「あっはっは〜! トモカネ、飲め飲め〜!」
「キョージュも飲め飲めー!」
「うむ、これを飲んだら、皆にカットバックドロップターンを披露しよう」
「8番時雨亜沙! 脱いで稟ちゃんに鼻血を吹かせます!」
「おおー! 時雨ぇ! それは乙女のいんすぴれーしょんで、全力で脱いだれやー!」
「なんだ…… コレ……」

 目の前の状況に、律太は只々その様な言葉しか見当たりません

「つーか、真面目に何なんでしょうね、コレは……」

 そんな律太に、隣にいる透夜も、その言葉に同意します

「律太さん…… 私……怖い……」

 そして、その律太の後ろには、なずなが彼の服の裾を掴み、その状況に、只怯えることしか出来ません

「それで透夜…… ホントにどーすんだ?」
「うーむ……」

 そんな状況に、稟は透夜にどう対処していい物か問いかけますが、その透夜ですら、どうコメントして良いのか、と言う表情になってしまいます

「私はですね、風見君! 内藤先輩は、もうちょっと自分の気持ちを冷静に考えるべきだと思うんですよ!」
「いや、分かったからさぁ…… とりあえず、落ち着けよ……」
「なんっつーか……面白い事にゃあ、面白いんだけどな……」

 そう、律太達の目の前には、透夜に絡むゆのを始めとして、酒盛りと言う名の地獄があったのであった……


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第十八話 混沌?(前変)


 そもそもの発端は、プリムラの一件が無事終了し、彼女が再び彩井学園に通えるようになった次の日曜であった
 何だかんだと、皆プリムラの事を気にしていた為に、彼女の復帰に皆一様に喜び、そして誰が言いだしたのか、彩井学園の食堂で、ちょっとしたパーティを始めよう、と言う事になったのです

 そして、途中までは普通に飲めや食えやのちょっとしたバカ騒ぎだったのだが…… どこの誰かが持ってきたのか、大学部の一部生徒が、酒盛りを始め……
 その一部が、ME科高等部3年・ヒロが大学部から頂戴し、最初に美術部の面子に飲ませたのが、今回の件の始まりとなってしまったのである!

「……つーか、稟…… こりゃあ、殴った方が良いんじゃあ? つーか、こんな黒いゆの、見たくなかったんだが」
「……言ってやるなよ つか、酒入ってるんだし、殴らない方が良いんじゃあ……」
「風美君! ちゃんと話を聞いているのですか!? この這い寄る混沌の異名を取る、邪神ニャラルトホテプの言葉を!」

 そして、その混沌とした状況の中、どうすべきか迷っている律太達ではありますが…… その三人の視線は、唐突ぬ無茶苦茶な事を言いだした、ゆのに向けられます

「……あ、あのー……稟? 今、ゆのがすっごーく…… すっごぉーく、無茶苦茶な事を言いだした気がするんだけど、コレは夢か?」
「いや、透夜…… とりあえず、現実を見れよ……」

 そして、そんな三人の注目を集めるゆのは、相手の意見を聞こうとせず、只々自分の意見をつらつらと続けています

「……その前に、今、ゆのが風見の事を、どこぞのシスコンなケーキ屋店長が、女神と評した某天然系ピアニストの名前で呼んだ気がするんだが、気のせいか?」
「……多分、気のせいじゃないです 単純に読みに関しては、全くもって同じですからね」
「……完璧ぃ!」

 そのゆのの意見に、律太は少々違和感を感じますが、透夜も稟もその違和感の理由に気付いてる様に、只呆れた様な表情で返します
 そして、そんなゆのの状況に頭を抱える律太の後ろでは、魚住が微妙にイントネーションの違う叫び声をあげています

