「打ち上げをやるぞー!」

 クリスマスの次の日、当日おもてなしをした、平沢憂の見送りをし…… さらにその次の日に、ダウンをしたなずなと唯の復活の確認をし……
 それから、その次の日昼間…… 生徒会室に、上野や柴田、まーりゃんを引きつれて現れた律太は、関口一番にそう叫びました

「打ち上げ、ですか?」
「オウ、打ち上げよ!」

 唐突に表れた律太に、オウム返しに問いかけたマツリに、彼女が今まで見たことのないような笑顔で、律太は答えます

「そういえば、この半月、皆で頑張っていながら、打ち上げをやってませんでしたね」
「そうだろう、そうだろう…… さーりゃんは物わかりがよくて、おねーさんは嬉しいよ……」

 そして、皆で顔を合わせて、今や「前」会長となっているささらがそれに共感すると…… まーりゃんが、心から嬉しそうな表情で、その薄い胸を反らして、偉そうな態度をとります

「とりあえず、材料は俺たちの私財で出したが、マツリ、真鍋、他に必要なものは無いかな?」
「あの、一つ聞いて良いですか?」
「オウよ」

 そして、律太達が出した食材に目を通しながら、マツリが問いかけます

「こっちの袋に入ってる魚…… もしかして上野先輩が釣り上げたものですか?」
「いや、八尾先生の八百屋があるだろ? そこの隣にある魚屋で買ったものだが」
「そうですか…… まぁ、当然ですね」
「お前ら…… 俺のことが嫌いなのか?」

 しかし……
 そのマツリの問いに対する律太の答えに、上野は少々涙目になってしまうのでした……


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第二十四話 打ち上げ!


 そんなこんなで数時間後…… 生徒会役員達と、律太から呼び出しを食らった透夜達合唱部と唯達軽音部、そしてなずな達料理研究部の前には、幾つかの鍋が並んでいました

「こりゃまた豪勢なもんですねぇ」
「いや、まったく…… 美味そうだけど、体重が気になるのも事実だな……」

 目の前で出来上がっている鍋の中身を眺めながら、感嘆の声を上げる透夜と、それに同意をしながらも、その隣で律が女の子らしい心配をついしてしまいます

「とりあえず、酒もジュースもいくつか用意した ……今夜は無礼講だ!」
「律太さん……」

 そんな透夜と律を無視し、律太は明るく酒の入ったコップを持ち上げ…… その律太に対し、なずなは多少呆れの入った表情になってしまいます

(しかしまぁ、朝霧の奴がおとなしいのが、気になるな……)

 そんなこんなで、20分後……
 みんなでほのぼのしながら、鍋を楽しんでいましたが、律太は普段変に暴走しているまーりゃんの態度に、目をやります

「あっ!」

 そんな時、その律太に見られてることに気づいてるのか、いないのか……
 当のまーりゃんが、唐突に大声をあげたのでした!

「窓の外にまーりゃん先輩が!」

 いったい何事か、と言わんばかりに、その場にいた皆に注目されたまーりゃんは、唐突に表現的に変な事を言い始めました
 しかし、言うまでもなく、外に、と言われれば、外を見てしまうのが、人の性……その場にいた皆が、窓の外を眺めてしまいます

「いたたたた!」

 否……例外はいました……
 彼女の行動に、多少なりとも疑問を持っていた律太が、まーりゃんの腕を力強く握っていたのです!

「朝霧……お前、何を企んでる?」

 言葉と共に、律太は筋力上昇の魔法を唱えた?と問いたくなるほどに力を強め……
 その力に屈したまーりゃんは、手の中に忍ばせていた物を落としてしまいます

「……これは、なんだ?」
「え、えぇっと……」

 その落としたもの…… もはや怪しさ全開のオーラを撒き散らす瓶に、律太はまーりゃんを睨み付けます

「やれやれ、しょーがない…… マツリ、スプーンとってくれ」
「あ、はい!」

 しかし、しせんをあちこち彷徨わせるだけのまーりゃんに、律太はマツリに指示を飛ばします
 そして、そのスプーンに、その瓶の中に入ってる液体を入れ……

「上野」
「……なんだ?」

 次に律太は上野を呼び出し……

「死ぬんじゃないぞ?」
「……あ?」

 そして、普段とは比べ物にならない、とても穏やかな一言を呟き……
 そのまま、スプーンを上野の口の中に突撃させたのです!

