「さて……こりゃあ、どうしたモンかね?」

 目の前の状況に、律太は思わず呟きます

「先輩、どうですか?」
「駄目だな 鍵穴も見えないから、針であけることも不可能だ」

 水渕の問いに、律太は頭を振りつつ、目の前の状況の打破が不可能な事を伝えます

「魔法は使えない、それでいて、窓も無い……一体どーすりゃあ良いモンか……」

 そんな状況に、律太が思わず呟いたその時でした

「ひゃああ!」
「ッ……! 藤林さん!?」

 律太や水渕と一緒に行動をしていた、MG科三年にて、KN科三年・藤林杏の双子の妹の藤林椋の悲鳴が響きわたりました

「な、何があった!?」
「に、人形……人間大の人形が……!」

 完全に腰が抜けた椋の指先を見てみると――
 そこには、律義に正座をしている、成人女性の人形が、堂々と鎮座されていたのでした――


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第十七話 暗闇!


 さて、そもそもこの事態がどんな事態なのかを説明するには、美術部が学園祭に展示する作品の整理をする為に、水渕が律太と椋に手伝いをお願いしたからです
 そして、美術準備室に入ったのは良いのですが……椋が入り口のドアを閉め切った、その瞬間―――
 なんと、そのドアの鍵がひとりでに閉まって行ってしまったのです!

「水渕、この事は知ってたのか?」
「い、いえ……吉野家先生も、春日野先生もこの事は……」
「……だよなぁ……吉野家先生と春日野先生だしなぁ……」

 よもやこんな事になるとは思わず、只頭を下げるだけの椋を横目に、律太は最も重要な事を水渕に問いますが、水渕も当然の答えしか返せません

「攻撃魔法でぶっ壊そうにも……魔力を集中させようとしても、なんとも出来んとは、な」
「恐らく、学園祭で出展する美術部の展示品を壊さないように、と笹本先生が、ここいらのマナに細工をしたのかと思います……」
「あー、成程なー…… お陰でシャインの魔法も使えねー……」

 そして、ドアを破壊する、と言う結論に達し、魔法を使おうとした律太ではありますが……水渕の言葉に、律太は只頭を抱える事しかできません

 そんなこんなで、もしかしたら鍵が見つかるかも、と言う結論に達し、あちこち探すことになったのですが……
 その途中で、椋がその人形を発見したのでした!

「なぁ、コレ、美術部の作品なのか?」
「さ、さぁ……これは見たことがありませんねぇ……」
「なんだか不気味です……」

 これが何なのか、第一の容疑……美術部にある、と踏んだ律太は、水渕に問いかけますが、芳しい答えは帰ってきません
 しかし、その存在感は、椋の言う通り、不気味としか言いようのない物が無く、律太はその最大の容疑者を脳裏に浮かべてしまいます

「まさかとは思うが、野崎がいつの間にか置いたとか、ねーだろーなー?」
「ま、まさか……あの野崎先輩でも、ここまでしないですよ……」
「……? これ、人形じゃなくて、人ですよ 生きている人間!」

 その容疑者……美術部の先々代部長にて、律太と同じKN科大学部二年の野崎風二子を連想していた中、その人形を触っていた椋によって、その正体が明らかにされます

「あ、ホントだ……こりゃ人間だよ……」
「本当ですね……と言うより、コレ、もしかして大道さんじゃあ……」
「お、大道って、なずなの友達の……?」

 暗闇の中、よくよく眼を凝らしてみると、その人物の正体は、律太が妹の様に可愛がっている女の子の友達の一人、雅だったのです!

「なずなの友達が、なんでこんな所で固まってんだよ……」
「さ、さぁ……大道さん、大丈夫?」
「……み、水渕殿……?」

 水渕に声を掛けられて、ようやく三人の姿を確認したのか、雅もようやく声を出してくれます

「なぁ、大道、こんな時に聞くのも何だが、最近のなずなはどうだ?」
「……うむ……」
「駄目だこりゃ……会話のキャッチボールが出来ない……」

 律太がお手上げだと言わんばかりに、両手を上げたその時でした……律太達が入って来たドアの方から、騒がしい声が出てきたのです!
 何事か、と律太達が首を傾げていたその時、派手にドアが開かれ……そこから友兼と野田が、その後ろから、なずなと乃莉、マリとプリムラ、そして奈三子と如月の6人が現れたのです!

「キョージュ! だいじょーぶか!?」
「……友兼殿? ああ、問題無い……」
「いや、すまん……助かった」
「り、律太さん!?」
「おう、律太さんだぞ」

 全力で目的の人物……雅に駆け寄った友兼達ですが、律太のなずなに対する一言で、律太達の存在にようやく気付きます

「んで、どーして俺達……もとい大道がここにいるって事に気付いた?」
「これですよ!」

 そして、律太の問いに、友兼と野田は、手に持っていた物を、元気よく上に持ち上げます

「……鶏? こいつら、学園で飼ってる奴らだよな?」
「そうですよ〜! キョージュが良くお世話して上げてるんですよ〜」
「……成程、情けは人の為ならず、と言う訳か あるいはこれは、大道に助けられた形になった訳だな」

 その物体……二羽の鶏を持ち上げて、説明した二人に、律太は雅に礼を言いますが、雅は只首を横に振ることしかしません

「それよりキョージュさん、大丈夫でしたか? 閉所恐怖症なのに……」
「……成程、道理でさっき態度が変だった訳だ……(汗)」

 そんな時の如月の一言に、律太達三人は、只々苦笑をするしかなかったのです……

「あ、そーだ、プリムラ……この準備室で、一度魔法を使って……」
「止めてください、先輩……色々ヤバそうですから……」
「残念……」

 そして、それを誤魔化すかの様に、律太はその中にいたプリムラを呼びとめ、準備室に連れて行こうとしますが……中の状況を理解した奈三子によって、ストップを掛けられたのでした……

 次回に続く

 あとがき
 と言う事で、今回は美術準備室によるトラブルです やっぱ魔法を使える世界ともなると、色々危険な事も出てくると思うんですよ
 つーことで、今回はそう言う所から出てきた部分はあったりしますね
 んで、メインだった元ネタは、GAのキョージュです この作品では、キョージュと水渕は元々知り合いなので、微妙に展開が変更ではありますが、特に大筋では変更無しでしょうね
 そして、何気にクラナドから椋が初登場ですが……こちらは只単に出したかったからです あの状況で普通に驚く、と言ったら、そうそう居ませんし……(笑)

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