……」
「いやぁ……スバルさんも中々に器用ですなぁ〜」

　夕飯を終え、リリィと一緒に使ってる部屋に戻ると、なんか部屋の中が騒がしい
　片方は残り一人の住民のアイシスだけど……もう一人は……スゥちゃんみたいだけど

「入っていいの？」
（と、トーマ！？）
「どーぞー」

　とりあえず、女の子ばかりいるみたいだし、声かけは基本だよね？　うん

（と、トーマ、待って！？）
「？　リリィ？　どうしたの？」
（は、恥ずかしい！）
「リリィ、ここまで来て恥ずかしがる事ないでしょ？　スバルさん、トーマを入れて上げてください〜」
（ちょ、アイシス！？）

　戸惑うリリィを余所に、俺はスゥちゃんの手によって、無理やり部屋の中に入れられる　……そんな事しなくても、入るのに……
　そんな俺の目に映ったのは……

（うぅ〜〜〜〜〜〜）
「ほらほら、トーマ〜　すっごく可愛いでしょ〜！」

　なんと、この前映画に出てたヒロインが着ていたメイド服を着ているリリィの姿でした
　多分この服を作ったのは、アイシスだろう……　元々こう言うのを作るのが上手な子だし……

「うん、すっごく可愛い　あの映画のヒロインと比べようがない位、可愛いよ」
（〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！）

　それをはっきり言葉にすると……リリィは、声にならない悲鳴を上げ、そのままアイシスの腕の中で気絶するのでした
　そんな様子を見ていたアイシスとスゥちゃんは、ニヤニヤ笑顔でした……

　おしまい

　あとがき
　はい、唐突に始まりました、ピュアラブシリーズリリカルなのは編……カップリングは、ＦＯＲＣＥからトーマ×リリィとなりました
　正直漫画版も完結してないし、書いちゃ駄目なのかもしれませんが……第三巻までの展開でインスピレーションが沸きだしてって……（笑）
　はっきり言わせてもらえば、喫茶店のシーンで終わらすつもりでしたが、Ｗｉｋｉで、それ以降は主役三人が一緒の部屋に住むと言うのを知ったので、メイドリリィをちょっと書きました
　つーか、メイドリリィが一番ボリュームあるだろ？とも言われそうなのも、また事実ですが、ね（笑）
　ちなみに、映画の元ネタは、以前ニコニコ動画で見たエロゲだったり……（苦笑）