「はぁ……」
「カレハ? どーしたの?」

 雲ひとつない、と言う表現すら出来る天気のいい朝
 そんな空の様子とはうって変わって、私の親友の顔は凄く暗い
 何時もにこやかな笑顔で男共を落とすだけに、ここ暫くの彼女の表情は意外な物かも

「ボクで良かったら相談に乗るけど?」
「亜沙ちゃん……」

 悩みなんてなさそうなカレハの事だけど……色々思う所もあるだろうし、ボクにだって話を聞く事位は出来るもんね
 ……と言うより、話くらい聞かなきゃ、ボクはカレハの親友として失格だろうし、ね

「ホラホラ、おねーさんに全部ぶっちゃけなさい? ホラホラ〜♪」
「あらあら、亜沙ちゃんったら〜」

 私の態度に、カレハは何時もの通りにっこり笑顔
 この笑顔に沢山の男共がやられた、って言うけど、正にその通り
 と言うより、女のボクですら落とされそうな勢いなのは気のせい……?
 いやいや、そんな事より、今はカレハの悩みよ?

「それで? さっきまでの暗い溜息はどんな訳?」
「じゃあ……聞いてくださいます?」

 その直後……ボクがカレハから聞いたセリフは、思わず「は?」と聞き返したくなるものだった


  恋人達を見守る10題 その7 こじれる前になんとかしますか


「稟ちゃん!」

 カレハから話を聞いた僕は、昼休み、彼女の恋人である下級生の教室にまっしぐら
 その恋人さん……稟ちゃんは、唐突に表れたボクに、かなり驚いた表情をしている

「なんですか?」
「最近、カレハにイジワルばかりしてるってホント!?」

 ズカズカと稟ちゃんに近づきつつ問い質すと、稟ちゃんは思わずボクから目をそらす
 うん、どうやらカレハが言ってることは全部真実見たいだ
 その真実……カレハが最近稟ちゃんにイジワルばかりされてる、と言う物だ
 ……つまりはカレハの目の前で、稟ちゃんがわざと他の女の子と見とれるフリをして、カレハにヤキモチを焼かそうとしてる、って事なんだけど

「いやー……カレハ先輩がヤキモチ焼いて拗ねる時の顔が、凄く可愛くって、つい……」

 頭をかきつつ稟ちゃん まぁ、あの拗ねた表情の破壊力は確かに稟ちゃんの言う通りなんだけど、ね
 でも、聞く方としては、単なるお惚気かもしれないけど、当のカレハはかなり真剣
 だからこそ、稟ちゃんに一応釘はさしとかないとね
 稟ちゃんが調子に乗って意地悪をしまくって、ラブラブカップルが消滅、なんてのはちょっと問題だし? ……多分……ありえない話だとは思うけど……

「ともかく!」

 ボクだけでなく、クラスの女の子達……楓やシアちゃん、リンちゃん達にまで注意されてる稟ちゃん
 そんな稟ちゃんの注意を、再びボクに向けさせる

「カレハを悲しませたら、ボクが許さないからね?」
「はい」
「うん、良い笑顔♪」
「あらあら、亜沙ちゃんったら……私が稟さんを嫌う筈有りませんわ♪」

 稟ちゃんの答えに頷くボクだったけど……いきなり現れたカレハに、ボクたちはもう……全力で驚くしか方法は無い

「カ、カ、カレハ!? 何時の間に! て言うか、何時からいたの!? それより、何でここにいるの!!?」
「亜沙ちゃん、落ち着いてくださいな 楓さん達が稟さんに注意してる所でここにつきましたわ それに、ここには稟さんとお昼ををご一緒しようと思ってきましたわ」
「あ、成程……」

 凄く吃驚したけど、確かに今はお昼休み カレハが稟ちゃんと一緒にお昼を、と言うのは至極当然の話だからね

「はい、稟さん こちらをどうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 そして、いつの間にか封を開けて、お手製の料理を稟ちゃんの口に運ぶカレハ……いつもながら、なんて早技……
 稟ちゃんも真っ赤になりながらも、嬉しそうにそれを食べ始める

「美味しいです いつもながら」
「まぁ! 嬉しいですわ♪」

 そして稟ちゃんの感想で、真っ赤になりながら、満面の笑顔を見せるカレハ ……うん、この笑顔にやられる男が多いのには全くもって納得
 と言うよりも、周りの男共が悔し涙を見せてるし…… アンタ達はさっさと諦めなさい、と言いたいけど

「それでは、名残惜しいですが……放課後にまた」
「はい ……あ」
「? どうかしましたか?」
「いえ、あの……」

 カレハを呼び止めながら、口ごもる稟ちゃん はっはぁ〜ん……成程ねぇ…… なんとも微笑ましいこと

「色々イジワルしてすいません」
「あら! 私は気にしてませんわよ?むしろ稟さんが私の事を一番に想ってくださっているのを分かってるのに、変に拗ねたり意地を張る私も悪いんですのよ?」
「い、いえいえ、これは俺が」
「そんな、これは私が」
「はーい、ストップ! そこまで!」

 お互いに頭を下げ合う二人に、私は一旦ストップをかける 仲がいいのは、いい事なんだけど、これはちょっと無しの方向でお願いしたいわね

「とりあえず仲直り……とはちょっと違うけど、それが出来たんだし、それでおっけーにしとこうよ! ……ね?」
「そ、そうですね」
「そうですわね ありがとうございます、亜沙ちゃん」
「とりあえず稟ちゃん」
「? はい」
「あんまりカレハにイジワルしちゃダメだよ? 次はホントに嫌われちゃうかも……」

 言葉と共に稟ちゃんにヘッドロックを仕掛けるボクだったけど……

「あーさーちゃーんー!」
「しまった! 稟ちゃん、ボクは逃げるね!」
「もうっ! 逃げないで下さいましー!」

 結構足には自信のあるボクだけど……それにしっかり追いかけるカレハ
 その幼少の頃、かなりのお転婆さんだった、って言ってたけど、どうやら嘘じゃ無かった……のかな?
 ともかく、カレハの前じゃあからさまなスキンシップは控えめに、って所かな?

 おしまい

 あとがき
 毎度毎度お題でもそれ以外でも暴走しまくってます(ぉ
 とりあえず、お題的な意味では、多分コレでおっけーなんでしょうが……原作ファン及びカレハファンの皆さんにツッコミを貰いそうな展開になっちゃいました(笑)
 カレハの「意外とヤキモチ焼き」と言う性格の所しかマトモに使えてないですからねぇ 神界は一夫多妻だから妾は良いけど一番は私、って言うイメージが出たのかも……(笑)

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