「はぁ……全く……」

 目の前の光景に、思わずため息が漏れる
 とりあえず悪い事では無い ……それでも、ため息を禁じ得ないのは、大きな理由がある

「ユート様、これをどうぞ」
「あ、ああ」

 目の前のバカップル……私岬今日子の幼なじみである高峰悠人……通称悠とその恋人、エスペリア・グリーンスピリットの二人が織りなす光景だったりする
 実の所、この光景を見るようになってから、早一月になろうとしている
 だけど、正直言ってこれに慣れるには、達観出来るほどの境地に達している訳でも無い
 ……所謂「はいあーん」と言うのを、このバカップルはやってくれているのである

「……えっと、エスペリア……おかわり頼む」
「はいっ♪」

 悠が茶碗を差し出すと、エスペリアは満面の笑みを浮かべる……やっぱり悠に食べてもらえるのが嬉しいんだろうなー……
 今にも鼻歌を歌いだしそうな笑顔で、ご飯をよそうエスペリア……って、ちょっと待って!

「エスペリア殿、今回もまた沢山盛られましたな」
「え、ええ……ユート様には沢山力を付けてもらわないと……♪」

 そう、私達の目の前には、ウルカが言った通り、悠の為に盛られた沢山のご飯……
 そしてその感想に対するエスペリアの答えも、全力で予想通り……正直言って「やってらんねー」の境地に入ってるとしか言いようが無い
 ……でも……

「ユート様、こちらもどうぞ」
「お、おう」

 悠の為に盛られた食事とは別に、エスペリアがスプーンによそったご飯が悠の口に持ってこられる
 悠自身、恥ずかしそうだけど、凄く嬉しそうな表情をしている
 だからこそ、文句の一つも言いたいけれど、我慢しているのが現状だったりするんだけど

「おい、今日子今日子」
「あによ」
「はいあーん」

 呼びかけられた方を見ると……あたしの恋人・碧光陰がス、プーンを持って、あたしの方を向いていました

「恥ずかしい事思いっきりするんじゃないよ、このロリ坊主っ!」


  恋人達を見守る10題 その8 余所でしてもらえないかと切に思います


「まぁ、それにしても、さ……」

 光陰を思いっきりしばいた後、改めて悠とエスペリアの方を向く
 ……仲良しなのは良いんだよ? ……仲良しなのは、さ……

「エスペリア、はいあーん」
「え、えっと……」

 ……つ、ついに悠が逆に……!

「エスペリアが何時も俺にしてくれてる事だ ……嫌か?」
「い、いえ、ユート様にしていただくのは……」
「エスペリアは俺の事が嫌いか?」
「いっ、いえ! お慕いしております!!」
「じゃあ、ハイ」
「は、はい……」

 …………なんなの…………なんなの、この砂糖を大さじ100杯ぐらい入れたコーヒーを飲んだ時の様な気分は…………

「ユート殿とエスペリア殿、さらに仲良くなられましたな」
「ん ユートとエスペリア、凄く仲良し」
「む〜……なんか仲間はずれにされてる気分だけど……」

 共に食卓を囲む、ウルカ、アセリア、オルファの三人はこのバカップルに対して基本的に好印象を持ってるみたい……
 でも正直言って……

「よそでやって欲しいよ、もう……」

 でも私の呟きも、このバカップルには届かないんだろうなー……まぁいっけど

「ユート様、今度はこちらを」
「おう」

 それでも――願わずにはいられない――
 このバカップルには、絶対に幸せになって欲しい 今までそれだけの辛い人生を送ってきたんだから――

「きょ、今日子……そろそろ足蹴にするの、止めてくれ……」
「人が良い気分になってる時に何言ってるのさ、このロリ坊主が――――!!!」

 はぁ、もう色々気分が台無しだわ……
 だからここはちょっと自棄食いでもしておきますか!

「エスペリア、私のお代わりお願い」
「はい、かしこまりました」

 終わり

 あとがき
 只一言 唐突に書きたくなった……それだけです
 いわゆるピュアラブの第三者視点的なストーリーに仕上げてみました

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