「成程、確かにこりゃあ面白い」
「だろう?」

 目の前にある物に、そう評価を下す律太と上野
 その表情は真剣ながらも、どこかしら面白がってるような印象を受けます

「しっかし、ピックの部分だけ人間の顔のギターなんざ、こんなふざけた考えの持ち主、そうそう居ないわな」
「だろう? そこがまた面白いと思うぞ?」

 そう、その目の前にある物……一枚の絵を評して、律太と上野は少しおかしそうな表情になってしまいます

「しかし、だ」
「? なんだ」

 その視線を外し、律太は別の方向に向かいます
 それにつられた上野の視線の先には――

「あちぃ……」
「それ以外の人間も、この美術部は面白いと思うが?」
「……確かに」

 梅雨に入ったばかりだと言うのに、気温の高さにぐったりとしている美術部員の男子生徒――BS科二年の根岸大地でした
 その近くでは、彼の恋人である神谷朝霞が彼に団扇を仰いでいます
 そんな根岸に、律太は呆れるやら感心するやら……そんな微妙な表情をしていました

「しかし、お前……美術室に来てるってのに、最近活動してないな……」

 そして根岸に、部長である須尭が苦笑を浮かべつつ彼に声を書けます

「いや、俺……油絵駄目なんスよ」
「は?」

 その言葉に対する根岸の答えに、須尭は隣にいた魚住と顔を合わせ、思わず「何言ってんだ、こいつは」と言わんばかりの表情になってしまいます

「油絵とは、言わば精神修養……アレの中にはジレンマの典型とも言うべき魔王を内装しているのではあるまいか」
「なぁ、マツリ! こいつ、いきなりおもろい事言い出しおったな!」
「おもろい事って、芦原さん……」

 須尭たちと一緒に話を聞いていた芦原は、律太と共に上野に連れられて来たマツリに、率直な意見を言います

「乾くのを待てずに色を乗せれば濁るし……早く乾かすためにシッカチーフを入れ過ぎればひび割れる……」

 その根岸の言葉に、彼がどれだけ油絵に対する怒りが込められいるのか……律太たちには理解できました
 ……しかし……

「そんな事言うなら、油絵じゃないのを書けば良いだろう?」
「せ、先輩……気持ちは分かりますが、それは言わない約束なのでは……?」
「こんにちは〜 ……根岸君、面白い格好をしてるけど……どうしたの?」

 額に汗を少したらしつつ律太とマツリが深い……深い溜息を吐いてるそんな中、水渕は普段と変わらない態度で部室に入り……その中の様子に率直な疑問を口にするのでした


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第三話 美術部



「よし! 油絵描くぞ!」
「お、やる気出たか」

 そんな中、根岸はその内にあるやる気を復活させたのか、椅子から立ち上がって道具の下に向かいます
 そして、油壺や絵の具の蓋を開けようとしますが……それが固く閉じられているのか、開ける事が出来ませんでした

「やる気無くした……」
「コラコラコラコラ」

 その道具の状態に気落ちしたかのように、根岸は再び机の上に顔を鎮めました

「全く根岸さんは……あ」

 そんな根岸に呆れたような声を上げて、マツリは絵の具を手にとって、それを開けようとしたのですが……
 力を入れ過ぎたのか、中身が飛び散ってしまいました

「気持ちは分からん訳じゃないが、道具の蓋を開けるのに筋肉増強魔法使うなよ……」
「……はい……」
「神谷、変わりの絵の具持ってこい」
「は、はい!」

 そんなマツリに、律太は只呆れたような声を上げることしか出来ません

「すまんな、須尭 ……確か、消耗品は……」
「ええ、生徒会からお金が降りることになってるので、問題無いです」
「むしろ、マツリの制服が……」
「いえ、コレは半分自業自得の様な物ですので、お二人はお気になさらず」

 律太は壊した絵の具の弁償すべきかどうかを須尭と魚住に確認しますが、逆にマツリの心配をされてしまいます

「と言うより、開けた色が制服と同じ色やから、あんまり目立たへん気もするんやけど」
「……芦原、そう言う問題じゃないと、俺は思うぞ?」

 しかも芦原に妙なコメントを出され、マツリにとってはある意味踏んだり蹴ったりな展開となってしまいました


「そうだ、我慢だ 乾いてから描くんだぞ」

 そして数分後、道具もなんとか開けることに成功し、根岸は油絵を描くことに成功しました

「しかし、雪花の妹、意外に力あるな……」
「全くな 伊達や酔狂でBS科やっちゃいないと言うべきか……」

 そんな根岸と、そんな彼を見守る須尭を見ながら、律太と上野は先ほどの光景を思い出しました
 それは神谷が固く閉じられていた絵の具等の道具を、いとも簡単に開けてしまった、と言う物です

「〜〜〜〜〜〜〜〜」

 そんな会話をしている中、根岸は椅子から立ち上がり……妙な格好を始めました

「なんと言うか、面白いが……あいつ、かなりのせっかちな」

 そんな根岸に、律太はそれ以外のコメントを思い浮かべることしか出来ませんでした


「そういや根岸……油絵の片付け方ってどうすんやったっけ?」
「「ちょ……副部長〜〜〜〜〜〜〜!」」
「あーさん……一応経験者でしょう?」
「ここはおもろい奴が多いな、ホント」

 根岸の絵が完成するかしないか、そんな時……芦原の一言に律太とマツリは呆れたような声を上げ、水渕は何時ものごときツッコミを入れ、上野は面白そうなコメントを上げるのでした

 次回に続く

 あとがき
 今回のひだまりメイドラプソディー、略してHML外伝は、上野さんを中心に美術部見学と相成りました(ぉ
 漫画スケッチブックって言えば、今回にも出てきたように、やっぱり根岸の暴走無くして語る事は出来ないと思うんですよねぇ ……多分
 にしても、神谷妹ってどんだけ握力あるのか……激しく疑問です 須尭よりあるんでしょうね、きっと
 それとは別に、今回SHUFFLEのマツリにもスポットが……今回酷い目に合わせてしまいましたが、別に彼女が嫌いだからじゃ無いですよ?

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