□四回裏 四番ピッチャー 内藤律太 アウトカウント２
（流石に、高めはまずいよね……）
目の前にいる、もう完璧に気合が入ってます、と言わんばかりの男に、理樹はミットを低め、やや律太側に持って行きます
（今の内藤先輩には、どーしたって打たれるんだし、まず小技を使って打ち気を逸らして、上手く落とすしか無いね）
（分かった！）
その理樹の行動の意味を理解した鈴は、そのまますぐに必殺球……ライジングニャットボールを投げ込みます！
「きた……！」
その鈴の姿を見て、律太は思わず呟き…… そのまま自然にバットを振り始めます……
そしてそのバットは、鈴の投げたボールに、吸い込まれるように――――
「センターフライッ！ 真人ッ！」
そして、その打ちあがったボールを見て、理樹は叫び、それに弾かれるように、真人がそのボールを追いかけますが……
そのボールは、ぐいぐいと真人の後ろの方に行き……
「まさか……ッ！」
「凄いッ！ ホームランだっ！」
それが落ちた地点は、その真人の後ろの、ある一定のラインの向こう…… 誰にも文句の言えない程の、ホームランと言う結果になりました―――
ひだまりメイドラプソディー！外伝 生徒会と野球勝負！ 第十一話 変化！
□五番 センター上野彩雲 アウトカウント２ 点数 生徒会１点
「理樹…… ゴメン……」
「いや、今のは内藤先輩が凄すぎただけだよ」
「そーだよ、りんちゃん なーちゃんパワーも凄すぎだったけどねー」
「ホント、呆れるわね、アレには……」
主審・佐々美自身の手で、生徒会役員チームの得点を書きに言っている姿を見て、鈴は俯き、相棒であり、恋人の少年に謝ります
しかし、その鈴を心配して集まって来た内野の面子は、鈴を責めるどころか、逆に律太のバッティングに呆れるだけであり、彼女を責める人間はいませんでした
「ともかく、次は上野先輩だ ここでアウトにすれば、被害は一点だけだし、取り返すのも楽だから、皆、頼むよ！」
そして、理樹の檄に、皆一様に頷き、それぞれの守備位置に戻ります
（ま、簡単に崩れる訳なかか……）
そして、そんな鈴の姿に、上野は気合を入れなおすかの如く、バットに力を入れなおします
そんな上野を眺めつつ、鈴は第一球を投げ、上野はその球を打とうとしますが……
「お お お お お お……」
その上野のバッティングは、見事空振りになった物の…… 直後、上野は呻き声を上げ始めます
「上野先輩、どうかしましたか？」
「腰が…… 腰が……ッ！」
理樹も、そして佐々美も暫くそんな上野の姿に気付かなかったものの、あまりに変わらない上野のその姿と呻き声に、思わず問いかけると、その理由をやっと答えてくれます
そしてその答えに、律太達も思わず彼に駆け寄って行きました
「見た感じ、どーも骨折とか言う訳じゃあ無くて、単純に捻っただけだな」
「まぁ、骨折だったら、もっと凄く痛がるでしょうし……」
「それに、バット一回振っただけで骨折って、どんだけ軟弱なのよ、彩雲は」
そして、そんな上野の様子を見てみると、特に酷い問題が無い、と言うのが分かります
「それでも、暫くは出ない方が良いのも、事実ですわ 先輩、代打をお願いしたしますわ」
「そうよな……」
そんな上野の様子を見ていた佐々美の言葉に、律太は顎に手を当てて、考えます
「真鍋、お前セカンド入れ 雪花はレフト、十条はセンター行ってくれ」
「え、私ですか……？ 曽我部先輩とか、柴田先輩じゃなくて？」
「ああ」
そして、その出した答えに、その指名された相手……和は、まさか自分が指名されるとは思わず、意外そうに答えます
「ま、命取られる訳じゃあないんだし、気楽に、な」
「はい」
□代打 上野彩雲→真鍋和 ポジション変更 セカンド神谷雪花→真鍋和 レフト十条紫苑→神谷雪花 センター上野彩雲→十条紫苑
「野田ちゃん！ なずなちゃん！ 和ちゃんが出てきた！」
「内藤先輩も思いきった事をするもんだ ……まぁ、残りの面子から見れば、真鍋が最も真っ当だった、ってーのも有るんだろうけど……」
一番軽いバットを持ちあげて、バッターボックスに向かう和を見て、唯は心から嬉しそうな声を上げ、それにつられるようになずな達も笑顔になって、歓声を上げます
そんな中での稟のコメントに、透夜は「じゃあその真鍋を最初からだしゃあ良いのに」と思いましたが、それはどーでもいい事と思いなおします
（まったく…… そんなに応援されたら、情けない姿を見せれないじゃない……！）
そして、自分を見ながら大はしゃぎするなずなや唯達の姿を見て、和は真剣な面持ちでバッターボックスに向かうのでした……
あとがき
と言う訳で、生徒会役員チーム、先制点ですが……トラブルも発生してしまいました
そしてちゃっかり和が代打で登場です ホント、最初っから出せよ、とも思いましたが…… まぁ、あんまり気にしないでね（ぁ