□二回裏 9番 クドリャフカ能美 ランナー1塁(小毬) アウトカウント2

「……なぁ、理樹よ……」
「な、何? 真人」

 バッターボックスに向かっていく、亜麻色の髪の少女を目の前に、真人は隣にいる小柄なリーダーに視線を向けます

「クー公は大丈夫、なのか?」
「うーん……」

 そう、クー公と呼ばれる少女……クドリャフカ・能美は、バットを両手に持ち、遠目にも現在の状況に対して、全力で緊張しているのが理解出来てしまいます
 そして、理樹はそんなクドの状態に、どうコメントして良いのか、迷ってしまう様な返ししかできません

「クドリャフカ」
「ハッ! ハイッ! 佳奈多さんッ!」

 そんな中、次のバッターである佳奈多がクドに近づき、優しく声を掛けます

「とりあえず、リラックスして、肩の力を抜きなさい」
「ハイッ!」

 そして緊張のあまり大きな声を上げるクドの肩を揉み、その緊張をほぐそうとします

「まずは先輩のボールを見ることに集中する、そして次は当てることに集中する ……良いわね?」
「はっ ハイッ!」
「今の攻撃はまだ二回なんだし、得点に拘る必要は無いわ ……分かった?」
「ハイッ!」

 そして、佳奈多の言葉に、クドの緊張は完璧に解けるのでした

「……もしかして、佳奈多さんにいい所を全部取られた?」
「……多分……」

 そんな二人の状況に、理樹は思わず呟き、葉留佳がそれに思わず同意をするのでした……
 ちなみに、バッターボックスに入ったクドは、律太の豪球の前に成すすべもなく、ストライク3つでアウトになってしまうのでした……


  ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会と野球勝負! 第八話 一巡!

 □三回表 8番久寿川ささら

「さて、朝霧先輩にそそのかされて、出場を決めた久寿川先輩だが……」
「透夜、それぶっちゃけすぎ」

 攻守交替し、理樹達が守備に入り…… 次のバッターであるささらは、用意されたバットの中で軽い物を、重そうに持ち上げます

「なんと言うか……内藤先輩も何故に朝霧先輩を止めなかったのやら……」
「ですよねぇ…… なんと言うか、どこぞのお姫様、って感じで…… 生徒会の中じゃ、か弱そうな雰囲気なのに……」
「ちなみに言っておくとな、乃莉よ…… あの久寿川先輩は、とある場所では本当にお姫様と呼ばれて――」
「だからそれぶっちゃけすぎ つーか、それパッと見が微妙に似てる別人だよね!?」

 そんなささらに、透夜も乃莉も、言いたい事を言いまくり、そんな二人になずな達はどうコメントして良いのか、と言う表情になってしまいます
 そんなこんなと透夜達が悪ふざけをしているうちに、ささらはあっさりとアウトとなってしまっていました……とさ

 □9番十条紫苑 アウトカウント1

(ディフェンス目的の十条先輩、か…… 油断は出来ないのは事実、か……)

 先ほどの魔法を使った守備を思い出しつつ、理樹はグローブを下の方に持って行きます

「さて、これで打順は一巡する訳か…… 速けりゃ、そろそろ動くころだが……」
「十条先輩、さっきは魔法を使ってましたからね…… 攻撃でも……と思っちゃうのは、当然ですよね〜」

 ささらの時とはうって変わって、真剣な表情になった透夜に、乃莉もそれにつられるように先ほどの守備を思い出します

「……ま、さしもの紫苑先輩も、バットを振れても当てられなければ意味は無いと思うが…… いや、思いたいが……」
「どっちですか」
「お前さんも知っての通り、魔法ってのは集中力が必要なんだ ボールを自分の望む方向に移動させても、バットを振れるとは限らないんだ」
「……成程……」

 透夜の説明に、なずな達はは改めて試合の方を見ます
 透夜の言う通り、鈴の投げたボールは真っ直ぐ理樹の持つグローブに収まり、紫苑が魔法を使った様な雰囲気は感じられません

「やっぱ、紫苑先輩は守備要員としての、か…… まぁ、確かに手ごわいからな、あの人は……」

 そんなこんなであっさりアウトになった紫苑を見て、透夜は率直な意見を呟くのでした

 □1番坂上智代 アウトカウント2

「んじゃ、かなた ともよは任せた」
「ええ、任せなさい」

 打順が無事(?)一巡し、智代がバッターボックスに入ると同時に、鈴は佳奈多とピッチャーを一時後退します
 その佳奈多は、一度智代に視線を向けた後、理樹の低めの指示の通りに、ボールを投げるのでした――

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、今回で打順は両チームともに一巡しました まだ試合が終わってないのに、結構長かった、と言うべきか……(ぁ
 ともかく、これからが本番です 何時試合を動かすかは、未だ未定ではありますが……

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