「とりあえず、馬鹿だな」
「……はい、仰るとおりです……」

 環と根岸の犬に関する騒動から数日後、律太はその部屋……保健室に入り、目的の人物を見つけて、真っ先にそう言いました
 その相手……瑠璃・マツリは、弁明も抵抗もせず、只頭を垂れ、律太の言葉に頷くだけでした

「体調が悪いのなら、悪いと正直に言うことは、悪くないんだ ……一体何度だったんだ?」
「9度6分です……」
「……近代稀に見る、大馬鹿者だな」

 心配顔でマツリに聞く律太ではありましたが……その返答に、律太はバッサリと彼女を切り捨てます

「で、でも! 只の風邪なので、生徒会の仕事に特に支障は……!」
「生徒会室に入ったとたん、ブッ倒れた奴が、何を言っても説得力は無いな」

 律太の言葉に、その場に同席したなずなや和を始めとした生徒会役員は、律太に同意するように頷きます

「いいか、マツリ……弱みを隠せないのなら、立っていたって意味は無いんだ」

 そして、そんな後ろの面子の行動に気付いてるのか気付いてないのか……律太はマツリに諭すように一言一言言葉を紡ぎます

「特に俺達生徒会役員は、他の生徒の手本となるべき存在だ それだけに、弱点は他の生徒以上の精神で、カバーしなければならない」

 そして、言葉と共に、律太は自分が良い事言った、と言わんばかりに大仰に頷きます
 そんな律太に、生徒会役員やなずなは、どうコメントをして良いのかは分からない、と思ってしまいますが……

「別に病気になるな、とは言わない……どんな人間だって、完璧なんかありゃあしないさ……大切なのは、病気になった後、どう平静でいられるか、さ」
「は…い 騎士の基本です ……今回、嫌と言うほど身に染みました……」

 しかし、少々自己嫌悪に陥ってるマツリは、そんな律太に気付かず、顔を俯かせます

「井ノ原あたりなら四肢が砕けようが、余裕で筋肉革命を起こせるさ」
「…例えが良く分かりませんが、確かに井ノ原さんなら全力でそれを行いそうで怖いです」

 律太の表現に、その意味は伝わらなくとも、真人なら何かしら凄い事をやりかねない――その場にいた面子は、その恐ろしさに背筋を凍らせるのでした


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第十四話 病気!(前編)


「それで……本気なの?マツリさんは……」
「どーも本気らしくてな……俺には止められんかった」

 そんなこんなで次の日……
 グラウンドでハチマキを自身の頭を締め、腰に巻いたロープの先には、鎧やら具足やらを置いて気合を入れるマツリに、リリが呆れたように一言

「今日一日で直しきる……か 冗談言うタイプじゃないのは分かってるけど……なにもあそこまでしなくったって……ねぇ?」
「ま、アレでなんとか出来るんだったら、してもらいましょ……」

 隣にいる雪花(やはりあきれ顔)と顔を合わせながら、みさともやはりどうコメントしていいのか、と言う表情で一言
 そんな三人に、律太は放置と言う選択肢以外、取る事が出来ませんでした

 そして昼休み……

「あ、あのー……言わせて貰って良いでしょうか、瑠璃さん?」
「はい、なんでしょうか、稟殿?」

 彼女……マツリの前に鎮座した食事を目に、言葉を選びつつ稟
 彼の周りには、佳奈多と智代の二人から聞かされて、彼女の様子を見に来た真人と謙吾、貴明と雄二、緑葉と勇二、そして透夜の七人もいました

「そんな山盛りを急に腹に入れるのは無理なんじゃあ……瑞穂先輩や久寿川先輩たちも心配しますって」

 そう、マツリの目の前には、彼女が普段食べるだけ以上の食事量が堂々と鎮座していたのです!
 そんな状況に、透夜達も心配顔でマツリを見ていますが……

「いえ……多分コレでイケますよ……子供の頃、こうやって治した事がありますから……」
「どんなガキだったんだよ……てか、いーから薬飲んで寝てくださいよ」

 そんな稟に対するマツリの答えに、透夜もありきたりな言葉しか返せません

「倒れるなんて、とんでもないです……生徒会副会長である限り、その様な無様な真似は……」

 しかし、そんな透夜の忠告も、マツリは大きく横に頭を振り、それを断ります

「そして、かの内藤先輩の後輩として、私は膝を付くことすら許したくないんです! だから治したいんです! 横にならずに、縦のままで!」
(……あー、もう……良く分からんくなって来た……)

 マツリの言葉に、透夜達はもう心配するのが、完璧に無駄になって来た……のですが……

「かんどーしました!!!」
『わああ!』

 唯一、違いがいるとしたら、彼……常に全力で生き抜いてる(ある意味では)駄目人間、真神勇二がマツリの言葉に本当に感動したように、瞳に涙を潤ませながら、声を張り上げます

「感動しましたよ、先輩! 俺もお付き合いします!」
「…え?」
「いっぱい食べて!ガンガン鍛錬して! そして立ったまま風邪を治せばいいじゃないですか!」

 心の底から本当に感動してる、と言わんばかりの表情でマツリに詰め寄る勇二……
 そんな勇二に、透夜や稟、貴明は呆れた様な表情になりますが、真人と謙吾の二人は、そんな勇二に同意するかの様に頷きます

「……ありがとうございます、真神さん……私、やります!」
「俺もやるぞー! 我が師、タイガージョーの名に懸けてー!」
「謙吾! 俺達も行くぞー!」
「無論だ、真人!」
「勇二、お前もか……お前もなのか……」
「まぁ、あの三人は何時も全力で生きてるしな……」

 そして、マツリと共に掛け出した三人を見た透夜達五人は、只々彼らの根性に溜息を付くことしか出来ませんでした

 余談ではありますが……勇二によってそそのかされた(?)マツリは、三十分後に倒れ……
 勇二達三人に保健室に担ぎ込まれる事になりました、とさ……

 次回に続く

 あとがき
 まぁ、なんと言うか……ホント、申し訳ない 人形騒動に続いて、SHUFFLE E+のマツリファンの皆さんには、只々頭を下げるしか方法がありません
 今回の元ネタとしては、はやて×ブレードと言う元々電撃大王で連載され、今はウルトラジャンプで連載されているバトル系ギャグ漫画の三巻からです
 ちなみに言っておきますが(言わなくても分かってると思いますが) 今回のマツリの様な病気の治し方は、色々と問題があるので、止めましょう
 そして、勿論次はオチ編です 律太にも色々ツッコミどころが多い展開となってます

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