「す、蘇芳さんも、芙蓉さんも、待ってください〜」
「そんな事言ったって、もう始まってますよ〜!」
「そうだよ! 桜ちゃんも神谷さんも! 急いで急いで!」
「ま、待ってぇ〜!」
律太達生徒会と、恭介達リトルバスターズの草野球の勝負会場……
その場所に、四人の少女……神谷朝霞と芙蓉楓、蘇芳佳澄美と八重桜の四人が駆けて行きます
「と、とーやちゃん、りんくん、お、おまたせ……」
「おう、遅いぞ!」
「し、しあいは、どうなってるんですか……?」
「ちょうど神谷のお姉さんの番だよ」
息も絶え絶えに、その四人の少女が試合の場所に到着して、その状況を見てみると……
リトルバスターズの面子が守備をして、一塁の部分に謙吾と智代の二人が立っており、バッターボックスには稟の言う通り雪花が真剣な表情で立っていました
「さっきちょうど坂上が打ったんだが、二木が上手い具合にグローブではじいてな ……結果アレだ」
なずな達から水を貰いつつ、佳澄美達がマウンドを見ると、雪花が鈴が投げたボールを空振りしてるシーンが目に写りました
「……なんってぇ速さだ……アレが噂に名高いライジングニャットボールか……」
「ニャット……」
「ニャットですか……」
「う、うるせぇ! 名付けたのは俺じゃねぇ! 棗先輩だ!」
そして、そんな事をやってる透夜達を横目に、雪花は次に鈴が投げたスローボールに翻弄され、結局アウトとなってしまいましたとさ
ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会と野球勝負! 第一話 ニャット!
「リリ、イケるか?」
「さあ 野球なんて初めてだもの……分からないわよ」
ネクストバッターサークルで素振りをし、審判・佐々美の指示を待つリリに、律太が一言 そんな律太に、リリは鈴を眺めつつ答えます
「バッターラップ!」
「ま、なんとか打ってみるわよ……次、お願いね」
「りょーかい」
そして、佐々美の一言でバッターボックスに入って行きます
(リリ先輩……か)
その様子を眺めつつ、理樹は目の前の鈴に視線を向けます
(とりあえず、ニャットは後回し……そして低めね)
(……分かった)
そしてハンドシグナルで鈴に指示を出し……それを確認した鈴は、ゆったりとしたモーションでボールを投げ始めます
「ストラーイク!」
「あ……」
(……待てよ)
その鈴のボールを空振りしたリリを、そしてセカンドに向かおうと構える智代を眺め、律太は小さく指を立てます
その指の動きを見た智代は、それを同じ動きをし―――それに気付かない鈴は、第二球の投球フォームに入ります
「ゴーッ!」
「ッ…… 鈴ッ!」
その瞬間、律太が叫び、それに呼応すかのように智代が走り、理樹がリリとは反対側のバッターボックス側に身を寄せるように立ち上がります
鈴は球を投げる直前にその理樹の姿に気付き、そこにボールを投げることに成功します
理樹はそのボールを取る事に成功しますが、リリがそのタイミングを見計らったかの様にバットを振り、二塁への送球を妨害します
「よーしよし! 二人ともナイスだ!」
「やられた……!」
無事二塁への盗塁を成功した智代を眺め、律太と理樹は正に正反対のリアクションをします
(直枝の事だ 二塁にランナーがいる以上、あからさまなコースの指示はしねーよな……)
(ま、次は内藤先輩だし、何時までも気にしてられない、か……鈴、任せるよ)
そして、律太、理樹の思惑の中、鈴は第三球を理樹めがけて全力で投げ込みます
「くっ……!」
「打ちあげた!?」
「葉瑠佳さんッ!」
「わかったのデスよ!」
それを打つことに成功したリリではありましたが……ショートを守備している葉瑠佳によって、見事アウトにさせられました
「ゴメン、内藤君」
「何、坂上を進塁させただけでも十分! 次は任せな!」
溜息と共に、ベンチに戻ったリリの肩を叩きながら、律太はバッターボックスに向かいます
(さーて……出来ることなら点をもぎ取りたい所ではあるが……どうなることやら)
(さて、一歩間違えると点を取られるけど……坂上さんが二塁にいる以上、コースの指示は迂闊に出せないな……どーした物か……)
「……と、透夜ちゃん……あの二人から、火花が散ってるね……」
「どっちもいい感じにマジになってるな……」
「ゴクッ……」
そんな二人を中心とした二つのチームの雰囲気に、透夜達は彼らが本気になってるのを感じます
「なずなちゃん、お水をどうぞ」
「あ、うん……」
そして、その雰囲気に飲まれて、息を飲むなずなでしたが……
如月に水を貰うまで、緊張で自分の唇が乾いてるのに気付いていなかったのです……
次回に続く
あとがき
と言う事で、今回は一回表の前半部分となりました やっぱこう言うのを文章にするのは難しいですね
そして、チーム内藤には2アウトながらもいきなりのチャンスですが……はてさてどうなる事やら……(笑)