「ふぅちゃん、嫌い……」
「う、汐ちゃん! ごめんなさいごめんなさい! 風子が悪かったからこっちを向いてください!」
「お前ら、一体全体何をしたんだ」
「あは……あははは……」

 俺が仕事から帰って来たその時、我が娘は風子からそっぽを向いて拗ねており、その原因であろう風子は今すぐにでも土下座をせんと言わんばかりの形相で謝っている
 俺の妻は、その原因を知っているのか、只々苦笑を浮かべるだけであった

「で? 真面目に何があった?」
「そ、それが……ふぅちゃんがだんごを……」
「いや、分かった! なんと言うか、全部分かった!」

 恐らくはヒトデにハマろうとしない汐に、風子がだんご大家族の事を馬鹿にしたんだろう……
 ……まったく、風子は……こんなんで俺らと同世代だってんだから、世の中は広いんだか狭いんだか……


   友情で10題 その6 仲直りは雨の日に



「それで風子は昨日しょんぼりしていたのか……」
「はい……なんと言うか、すいません……」

 次の日、雨で文字通り仕事が流れた俺は、伊吹家に行って、風子の様子を見に行くことにした
 芳野さんにその原因を説明すると、心の底から呆れた様な表情になってしまう
 そんな様子に、俺が悪い訳でもないのに、つい謝ってしまう

「風子……大人気なく拗ねるなよ……」
「風子、大人ですから拗ねてません」
「……大人だったのか」
「……大人ですよ」

 態度は全力で拗ねてます、と言わんばかりなのに、その物言いに俺は只々呆れるしか方法は無い
 やっぱここは初手から奥の手を使うとしますか……

「風子、これなーんだ?」
「?」

 風子が振り向いたその瞬間、俺は持っていた物をその面前に差し出す
 すると、風子の表情が一瞬で眩しい笑顔に変わってしまう

「それッ! それっ! ヒトデですかっ!?」
「おう、汐が作ったヒトデだぞ」

 そう……俺が風子に見せたのは、紙粘土で作られたヒトデであった!
 そして、風子はそれを手にとって、それの感触を確かめようとするのだが……
 俺はそのままヒトデを上に持ち上げ、風子に取れないようにする

「岡崎さんは極悪です! そんなイジワルをして楽しむなんて!?」
「タダでコレをやるとは言って無いだろ? 勿論条件がある」
「も、もしかして、ヒトデを条件に、私の体をむさぼるつもりですか? やっぱり岡崎さんは極悪人ですっ!!」
「……んな訳無いだろ……」
「……風子……お前、岡崎を何だと思ってるんだ……」

 そして、そんな俺に文句を言う風子だけど……その風子に、俺と芳野さんは、只々溜息を付くことしか出来ないでいる

「条件ってのは、勿論汐と仲直りする事だ ……お前はそれも出来ない駄目な大人なのか?」
「しますっ! 今すぐにでも仲直りします!」
「……仲直りしに行くのは良いが、傘ぐらい持って行けよ……」

 俺の提示した条件に、風子は傘すら持たずに、すぐに伊吹家を飛び出して行った……

 次の日の夕方……俺と芳野さんは、汐と風子の二人が仲良く散歩をしている姿を見かけた……
 どうやらちゃんと仲直りしたようで、ちょっと安心……

 おしまし

 あとがき
 と言う訳で、超が付く程に久しぶりなお題更新です
 ネタとなった雨の日ですが……全力で大人の都合と言う奴です(ぉ
 んで、今回の風子ですが……妙に某山田っぽく書いてしまった……良いのだろうか?(笑)

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