「おい、リリ…… ありゃなんだ?」
「いえ、私に言われても……」

 向坂環と久寿川ささら……目の前で対峙する、二人の女子生徒を目の前に、律太は思わず隣にいるリリに、思わず問いかけます

「おいっ! 一体久寿川に何をしたっ!!」
「い、いやぁ〜…… 私もああなるとは思わなんよ……」
「いえ、先輩…… どーでもいいですが、ささらを止めてくれませんか?」

 もう、律太が全力で花梨を揺さぶりますが、その揺さぶられた方は、その身が全力で揺らされているというのに、笑顔で返せます
 そんな動揺全開な律太に対し、環は目の前の少女……ささらを止めてもらおうとしますが、当の律太は、現実から逃げるかのように、さらに花梨を揺らします

「どうした、タマーキ! このわらわに臆したか! これではタカーキ王子の心を射止めれるものか!」
「いや、どーでもいいですが、真面目にこれ、どーなってんのさ?」

 その律太たちの状態を無視し、ささらは普段の態度からは信じられないくらいの「タカビー」な態度で環に竹刀を向け……
 そんなささらの態度に、小毬と佳澄美、そして唯が一緒に作った料理を持ってきた透夜が、正に「どうコメントしていいのか」と言わんばかりの表情になってしまいます

「貴明 ……それから先輩方 いい加減事情を説明してくれ」

 目の前の状況に、透夜は頬を引きつらせながら、周りにいる人間に問いかけます
 その問いかけに貴明と環、そしてマツリと律太は、「まぁ、そうだよね……」と言いたげな表情になるのでした……

「タマーキ! だから、いい加減にわらわの方を向かないか!」

 ……しかし、 律太たちは……否、まーりゃんと花梨、そして雄二以外の皆は……
 環に竹刀を向けるささらを、どう説明していいのか……それを考えると、皆一様に胃が痛くなる思いになるのでした……


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第二十三話 催眠術!(後変)


「つまり、結局内藤先輩とリリ先輩が、笹森の余興を止めなかったのが原因、という事ですか」
「……まぁ、確かにこれは俺たちのミスか……」
「んで、あの久寿川先輩の正体って、一体ナニよ? 少なくとも、物の怪の類じゃあなさそうですが……」

 そんなこんなで数分後…… 結局ささらに竹刀で襲われて、それを(何故か)モップで防ぐ環を横目に、透夜は律太とリリから事情を聴き、呆れたような表情になってしまいます

「だーかーら! 久寿川さんは、今私の催眠で、千年前に栄えたっていう、ムーの戦士なんよ!」
「……笹森……お前に発言権は、無い」
「気持ちはわかるが、風見よ…… そもそもの諸原因はそいつだぞ」

 そして、さらなる透夜の問いかけに、花梨が答えますが、そんな花梨に透夜は血管を浮かび上がらせますが、それを律太が宥めます

「つまり、環先輩は、そのライバル組織の筆頭戦士で、どっちもムーとやらの王国の王子にどっちも惚れてる、って状況と考えて構わないわけですか……」
「………………たぶん……………」

 そして、透夜の最終的な纏めに、このみと和が、自身無さそうに、首を縦に振るしか選択肢がありません

「それにしても気になるのが…… 自分が戦士と思い込んでるとはいえ、ME科のささらさんが、手加減してるとはいえ、KN科の環さん相手に一方的なのが……」
「ああ、それに関しては、久寿川先輩とマツリ先輩、須尭先輩や岡崎先輩達と一緒に、病気で留年した紫苑先輩や古河先輩の体質改善に付き合ってるらしいんですよ」
「それと……多分ですが、今の久寿川先輩、一種のトランスモードに入ってるのも、あると思います……」

 そんな中、いつの間にか、狭い生徒会室の中で、実際に勝負状態になってる環とささらに、リリは心の底から頭が痛い、と言わんばかりにおでこを抑えます
 そのリリの脳に浮かんだ疑問に、透夜と雄二は、予想の範疇ながらも己の私見を語ります

「で、風見……どーするよ? 今の状況で、全力で久寿川を殴ったり、蹴飛ばしたりする訳にゃあいかんだろう?」
「なんか、この状況に、根本的に関係ない俺にサイを投げつけられた気もしますが…… とりあえず、久寿川先輩を捕縛の後、催眠を解除するのがベタかと」
「んじゃ、バインドミストかスタンショックのどっちかか…… どっちにしろ、ここじゃ少し狭いな…… 向坂!」

