「か、勝平さん……」
「え、えっと……涼さん……」

 もじもじ、もじもじ……目の前の二人は、只みつめあうだけで、何もする事が無い

「あああぁぁぁ〜〜〜〜…………もうっ! じれったいわね!!」
「落ち着け、杏……あいつらにはあいつらのペースってモンがあるんだしさ……」

 隣にいる朋也は、唐突に、しかも問答無用にキレた私に驚く様子も無く、私を諫めてくれる
 いや、分かってるのよ? 恋のペースは人それぞれだって事ぐらいは……
 ……でもねぇ……

「朋也はじれったいと思わないの!? 只みつめあうだけで、もじもじもじもじもじもじもじもじ!!」
「だから落ち着けって……」

 8割方キレまくってる私に、呆れながらストップをかける朋也
 うん、分かってるのよ? 落ち着くべきだってのは……

「だが、すること位とっととやっちまえばいいのにな」
「いやいや、やっちまえばって……」

 朋也の一言……と言うより、表現の仕方に、椋と勝平に対する怒りが一瞬吹っ飛ぶ
 でも、朋也もあの二人の態度がじれったい、って感じてるのは事実みたいね

「そんじゃ、とっととなんとかするか?」
「え?」

 朋也の一言に、私の顔は凄い変な物になってる筈である
 それぐらい朋也の一言は、的を得過ぎているのだ

「お前としても、じれったいんだろ? だったら、無理やりにでもキスぐらいはさせるぞ」
「無理やりって、アンタ……」

 なんか朋也の今のセリフを聞くだけだと、すっごく嫌な予感しかしないのは私だけ?


  恋人達を見守る10題 その3 じれったいなぁ、もう


「おい、委員長に勝平」
「あ、岡崎君にお姉ちゃん」
「あ、朋也君に杏さん」

 朋也の問いかけにステレオで返す二人……こー言う所はカップルなのよねぇ……

「お前ら、今からすぐキスしろ」
「「ええっ!?」」
「ちょ……それ直球すぎるって〜〜〜〜〜!!!」

 朋也の問答無用……否、問答無用すぎる一言に、私達は只驚くしか無い
 まぁ、朋也は朋也で、椋と勝平のじれったい態度に辟易してた……そう信じるしか無い……でしょうね ……多分
 でも、流石にコレは直球すぎるような気もしない訳じゃないけど、ね

「仕方ない……な」
「え?」

 私達……と言うよりも、椋と勝平の態度に、朋也は只呆れたような表情をした後……ついてこい、と言わんばかりの態度で商店街の方に歩いて行く

「ちょ、何処行くのよ!?」
「んー……恋愛の達人の元?」

 私の問いに対する朋也の答えは……何故か疑問形だった


「んで、俺達の所に来た、って訳か……」

 朋也に連れられて来た場所は、古河パン屋
 つまり朋也は、渚の両親に、椋と勝平の手本になって欲しい……って訳ね なるほどなるほど……

「俺と早苗がラヴラヴなのは認めるが、それをわざわざ人に見せる程で無いと言うか……」
「オッサン! そこをなんとか!」
「だったらお前が手本になりゃいいじゃねぇか いっつもベタベタしやがってんだしさ」
「……っ!」

 おじさんの一言に、朋也の表情は驚愕に変わる……
 まさか、朋也の奴……

「確かにオッサンの言う通りだぜ……! ことみィ―――――!!」

 やっぱりと言うか、何と言うか……絶叫と共に店を出て行った

「……で、どーすんの? とりあえず何時までもお互いにもじもじしてる訳にはいかないでしょ?」
「……今日は、止めとくよ」
「……うん……」

 その姿を見て、二人にどうするか聞いてみるけど……うん、やっぱりそうなるよね

「でも、朋也君がちょっと羨ましいな 好きな人に好きな気持ちを素直に態度で示せるなんて……」
「私も……そう思います……」
「そう思うんだったら、手を繋ごうとするだけでモジモジするのは、もう止めてね」

 朋也が駈け出して行った方を眺めるバカップルにツッコミを入れると、その二人はちょっとだけバツの悪そうな表情をするのでした

 次の日、結局ことみの家に行かなかった私達三人は、朋也に散々文句を言われました いや、申し訳なく思ってるのは事実なんだけど、ね?

 終わり

 あとがき
 むぅ、なんか微妙に違うような……只単純にじれったいカップルが主人公じゃなくて、それを見てイライラする人が主人公になってるんですが……(苦笑)
 じれったく思う……的なストーリーじゃなくて、それをなんとかしようと空振りしてる……的なストーリーにしようとしたのが、ある意味原因なのか?とは思いますが

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