「くぁwせdrftgyふじこlp;@:!」

 直後、上野は何とも形容のし難い叫び声をあげ……そのままぶっ倒れてしまったのです!

「おいっ! こりゃあなんだ!」
「1600万スコビル……」

 その上野のひどい姿を見た律太の絶叫に、まーりゃんは自慢げな笑顔で答えます
 
「……1600万スコビルって、確か……」
「先月ベルンストのオッサンが公表した、毒物の一種ですよ ハバネロの50倍強の辛さを持った……!」

 そして、その答えに対し、律太は父親に宮廷魔術師を持つ透夜に視線をやり……
 その答えに、その場にいた皆は、一様に背筋を凍らせるしか、選択肢はありませんでした

「道理で、さっきからおとなしいと思ったら…… こんなモン隠してたのな」
「うむ、これさえあれば、どんな料理でも、俺のカラーに染められる」
「……カラーうんぬん以前の問題です、これは」

 もう、心の底から呆れたような、律太のセリフに、まーりゃんはその小さな胸を反らし…… そのまーりゃんのリアクションに、透夜は自信なさそうなツッコミを返します

「……マツリ、お前、辛いの好きか?」
「……いっ! いえっ! 私っ! 甘党ですからっ! サーっ!」
「……先輩……これはもはや、辛党でも何ともできないレベルですからね?」
「む 確かに」

 そんなまーりゃんと透夜のやり取りに、律太はマツリの方を向きますが……
 それと同時の問いに、マツリは何とも固まった返答をし、直後の透夜の一言に、律太は納得したような声を上げます

「確かに、この中で何ともできないレベルの辛さを愛するのは、朝霧ただ一人、という訳だ」

 言葉と共に、律太はその瓶に、スプーンを再び突っ込みます

「な、内藤先輩……?」

 その態度に、何やら不穏なものを感じ取ったまーりゃんは、一人その身を震わせます

「ちょ、ちょっと待ってください、先輩? 連帯責任と言う言葉がありましてね……?」
「朝霧は、自業自得や因果応報、自己責任と言う言葉を知ってるか?」

 そして、震えた声と共に、律太に問いかけますが、律太は笑顔でその問いに答えます

「せ、先輩! ごめんなさいっ!」
「同じく! 無事にヴァルハラにたどり着いてくださいっ!」

 その律太の笑顔に気圧された、マツリとささらの二人は、その場にいる人間を代表してまーりゃんの腕をつかみます

「ちょ、お前らっ!」

 その二人の行動と、まーりゃんの叫び声を見聞きしながら、律太は近くにあった鍋の具をとり、それに瓶の中身を付着させ……
 それを箸でとった後に、まーりゃんの口に突撃させました……

「あー……っと、朝霧?」
「…………」

 そして、それから数分後……
 声にならない悲鳴を上げた後、口から幽霊を吐き出して倒れている、まーりゃんに律太が声を掛けます

「お前、辛いの苦手なら、こんなトラップ用意すんなよ…… 結局一口は食う事になるんだし……な?」
「……………」
「……なんと言うか…… あの人に比べれば、野田や友兼の作る闇鍋って、すごく可愛い物なんだな……」

 その穏やかな律太の言葉にも聞こえない様子を呈するまーりゃんに、澪はしみじみと言葉にし……
 その澪の一言に、なずな達は納得するかのように、思わず首を上下に振るのでした……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、今回は色んな意味で懲りない人のお話でした(マテ

 んで、今回出てきた、1600万スコビルなるものは、実際する物だったりします まぁ、設定云々は、微妙に改変していますが
 どうも、これを手に入れるには、いろいろと手順を踏む必要はあるみたいですが、ね
 言うまでもなく、良い子は鍋にこういうものを入れちゃだめですよ? 口にしたら、確実に病院行きなので(ぁ

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