□5回裏 2番レフト 来ヶ谷唯湖 アウトカウント2 得点 生徒会1点

「来ヶ谷、か……」
「とりあえず、5回はここで終わらせるわよ」
「ああ、わかってるさ」

 普段通り、正に飄々とした態度でバッターボックスに向かう来ヶ谷を眺めながら、律太は真剣ながらも多少楽しそうな表情でリリに答えます

「……律太さん、楽しそう……?」
「あの人も高等部の時の担任は紅女史だったからな…… こういう時の肝の強さはすごいというか、なんというか……」
「全くだ 一歩間違えると、逆転されかねない状況だってのに……」

 そしてそんな律太の態度に、なずなも敏感に感じ取り、それと同時に透夜も稟も多少の呆れと感心、その両方の感情を持ち合わせてしまいます

(ともかく、最初は低めややボール寄り……)
(うむ)

 そんな観客の気持ちとは裏腹に、律太が第一球を投げ始めます

「ボール!」
(来ヶ谷め…… 流石に良く見るモンだ)
(次は…… そうね……もうちょっと高め、でいいのかな?)

 そのカウントを確認しながら、リリは第二球のコースを指示し……

「サード!」
「坂上ッ!」
「くッ……!」

 来ヶ谷はその球を当てることこそ成功するものの、それでもサードゴロでギリギリアウトに落とされるのでした……


  ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会と野球勝負! 第十六話 後半戦!


□6回表 2番レフト神谷雪花 得点 生徒会1点

「とうとう後半戦、か」
「いい加減追加点が欲しいわね……」

 バッターボックスに立った雪花を見ながら、律太とリリは、次の打線に向けつつ屈伸運動をしながら、相手の強さに多少渋い顔をします

「鈴、後一息だよ ……大丈夫?」
「ああ」
「それじゃあ、3番4番はしょうがないとして、神谷先輩と真鍋さんは絶対に抑えるよ!」

 それに対して、理樹は鈴の残りの体力を気遣い、その理樹に対し、鈴はいつも通りの表情で答えます

「プレイ!」
(じゃあ……最初真ん中やや低めで様子見……)

 そして佐々美の宣告で、理樹の指示通りに鈴の第一球が投げ込まります

「ストライク!」
「ナイス鈴! 次も同じところで!」
(同じところ、ね……そういう言葉を言うときに限って……)

 そのコースのカウントを確認し、鈴に次の指示を声に出しますが……

「ファースト!」
「アウト!」

 その第二球、雪花は打ち返すことこそできたものの、それは謙吾の方に、まっすぐゴロに打ち終わってしまいます

 □三番 キャッチャー 南リリ アウトカウント1

「リリ! つなげてくれよ!」
「わかってるわ!」
(今度はやや高め…… フライで一発アウト!)

 そして三番リリ、それに対する律太の応援を横目に、理樹と鈴は淡々とプレイを続けます

「ストライク!」
「何やってんだ、リリ! 落ち着いて落ち着いて!」
「た、タイム!」

 しかしその一球目、リリは意外(?)にもそれを空振りさせてしまい、そのプレイをいったん中断させます

「どうやら、追加点が出てないから相当緊張してるようだな」
「その様だな」

 そしてポケットからハンカチを取り出して、にじみ出ていた汗を拭うリリに、透夜達もその手に汗を握ることを禁じえることができません

「プレイ!」
(同じく…… 打たせて取るよ!)

 それが終わり、一度の素振りの後にバッターボックスに戻ると、鈴は理樹の指示を確認すると同時に第二球を投げ……

「さ、サードゴロッ! 佳奈多さんっ!!」
「了解っ!」

 しかし、それは理樹の考えとは異なり、サードにワンバウンドするゴロとなり……
 それを佳奈多が真正面から受け止めて、謙吾の方に投げようとしますが……

「あっ!?」
「なっ!?」
「リリッ! チャンスッ!」

 そこで気持ちが焦ったのか…… なんと、佳奈多はその拾ったボールを落としてしまい、それを好機と言わんばかりに、スライディングで一塁に入ったリリは、そのまま二塁に進みます

「なっ…… 何やってんだ、このバカ二木ッ! チャンスだってときにっ!?」
「ま、まぁまぁ透夜…… 落ち着いて落ち着いて……」

 しかし、そのミスプレイを責めたのは、理樹でも鈴やほかの野手でもなく、観客の立場に立っていた透夜でした

「佳奈多さん、大丈夫?」
「え、えぇ…… ごめん、ミスった」
「そんなことより、まずは一旦手を拭いて 葉留佳さんも、小毬さんや鈴も!」
「え? ええ……」

 そんな透夜を横目に、理樹は佳奈多に駆け寄り、普段通りの態度で周りに指示を出すだけでした

「透夜の言う通り、今はリリ先輩をアウトにできるチャンスだったね」
「……ごめんなさい」
「とりあえず、追加点を与えなければ問題ないし、次気を付ければいいから」

 そして、佳奈多に少し注意を促し、理樹はそのまま自身のポジションに帰っていきました

 □四番 ピッチャー 内藤律太 ランナー2塁(リリ) アウトカウント2 

(さて、2塁で内藤先輩か…… まずは)
(わかった)

 そして、とりあえず心持ち足に力を入れた理樹は、高め……いつも通りなら、すぐボールと分かる場所にミットを持っていきます

「ボールハイ!」
(流石にわかりやすいのは動じないね…… 仕方ない)
(うん)
「鈴の奴め…… 相当なピンチのはずなのに、淡々としてやがる」

 次の相手……律太がバッターボックスに入ると、鈴は淡々と、ある意味ではマイペースに理樹の指示したコースに、ボールを投げ入れます
 そんな鈴の態度に、透夜は只感心する以外の感情を用いることができません

(次は…… 今よりちょっと低め……)
(来るわよ…… 追加点、お願いね)

 そして二球目の支持を確認すると、リリは三塁に進む為に、少しだけ足を進めます

「鈴ッ! 小毬さんッ!」
「ッ!」

 そんなリリの姿を見て、すかさず理樹は声をだし……
 声を掛けられた二人はその声にすぐさま反応し……

「あ、アウトですっ!」
「あ……」

 そんな理樹たちの行動に、リリはリアクションに一歩遅れ……
 それでも、何とか飛び出したものの、それでも彼女の行動は、最悪の結末を得てしまうのでした……

「あらら……」
「どうやら、欲を出し過ぎたようだな ま、さっきの二木の凡ミスを見れば、チャンスと見たくはなるけど」

 そんな状況に、稟は頭を振り、透夜もその行動に理解はするのでした

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、久方ぶりの更新、及び5月初の更新は、野球編となりました 遅くなって申し訳ない……

 んで、今回は後半戦スタート、という訳になったのですが、お互い気持ちが切れてきてのミス乱発……まぁ、乱発って程ではないものの、それでも……って感じですかね
 次は……未定ですね 気合入れて更新したいところですが

inserted by FC2 system