 そんなこんなで、透夜に解決策を問いかけると、当の透夜は、頭が痛そうな表情になるものの、その解決策を提示します
 その透夜の言葉に、律太は周りの皆に散開させてから、環に入口に行くように指示します

「オーホホホホホホホ! やはり真の力に目覚めぬタマーキなど、口ほどにもないわ! タカーキ王子は、そなたにはやはり渡せぬ!」
「……にしても、どーでもいいバックグラウンドが見え隠れしてんなー……」

 そして、外に駈け出した環に、当然と言わんばかりに追いかけるささらが言い出したセリフに、律太が呆れたような、感心したような一言

「一応言っておくんだけど、一般的にはムーが正義で、その敵対勢力のアトランティスは、悪なんよ」
「笹森…… どーでもいい情報禁止 ……つーか、さっきも言ったが、お前に発言権は無い」

 とりあえず、律太やマツリ共々ささらと環を追いかけつつ、透夜達
 そんな彼らの目に、グラウンドが飛び込んできます……

「よし、風見! リリ!」
「ったく、なんで俺が……」

 その足元の変化を確認した律太は、透夜と一緒にその速さを上げ、ささらの前に立ちはだかります

「オホホホホホ! タマーキに援護が出ても、このササラに敵うものか!」
「いや、ササラとやら…… 自分の足元を見ようとしないあんたは、負けるさ……」
「マナよ、我が求めに応じよ…… その姿、水流の薄絹となりて、かの者の動きを束縛せよ! バインドミスト!」
「……っ!!」

 そして、環の両脇に立った二人を確認したものの、それでもささら(洗脳状態)は、自身の優位性を信じて疑わなかったものの……
 直後、周りに霧が出て、彼女の両腕・両足を束縛します

「よーし、笹森! 変な状態になったら、溶鉱炉な!」
「わかってます! 久寿川さん!とりあえずあなたは眠くなる! そして目が覚めたら、元通り!」

 それを確認した律太は、花梨に指示をだし……その花梨も、息を切らしながらもささらを元に戻す催眠を行います

「ふぅ〜〜…… これで大丈夫なはずです……」
「内藤、風見、河野、向坂、お前ら……」
「「ゲッ……」」

 そして、ささらの目が閉じ、彼女が元に戻ったか、確認しようとした、正にその時でした……
 彼らの近くから、女性の声が響き……その声の正体を理解した律太たちは、恐怖で頬を引きつらせます

「べ、紅女史……」
「お前ら、久寿川にそんなことをして、何をやった?」

 そう……律太や透夜達から見れば、(ある意味)恐怖の大魔王よりも恐ろしい女性……律太の高等部時代の担任にて、現在透夜や貴明の担任である、紅薔薇撫子その人だったのです!
 紅薔薇は、ささらの姿を見て、自身の近くにいる、環と透夜、そして律太を、ただ睨み付けます
 その睨まれた三人を始め…… 花梨とまーりゃん以外の皆は、一様にその二人をただ無言で指さし、その答えとします

「ちょ、お前らっ!」
「なるほど……犯人は朝霧と笹森か……」
「ち、違いますよ、紅女史! 私たちは……」

 その指を差された方は、正にその通りながらも、紅薔薇を前に言い訳を始めます

「言い訳無用っ! 風見と内藤だけじゃなく、向坂の姉の方がお前らを指さしたんだ…… どうなるか、わかってるだろうな……?」
「「そんなぁ〜〜〜〜〜〜〜!」」

 しかし、直後の紅薔薇の一喝により、このトラブルの主犯格二人は、只うなだれる事しかできませんでした、とさ……

 さて、今回のトラブル一番の被害者であるささらは……
 貴明とこのみから事情を聞かされ、正に首が取れ落ちんがばかりに首を上下に振り、環に謝り……(無論、ささらに非は無い)
 最大の加害者二人は、クリスマス当日に、紅薔薇の管理下の元、グラウンドを走り続けているのを、彩井学院の生徒たちに確認された、とさ……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、解決変です 言うまでもなく、今回もわざとやっちゃってます
 なんともグダグダしまくってますが…… まぁ、楽しんでくれればうれしいです
 次は本編か、それとも野球か…… どーしようかな?って感じですね

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