□5番 センター井ノ原真人 ランナー1塁(理樹) 3塁(来ヶ谷) アウトカウント2

(さて、一難去って、となる訳だが……)
(一発は有るだろうし、どーしたものかしらね……?)

 一回表、目の前に現れた、筋肉質の大男に、リリは思わず息を飲みます
 そして、一瞬考えた後、キャッチャーミットを構えます

(……成程、敢えて賭けるのも、面白い、か……)

 そのミットの場所に、律太は従い……その第一球をストライクに決めます

「……先輩、もしかして高めに投げた、か……?」
「……と、思うけど……」

 そのコースに、透夜と稟は、思わず驚いてしまいます

「あ、あの……高い方に投げると、何かマズいんですか?」
「ああ、高い場所に投げると、バッターとしちゃ、球の下を打ってしまう可能性が高いんだよ」
「んだからね、山口……真人みたいなパワーヒッターだと、故にホームラン性の当たりを打っちまう可能性も高い、って訳だ」

 そんな二人の態度に、如月は素直な疑問を口にします

「それじゃ、井ノ原君がホームランを打てるように、声をかけましょうか!」
「神谷……気合入ってるなー…… つーか、俺らはともかく、どっちの味方だよ、お前……」
「一応生徒会の方は、お前のねーちゃんがいるだろ……」

 そして、それに対する二人の説明に、神谷は気合を入れて、透夜達に発破を掛けます
 ……が、それに対して、透夜と稟は少々呆れた様な声をあげてしまいます

「あのー……それで、ホームランって、何点ですか?」
「……おーい……」
「おいおい……」

 かっ飛ばせー、と言わんばかりに腕を上げようとした神谷ではありますが……
 そもそもの根本的な疑問を、透夜や稟に聞き、聞かれた方は再び呆れた様な表情になってしまったのでした


  ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会と野球勝負! 第五話 五番!


「まぁ、ホームランを打てないとしても、真人は出来りゃあライト側……久寿川先輩の所に打てれば、最高さね」
「……久寿川先輩…… 生徒会長ですか?」
「ああ ……あの顔を見れば、何となくわかるだろ?」

 神谷の発言でグダグダになった空気を引き締めるように、透夜は手を叩きつつ言います
 その透夜の発言に、なずな達はライト側にいる女子生徒……ささらの方に視線を向けます

「確かに会長さんはスポーツをやる様な人ではなさそうですが……それはレフトの十条先輩も同じなのでは?」
「……紫苑先輩は……」

 そして、さらなる疑問を投げかけますが……その瞬間、軽快な音を上げ、律太の投げたボールを打ちあげます
 そのボールはレフト……紫苑の方向にまっすぐ吸い込まれるように向かい……

「まぁ、見ての通りだ 紫苑先輩は魔法を使いやがるんだよ ……卑怯と見るか、只単に全力を出してると見るかは、人それぞれではある」

 透夜の説明に、なずな達は思わず「あー……」と言いたげな表情になるのでした

 □二回表 5番センター 上野彩雲

「そして、上野先輩、か……」
「そーいやぁ神谷と乃莉はあの人を知ってんだっけ 確か、美術の部員の従兄、と聞いてるが……」
「はい〜 麻生さんと言う人の従兄なんですよ〜」

 攻撃と守備が入れ替わり、バッターボックスに向かう上野の姿に、透夜は思い出したように乃莉と神谷に聞きます
 その二人の微妙な表情に、透夜は上野と言う人間を、何となく理解してしまいます

(とりあえず、真人同様、力は有りそうだけど…… 低め内角で様子を見ようか)
(ん…… 分かった)

 バッターボックスに入る時、正に「ずっしり」と重い印象を持つようなゆったりとした動きで入った上野に、理樹はミットを下の方に構えます

「ほう、鈴め…… どうやら徐々に調子を上げて来てるみたいだな」
「前のニャットじゃない筈なのに……徐々にスピードを上げてる感じだな」

 そして、その一球目を空振りさせた鈴に、透夜達観客にどよめきを与えます

(よし、同じく……)

 理樹も、その上野の様子に、同じ場所にミットを構えます

「サード! 鈴は伏せて!」
「上野っ! 急げっ!」

 直後の軽快な音に、理樹は思わず叫び、その声に、鈴は反射的に座り込みます

「アウトっ!」
「うむっ」

 そしてその直後、鈴の頭上にボールがまっすぐ通り……謙吾のグローブに収まります

「上手く打たせた様だが……次は瑞穂先輩とマツリ先輩だ…… 鈴よ、あの二人に勝てるかな?」
「だからその表情、完璧悪役だって〜!」

 そして、次にバッターボックスに入ろうとする瑞穂を皆がら、透夜は(観客のくせに)不敵な笑みを浮かべるのでした……

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、今回は両チーム5番の話でした〜 まぁ、ほとんどが観客視点でしたが
 んで、スケッチブックの上野さんですが……原作よりも体格が良い、と言う設定になってます(ぁ

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