□四回裏 4番 ピッチャー 直枝理樹 点数 生徒会 1点

「さて、選手交代後の初の守備、か……」
「で、でも……和ちゃんがあっさりアウトだなんて……」
「しょーがないさ アレは謙吾が凄すぎた」

 あの後、和はなんとか一二塁間のゴロを打った物の、謙吾のファインプレーにあっさり落とされて、あっさりアウトとなり、攻守交代……
 雪花、紫苑と守備を変更された二人に、そのポジションによる違和感は感じられず、コレが良くも悪くも草野球だということを実感させられます

「にしても、気になるのが、理樹だな…… あいつ、謙吾に何を指示してやがる」
「あ、ホントですね 宮沢君がなんか渋い顔してますが…… 何を言われたんでしょうか?」

 そして、透夜達はそんな中での、謙吾の表情が気にならない訳ではありませんが、理樹がバッターボックスに立ったので、そちらに意識を集中することにします

(さて、井ノ原君じゃなくて、宮沢君に指示した、と言うのが気になるけど…… マズは彼を内野ゴロに鎮めるわよ?)
(勿論!)

 勿論、律太もリリも、そんな理樹の行動の意味に疑問こそ持つ物の、それでも勿論試合に集中することにします
 そして第一球…… 理樹はそれに打つことに成功しますが、それはライト……ささらのさらに右、その打線がファールで有る事を雄弁に語る結果となってしまいます

「どうも、上野先輩の退場は、色んな意味で影響を与えてるみたいだな ま、俺でもあそこに打つだろうけど」
「……それより、理樹君って、あんなに力が有ったんだ……」
「それに関しちゃ、理樹の方を見てみなよ」

 その戦術にこそ、特に問題は無かったものの、佳澄美や楓、桜と言った、彼のクラスメートはその打線の長さに違和感を感じてしまいます
 そして、透夜の言葉に、理樹の方を向いてみると……彼の体が赤い膜でおおわれているのが視界に入ります

「アレって……もしかして、パッションの魔法?」
「多分、な 恐らくあいつ自身は、筋力を直接強めるインスパイアの方を使おうと思ってたんだろうが、ありゃあ西園あたりに反対されたな」
「……リアルに想像出来ますね、それ……」
(ま、力の加減が難しくなる、と言う部分も多分に有るんだろうけど、な)

 そんな観客の騒ぎの中、理樹は第二球をライト後ろに打ち、二塁打とする事に成功するのでした


  ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会と野球勝負! 第十二話 戦術!


 □五番 センター 井ノ原真人 ランナー2塁(理樹)

(このタイミングで、嫌なバッターが来た訳だけど……)
(前回同様、紫苑の場所に打たせる訳、だな)
(先輩達としても、きっと真人ほどわかりやすい奴はいないんだろうなぁ……)

  気合全開、やる気満点と言わんばかりにバッターボックスに入る真人に、律太もリリもまたもやフライで打ちとろうとし、稟もそんな二人につい共感を覚えてしまいます

「ファール!」
「高すぎ高すぎ! もうちょっと低くても良いわよ!」

 そんな中での律太の第一球は、リリ及び佐々美の後ろに有るネットに、力強く直撃します
 そして第二球、律太やリリの目論見通り、紫苑の方に……とは行かなかったものの、それでもピッチャーフライでアウトにする事に成功するのでした

 □六番 ファースト 宮沢謙吾 ランナー2塁(理樹) アウトカウント1

(宮沢、ね…… 何をしかけてくる……?)
(井ノ原君と違って、器用だし…… まずは低めの外側から、よ?)

 そして、謙吾がバッターボックスに入るのを眺めながら、律太は理樹が彼に指示した策に思いを巡らせますが、リリのミットの指示に従い、第一球を投げることに集中します

「ストライクですわ!」
「おい、佐々瀬川…… それ、ギリギリボールじゃないか?」

 そして、そのコースの宣告をした佐々美でしたが…… 直後の謙吾の一言に、その場にいた理樹以外の全ての人間の視線が、謙吾に集まります

(まさか、理樹が謙吾に指示した事って……!)

 その瞬間、透夜は理樹の策に気付き、逆にそれに気付かない佐々美は、視線をあちこちに巡らせます
 そして、あれこれと表情を変えたその直後……

「ぼ、ボールですわ……」
「な……」
「なにぃ―――――ッ!」

 自身の意見を翻した佐々美に対し、リリは絶句し、律太は叫んでしまいます

「と、透夜…… 今のって……」
「……多分、な……」

 そして、そんな佐々美の台詞に、皆一様に呆れた様な、そして感心した様な微妙な表情になってしまいます
 そう、数分前に、理樹が謙吾に指示していた策とは、この事を指していた、と言うのを理解したからです

「佐々瀬川の審判としての言動は、まぁアレだけど…… そんなの効果があるとは思えないんだけど……」
「いや、それでも内藤先輩の配球は中心に、より中心に、と行くはず……」

 そんな理樹のやり口に対して、稟は効果の程に疑問を持ちますが、律太の投げる第二級は、透夜の言う通り、やや中央に近く、謙吾はそれを見事打つことに成功します

「アウトですわ!」

 しかし、その打った球は、真っ直ぐ……真っ直ぐセンターの方に向かい……
 紫苑の持つ、グローブにそのまま吸収されていったのでした……

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、今回は理樹の変わり種戦術でした
 結果こそ身を結ばなかったものの……それでも、律太にとっては相当厳しい事になりました(笑)
 あ、ちなみに今回理樹が使った魔法は、単純に力を強めるだけで、以前に有った様な「球を打つ為の魔法」と言う訳では無いので、ご了承を(ぁ

inserted by FC2 system