「すみません、先輩…… 来てもらっちゃって……」
「うんにゃ 俺としても少々興味があったモンでな」

 生徒会の新会長選任も無事終わり……そして二学期の期末テストも無事終わり、クリスマスまで一月を切ったある日……
 律太は、何の因果か、透夜の家に招待されていました……

「り、リンちゃん! 今度は火の魔法を強くし過ぎだよぉ!」
「リンさん、魔力の調節は私がやりますから、楓ちゃんとそっちの野菜を切って〜」
「は、はい…… 申し訳ありません……」

 その透夜の家の台所では、透夜の幼馴染である、楓と桜、佳澄美と、二つある異界……神界及び魔界のプリンセス、シアとキキョウ、そしてネリネの姿がありました

「しかしだな、風見に土見よ……」
「はい、なんでしょうか?」

 その台所におけるトラブルを眺めながら、律太はその場に同席している透夜と稟の二人に問いかけます

「あの姿を見て、魔界のお姫さんが料理を苦手としているのは、わかった だがな……」

 そう、台所でネリネが佳澄美や楓達に料理を教わる姿を見ながら、律太はつい数日前から持っていた疑問を口にします

「本当にあのお姫さんは、いわゆる「殺人シェフ」と呼ばれる存在なのか?」
「……ええ、その通りだったりします……」
「みなさん、できましたよ〜」

 そう、台所にいるメンツの中で、何とも形容し難い失敗を繰り返す女の子……ネリネの動きに、律太は彼女が料理を苦手とすることを理解します
 しかし、それでも透夜や稟がこの数日前……律太に彼女が相当ダメな実力しか持ち合わせていない、という事までは、信用できることができませんでした

「……見た目は、普通だな」
「ですが、何とも言い難いオーラは感じますね……」

 そして、ネリネがなんとか作り上げた物を、見ると、外見だけは悪くないのですが……
 それから出てくるオーラを無視しつつ、まず透夜が代表して一口食べてみると……

「すまんな、稟……俺もう帰るわ」
「……え? えぇ!?」
「……どこに帰るってんだよ お前の家ここじゃねぇのかよ つかお前、今までお姫さんの料理食ってた訳ちゃうんかい」

 真っ白になりそうになりながら呟いた透夜の言葉に、稟はどう答えて良いか分からない、と言う表情になり、律太は至極もっともな発言を言うのでした……


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第二十一話 殺人?


「と言う訳で、なんとかすれ」
「なんとかって……」
「律太さぁん…… 横暴だよぉ……」
「と言うより、デジャブ……」

 そして次の日の放課後……律太はMG科2年の教室に行き、空閑、草壁、そしてリコリスの止める間もなくネリネの首根っこを?まえ、なずなたち料理研究部の元に連行していきました

「先輩…… 桜とシアの援護を受けた佳澄美と楓で無理だったってーのに、さすがに料理研究部でも無理なんじゃあ……」
「風見、昔の偉人は「成せば成る」という言葉を残した…… なずななら、あるいは何とかなるっ!!」
「無茶言わないでよぉ……」

 そんな律太に、佳澄美の料理を待っていた透夜にツッコミをもらいますが……律太はその言葉すら聞こうとせずに、なずなの眼前にネリネを連行していきます

「そもそも昨日は、神界のお姫さんの妹の方も教えてたろ…… 今回は生徒一人に教師たくさんだからな…… 何とかなるだろう?」
「……論破されてしまった……」
「いや、少しは抵抗しようよ、透夜……」

 そして、次の律太のセリフに、透夜は膝と手をつき、落ち込んでしまいます まぁ、その透夜にツッコミを入れたのは、やはりたまたまいた稟だったのですが

「じゃあ、今日の活動は、リンちゃんにお料理を教える、という事で〜 リンちゃんは何を作りたい?」
「えっと…… 何を作ったらいいのか、もう皆目……」

 そんな透夜と稟を無視して、小毬は唐突に誘拐されたネリネに問いかけますが、当のネリネは、先日のトラウマ(?)が胸に残っており、うつむくことしかできません

「あの、先輩! カレーはどうでしょうか?」
「カレーかぁ…… なーちゃん、その心は?」
「えっと…… 私も最初にゆの先輩とヒロ先輩に教わったし…… 材料や作り方も覚えやすくて、アドリブもしやすいと思ったので……」

