「や〜〜〜〜ら〜〜〜〜〜! やぁ〜〜〜〜〜らぁ〜〜〜〜〜〜〜!」
「……?」

 なずなとゆのの身長騒動から数日、律太は本屋からの帰宅していた時に、何かを嫌がる様な声が聞こえてきました
 一瞬子供が我がままを言ってる物だと思った律太でしたが……その場にいたのは、とある家の中に入ろうとする貴明とこのみ、そして環の存在でした
 そして子供の様な声を上げていたのは、意外な事に環だったのです!

「おいおい、一体どーしたんだ?」
「あ、内藤先輩!」

 そんな環の態度に疑問を持った律太は、彼女の腕を引っ張ってその家……柚原家の中に入ろうとする貴明とこのみに声を掛けることにしたのです

「いや、タマ姉はアレを嫌がってるんですよ」
「アレ? ……犬?」

 アレ、と言う言葉に、律太は貴明の視線の先を巡らせると……そこには、完全に人畜無害以外の表現が出てこない様な……環に構って欲しい、と言いたげな大型犬が一匹

「まさかとは思うけど、向阪はアレを嫌がってるのか?」

 その犬……柚原家で飼っているゲンジマルに対して、環は怖がってる……そう言う見方しか出来ない物の、普段の環の態度にそれが信じられず、貴明に確認を取ります
 その律太の問いに、貴明とこのみは視線をそらし、その問いの答えを嫌がります

「……信じられん……幽霊ならまだしも、あんな……」
「……ですよねぇ……」

 心の底から環に相手をして欲しい……そう言いたげなゲンジマルの態度にすら怯える環に、律太は心の底から信じられず、貴明もそれに同意します

「なぁ、ホントに向阪は犬が駄目なのか?」
「……はい……」

 何度も確認を取ろうとする律太に、貴明は気持ちが理解できる、と言わんばかりに答えます
 そんな貴明に、律太は「こりゃなんとかせにゃならんのと違うか?」と言わんばかりの表情以外、出来ませんでした……


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第十三話 犬!


「つーわけだが、巻き込んですまんな」
「いえ、他ならぬ環さんの為ですから」
「でも、正直意外と言うか……環さんが、犬が苦手だったなんて……」

 数日後、貴明とこのみ、そして律太は、ささらやマツリと一緒に、その場に立っていました
 そこには、何十匹と言う犬と、それに触れあう元気な子供たちの姿……それは、商店街の一角で行われている、犬と触れ合うと言うイベントでした

「環さん、この子はチワワと言う種類の様です ……触ってみますか?」
「だ、駄目、ホントに駄目なの……」
「……改めて見ると、重症だな」
「……そうですねぇ……」

 マツリが小型犬の中でも、子供らしき一匹を優しく抱き上げて、環の近くに連れてきますが……当の本人は、自身より小さいこのみの陰に隠れて只怯えています

「しかしまぁ、それにしても色々種類があるモンだな」

 そんな環を横目に、律太はあちこちにいる犬を眺めて、感心したように呟きます

「ほぅ……こいつはジャックラッセルテリアって言うのか……」
「可愛いですね〜」
「ふむ……甘味が強くて、コクがある、か……」
「ちょ、先輩!?」
「冗談でもやめてくださいよ!?」

 そして、次の種類に立ち寄ってみて、その紹介文を律太が読みあげようとしますが……直後邪悪な笑みを浮かべて一言
 そんな律太に、マツリとささらと貴明は、その犬達を律太から庇うように、その間に挟まります
 そんな時でした

「アレ? 河野たちも来てたんだ」
「? 美術部の保村に根岸、だったか?」

 彼らもこの場に用があったのか、保村と根岸の二人が律太達に声を掛けてきました

「こんな所で男二人で来る訳ないよな? 須尭や芦原達は?」
「いえね、こいつ……犬が苦手なくせに犬を飼う羽目になったらしくて……俺が美術部を代表して連れてくるハメになったんですよ」

 美術部二年を代表してる様な男子生徒二人だけだったので、律太はあちこち視線を巡らして問いますが……意外な答えが返ってきます

「俺達も似たような理由で来てるんだが……そもそも、お前らは何で犬が苦手なのさ」
「油断したら襲って来そうな所?」
「……小動物じゃないんだしさ……」

 そして根岸と共に、未だに犬に怯える環に、そもそもの原因を聞きますが……その根岸の答えに、律太は只ぼやいてしまいます

「大体犬ってやつは人と同じで何考えてんのか分かりにくいんですよ! 付き合いにくいんですよ!!」
「……おいおい……」

 そんな律太に対する根岸の言い訳に、律太と貴明は、互いに見あって溜息を吐くことしかできません

「……つーか、そもそも何でこんな根岸が犬を飼うハメになったのさ?」
「いや、うちの空閑がその犬に唐揚げを昼寝してた根岸の腹の上に……」
「く、空閑のやつだったのかぁ―――――!」

 しかし、只溜息を吐くだけにも行かず、そもそもの原因を聞くことになったのですが……その理由に根岸は只絶叫するしかないのでした
 その根岸の態度と、この場所に来た数十分における環の態度に、律太は「もしかしてこの二人は処置法がないんじゃねーの?」と思うしかなかったのでした……

 そして数日後……

「そーいや、向阪の姉の方って、何で犬が苦手なんだ?」
「子供のころに、今このみの家で飼ってるゲンジマルを助けたのは良いけど、直後に全力全開で抱きつかれちゃって……」
「……成程ね」

 環の方のそもそもの原因を貴明に聞いたのでしたが……なんともお約束な理由を聞けました
 しかし、それでも律太は、環にはとっとと犬に慣れさせた方がいいんじゃ?とも思うのでした……

 次回に続く

 あとがき
 はい、今回はToHeart2の環と、スケッチブックの根岸の話でした 両方のファンなら分かってると思いますが、この二人の共通点は「犬が苦手」なんですよねぇ……
 原作において根岸の方はある程度改善の兆しが見えてますが、環も改善させた方がよかったかも?とは思いましたが、まぁそのままにしてしまいました(ぉぃ
 さて、次回は……野球も本編もやりたいですが……どうなる事やら

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