「小毬ぃっ!良くやったぁ!」
「コマリン、最高デスよォッ!」
「み、みんなぁ〜 い、痛いよぉ〜」
「やられた……! 油断したつもりは無かったのに……ッ!」

 ダブルプレーを成功し、仲間たちに次々にはたかれる小毬に、律太達は立ちあがったまま、只々呆然とするのでした

「申し訳ありません、先輩……」
「……いや、これはお前一人の責任じゃあないさ」

 そして自分たちの所に戻り、頭を下げるマツリに、律太は肩を優しく叩き、気にしないように促します

「今回ばかりは、あの神北小毬、と言う女の子を甘く見ていた俺達全員に非がある ……ま、そー言うことだ」
「確かに…… あんなおっとりした雰囲気の女の子が、あんな素晴らしいプレーをするとは思えないわよねぇ……」

 そして、その次の律太の言葉に、リリも同意するように腕を組みながら頷くのでした

「ともかく、二回裏の打者は、今回のダブルプレーの功労者三人からだ! 気合入れて行くぞ!」

 そんな中、謙吾が攻撃の用意を確認した律太は、生徒会メンバーに檄を飛ばすのでした…… 


  ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会と野球勝負! 第七話 伏兵!(後編)

 □二回裏 7番ショート三枝葉留佳 アウトカウント1

「先輩、なんっつー気迫……」
「あの謙吾が、只バットを空振りで三振なんて……ッ!」
「律太さん、凄い……」

 呆れた様な、そして感心した様な雰囲気でベンチに戻る謙吾を見ながら、透夜達は只呆然とした表情で、律太のピッチンクに恐れ慄きます

「どーやら、さっきの神北のプレーで、先輩の闘志に火を付けたようだな」
「小毬先輩が……」
「見ろ、三枝だって、もう2ストライクだ!」

 小毬の普段のおっとりした性格から、なずなは先ほどのプレイすら信じられない、と言わんばかりの表情になっていますが……
 律太が本気を出して、謙吾を、そして今また葉留佳を相手に、気合全快のプレイをしていることから、先ほどの小毬が嘘じゃあない、と言うのを理解させてしまいます

「ちょっとちょっと! 先輩、少しは手加減してくださいよ〜!」
「ヤなこった ここで手ぇ抜いたら、さっきのお前らのプレイを侮辱することになるんでね」
「う〜…… あんな事、やらなきゃ良かったデスよ……」
「諦めろ ある意味じゃあ自業自得だ」

 そして、そんな律太の態度に、文句を言う葉留佳でしたが、律太の気合の入りすぎてる表情に、涙目になりながらバットを構えます
 そんな葉留佳を見て、律太は3球目のフォームに入り……

「バッターアウト!」
「先輩、本気過ぎ〜……」
「さて、次が本番、だな……」

 □8番神北小毬 アウトカウント2

「内藤先輩……いや、生徒会最初の試練かもな……」
「だな ……今の神北じゃ、何をしでかすかわからん」

 しかし、そんな透夜達や、気合を入れなおす生徒会とは裏腹に、小毬は普段のようにおっとりのんびりとした態度でバッターボックスに入って行きます

「内藤君、分かってるわね?」
「分かってるさ ……三枝にも言ったが、ここで手抜きをしたら、さっきのあいつらのプレイを侮辱することになる」

 その小毬を見ながら、律太とリリは真剣な表情で彼女を眺めます

「じゃ、マズは直球ストレートド真ん中、頼むわね」
「オウよ!」

 そして、指示を出した後、リリが所定の位置に座りこんだら、小毬が普段とは違う構えをし始めたのです!
 その格好は、普段持つ細い方だけでは無く、バットの中央の部分も持ち始めたのです!

「もしかして、バント……か」
「だと、思うけど」

 そんな小毬に、透夜も稟も……否、それだけでなく、その場にいた皆が戸惑いを隠せないでいます

(いちいち気にしていられないわ! 後ろを信じて、そのまま行くわよ!)

 しかし、唯一違うのは……キャッチャー・リリであり、そのままミットの位置を変えずに、そのまま律太に投げさせようとします
 そして律太もその指示に従い、ボールをそのまま真っ直ぐ投げ込みますが……

「バットを戻した!」
「そのまま打つのか!?」

 直後、小毬はバットを横から縦に持ち直し、左足に力を込め、只無心でバットをボールめがけて、降り始め――

「ファール! ファールです!」

 しかし、ボールに当てる事は出来た物の、そのまま後ろのネットに直撃するのでした

「小毬先輩、凄い……ッ!」
「全くだ ……まさかあいつがあそこまでやるとはな」

 そんな小毬のプレイに、なずなは只感心した様な声を上げ、透夜はそれと同時に、多少の呆れも混じった表情になってしまいます
 しかし、そんな皆の予想を超える行動を、小毬は行います

(また、バントの構え――?)

 そう、律太にボールが返ったその瞬間、小毬はまたバントの構えを行います
 しかし、その表情から、バントそのものを行うのでは無く、今現在の律太を混乱させて、確実にヒッティングに向かおうという必死さを、少なくともリリは感じました

「小毬先輩があんなことをするなんて……!」
「だが、理樹の指示でも無い ……あいつ自身が、仲間の為に考えて、最もベストと判断した作戦なんだろうな」

 小毬の突然の行動に、なずなは驚きましたが、透夜の一言に、小毬が理樹や鈴を始めとした、彼女の友達……リトルバスターズをどれだけ大事にしているのか……なずなにも理解出来ました
 それと同時に、小毬がリトルバスターズと一緒にやる「楽しいこと」を、どれだけ真剣にやって来たか……小毬の表情から理解する事が出来ました

「……どうりで、さっきのダプルプレイも成功する訳だ」

 そんななずなの心情を知ってか知らずか、透夜も関心するような声をあげてしまいます

「お前らも負けてらんないんじゃないか?」
「うぅ……透夜ちゃんのイジワル……」

 そして、その視線を、楓や桜……そして佳澄美の方に向き、少々意地の悪い笑顔で問いかけます

(やれやれ、ね このままじゃ、こっちの身が持たないわ……)

 そんな中、三球目の直前の小毬のバンドの構えに、リリは溜息と同時に、そのまま立ちあがります

「え…… 何で、リリ先輩は……」
「ああ、ありゃあわざと相手をフォアボールにして、次の相手に来てもらう作戦だな」

 そんなリリの行動に戸惑うなずなと如月ですが、透夜の解説に納得した様な表情になります

「ま、神北の今の状態から考えると、下手したら内藤先輩が疲弊しちまうし、当然の行動か」
「フォアボール! テイクワンベース!」

 透夜の説明に、なずな達が思わず頷いたその瞬間、佐々美の宣言が高らかに響き渡りました――

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、今回も小毬の大活躍、になるんでしょうか?
 今回は、主に私の小毬に対するイメージが凝縮された物となっています ま、「お前の勝手なイメージを押し付けるな」と言われるかもしれませんが、ね(ぁ

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