「……杏子さんから新しい料理を貰ったんだけど……なんか、凄い事になってますね……」
「……神王と魔王達が酒盛りしてる時の匂いに似てるけど、もしかしてみんな……」

 そんなカオスとなっている状況の中、杏子から新たな料理を持ってきた奈三子と、主役として呼ばれてた筈のプリムラが現れます 

「まぁ、見ての通りだ この中のほとんどがいい感じで酔ってる」
「あっちで背中を見せてる澪ちゃんも、もしかして……」
「秋山のやつ、何時の間にいなくなってると思いきや……」

 律太の状況説明に、プリムラは食堂の端の方を指さしますが、その方向に視線を向けると澪が壁に向かって何かをしている姿が目にうつります

「どーも紙に何かを書いてる様だが…… もしかして、新曲の歌詞か?」
「……もしかしたら小説かも…… この前りっちゃんが言ってたけど、澪ちゃんが歌詞を書くときに、わざわざお店で買う紙を使わない、って言ってたから」

 その澪が何処から持ってきたのか、足の低いテーブルに上質な紙を置き、それに何かを書きこんでいましたが……
 少なくとも、その背中から異様なオーラだけは感じることが出来ました

「ともかく澪ちゃん……大丈夫?」
「宗ちゃん、私……」
(ソウチャンってナニ!?)

 とりあえずの澪の行動の意味こそ理解はしたものの、それでも心配をせざるを得ず、プリムラは彼女に近寄り、立ち上がらせようとしますが……
 それに澪は力無い声で答えますが、その一言にプリムラはどうツッこんで良いのか分からない、と言う表情になってしまいます

「……とりあえず、まずは秋山をなんとかするっきゃないな、こりゃ」
「そうですね プリムラ、悪いけど……」
「うん、分かった〜」

 そのプリムラ同様、最早何処から何処をどう突っ込んで良いのか分からなくなった律太達ですが、とりあえず酔っ払った皆を介抱を、と言うことで意見が一致します

「私、柔道部を作りますッ!」
「……なずな、気持ちはわかるが、自棄になるな……」
「……うん……」

 そして、目の前の現状から逃れたいかの如く、なずなは叫びますが……その現状は変わることなく、奈三子に優しく肩を叩かれるだけであった……

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、律太さんメインの外伝、超が付く程の久方ぶりの更新、となりました
 時期的には、プリムラの件が終わり、料理研究部の部長が決まる前、と思ってくれればおっけーです
 本編を読めば、ある程度はわかるとは思いますが、今回所々に色々とネタを散りばめてます
 全て分かったあなたは凄いですが、とりあえず元ネタを以下に掲載させてもらいます
カットバックドロップターン(キョージュの台詞) アニメ「交響詩篇エウレカセブン」に出てくる必殺技(?)の名前
ヒロインの中の人がキョージュと同じ名塚佳織さん
乙女のいんすぴれーしょんで〜(あーさんの台詞) ゲーム「クラナド」の登場人物・藤林椋の台詞
中の人があーさんと同じ神田朱未さん
ニャラルトホテプの異名を取る〜(ゆのの台詞) アニメ及び小説「這い寄るニャル子さん」ヒロイン・ニャル子の台詞
中の人がゆの同じ阿澄佳奈さん
ちなみに黒いゆの、と言う部分は、漫画版第一巻で出てきたゆのが元ネタ
どこぞのシスコンなケーキ屋の店長が女神と評した〜(律太の台詞) PC及びPS2ゲーム「ショコラ〜パルフェ Second brew〜」のヒロインの一人風美由飛(ゆい)の事
ちなみに名字の読みが、透夜の名字・風見と同じ
完璧ぃ!(魚住の台詞) アニメ「カードファイト!ヴァンガード」のキャラ・岸田オサムの代名詞
声優が魚住と同じ小西克幸さん
宗ちゃん、私……(澪の台詞) アニメ及び4コマ漫画「Working」のキャラ・小鳥遊泉の台詞(と言うより、私の泉に対するイメージ)
声優が澪と同じ日笠陽子さん
柔道部を作りますッ!(なずなの台詞) アニメ及び4コマ漫画「生徒会役員共」のキャラ・三葉ムツミのセリフを丁寧にしたもの
声優がなずなと同じ小見川千明さん

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