それは、唐突に暇になって、実家の喫茶店―――翠屋のお手伝いをする事になった、天気のいい昼下がりでした

「なのは!」

 御親切にも、厨房のある裏口から入ってきた彼女――私の大事な親友の使い魔さんであるアルフさんは、切羽詰まった表情で私の前に現れました

「頼みがあるんだ!」

 そして、本当に切羽詰まってるのか、私の胸倉を、力いっぱいに掴んで自分の下に引きよせてそう言いました

「おい!返事をしろよ!」

 私が返事出来ていないと、アルフさんは、私の首をゆすって声を荒げます

「あ、あのー……アルフさん?」

 唐突の展開で、全力全開でハニワになっていた我が母・桃子が、我に返ってアルフさんを止めようとしてくれます

「……あ」

 そして、おかーさんの視線に気付いたアルフさんは、せき込む私に申し訳なさそうな視線を向けるのでした


 恋人達を見守る10題 その6 それで、本日のご相談内容は?


「全くもってすまん!」
「いえいえ!それで、落ち着きましたか?」

 翠屋の一角、アルフさんは自分の無茶に対して、本当に申し訳なさそうに、私に頭を下げまくってます

「それで、ご相談、ですか?」
「あぁ、そうなんだよぉ〜」

 だけど、私の一言で、アルフさんは申し訳なさそうな顔から一転……アワアワと気持ちが変に絡まるような表情に
 なんだか申し訳ないけど、なんだか面白いな……

「もしかして、ザフィーラさんの相談ですか?」
「ッ! 何で分かったんだ!?」

 アルフさんの態度に、適当に言ってみたら、なんとそれがビンゴ!
 それがどうも恥ずかしいのか、アルフさんは真っ赤になって、照れています

「そ、その……あいつと、もっと仲良くなりたくて、な」

 そう告白して赤くなるアルフさんは、とても女の子をしていて、とってもとっても可愛い、と私は思います

「はやてちゃん達に、ザフィーラさんの食べ物の好みとか聞いてみてはどうですか?」
「それだっ!」

 そしてそれを作って……と言おうとしたら、アルフさんは的を得た意見だな、と言いたそうに私を指さして、アルフさんの為に用意された物を一気に食べると、すぐさま出て行きました

「なのはのお友達は一直線だねぇ〜」

 その様子を見ていたお姉ちゃんは、にこやかにそうコメントしてくれました


「じゃあ、はやてちゃんに料理を教わることにしたんですか〜」
「あ、ああ……まぁな」

 その夜、アルフさんは私に電話をくれて、事の顛末を教えてくれました
 ……のは良いけど、なんだかさっきまでのアルフさんと違って、ちょっと歯切れが悪い どうしたんだろ?

「それで、何か、問題が有るんですか? もしかして、はやてちゃんに何か……」
「いや、はやてにからかわれたとか、そんなんじゃ無いんだよ……」
「?」

 アルフさんの態度から、はやてちゃんに何か言われたのかと思ったけど……どうも違うようだ

「いや、フェイトが、さ……」
「? フェイトちゃん?」

 意外な名前が出てきて、ちょっと吃驚 フェイトちゃん、どうかしたんだろうか?

「いや、フェイトが真っ先に私に相談してくれなかった、って拗ねちゃって……さっきようやく納得してもらった」
「あー……」

 一応フェイトちゃんはアルフさんのご主人様 やっぱりアルフさんの悩みは自分の悩みだ、と思いたい部分はあったんだろうな、フェイトちゃんも
 とりあえず、ケンカとかそう言った事にならずに済んで、よかったよかった……

 そして数日後……公園で、アルフさんが作った料理を美味しそうに食べさせてもらうザフィーラさんの姿を見かけました
 二人とも恥ずかしそうだったけど、楽しそうでよかったよかった

 終わり

 あとがき
 と言う訳で、恋人達を見守る10のお題、これにて全て終了となりました!
 なんかタイトルと微妙に違うなー、と思う部分も有りましたが、どれもこれも楽しく書かせてもらいました
 ともかく、この10の作品を読んでくれた皆さま方、ありがとうございました!

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