 そんなネリネを無視して、なずなの提案に、皆一様に納得し、その準備を始めます

「ほう…… 改めてしっかり見ると、包丁の使い方は、悪くないな」
「味の方はともかくとして、包丁の使い方はこの一年半、みっちりしごきましたから ……佳澄美たちが」

 そして、なんだかんだと材料を用意し、いざ料理を始めると、律太はネリネの包丁捌きに、感心したように声を上げます
 
「それで、なんであーいう料理になっちまうんだ?」
「魔王のオッサンが、料理作るの大好きでして…… 佳澄美達と違って、ネリネが台所に入る機会に恵まれなかったんですよ、コレが」
「……なるほど」

 そして、その原因となる一因に、律太は感心するような呆れるような…… そんな声を上げざるを得ません
 そんな中、鍋の中に次々と材料が入り、水と火が入って、後はカレー粉と細かい調味料を入れようとしたその瞬間でした

「ちょ、マテやぁ――――!」

 ネリネが、小毬に指示された調味料を入れた、その瞬間…… 律太が叫び声をあげました
 律太だけではありません…… 透夜と稟も、まさにその表情は地獄に落ちた、と言わんばかりの表情をしています

「お姫さん…… あんた、今何を入れた……?」
「え……? 小毬さんに言われた、スゥータスの実ですが……?」
「おま……っ! おま……っ! そりゃあまずいだろーがっ!」
「風見君も先輩もどーしたんですか……?」
「まさか……っ!」

 律太たちが怒るのは無理がありません…… しかし、その原因であるネリネの行動を、つい見過ごしてしまった小毬たちに非を求めるのが酷なのも、事実です……
 そもそも、スゥータスの実とは、この世界にある実であり、その実となる部分は相当の苦みしか無く、これを料理の調味料として使う際には、基本皮を使うものなのです
 もちろん、この実を料理の中に入れた際には、その料理がそれまでどんなに成功していたとしても、これで一発アウトになってしまう代物なのです!
 そして、これを知らないものは、相当な箱入りか、5歳に満たない子供であり、その場にいた皆……佳澄美や楓達も、ネリネがそれを当然知っているもの、と決めてかかっていたのです

「どーりでお姫さんが今まで料理を失敗していたわけだ…… 教える方が気づかなかっただけで、こういううっかりミスをカマしてたわけだな?」

 その律太のセリフで、皆一様に納得したような表情になってしまいます
 それと同時に、佳澄美や楓は理解します これからネリネにどう料理を教えるか、を……

「まぁ、こんなんでも飯は飯だ…… 出来上がったら、食っちまおうぜ」
「いや、魔王のオッサンや神王のオッサンに押し付けましょうや」
「……まぢかい」

 それはともかく…… なんだかんだと、ネリネが頑張って作ろうとした、料理という名の失敗作を、処理しようと考えた律太ですが……
 透夜の一言に、思わずどうコメントしていいのか、理解できない表情になってしまいました……

 数時間後……
 土見家に呼ばれた魔王と神王は、ネリネの作った料理によって、数時間にわたって物言わぬ物体となっていたのでした……

 次回に続く

 あとがき
 今回の元ネタはこちら(おもに11:22から)からです
 というわけで、今回は主に料理ネタです 元となるのは、ゲーム「永遠のアセリア」となったわけですが、なんともな展開となりましたね

 まぁ、久方ぶりに外伝では律太以外の生徒会役員が活躍しませんでしたが…… まぁ、いっか♪
 次回は……未定です 本編もいい加減更新しなきゃですしね

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