「おい、朝霧こっちに来なかったか?」
「ひっく ひっく」

 後数日もすれば梅雨入りとなるある日、律太は同じクラスの神谷雪花を連れだって生徒会室に入るや否や、単刀直入にそう言いました

「いえ、今日は来ていませんが……どうかしましたか?」
「ひっく ひっく」
「いや、あいつが棗の兄の方と何かやらかさないかと、最近不安で不安で……」
「ひっく ひっく」

 そんな律太の行動を何時もの事と言わんばかりに迎え入れ、ささらは答えます

「大丈夫ですよ 棗さんは妹の鈴さんと直枝さんが何時も止めてくれてますから」
「いや、棗妹はともかく、直枝は押しに弱いからな……」
「ひっく ひっく」

 マツリの言葉に、律太は少し考えるような顔になりますが……
 ふと、その視線がとある一転に集中します

「ひっく ひっく」
「んで小牧、お前、それ大丈夫か?」
「ひっく 大丈夫 ひっく じゃないかも…… ひっく」

 その視線の先……しゃっくりの止まらない愛佳に、律太は本来の目的をそっちのけに、愛佳の心配をするのでした


  ピッピッピ! ピッピッピ!
律太「彩井学園生徒会会則……みっつ! しゃっくり100回で人は死ぬと言うが……それは迷信だから、信じるな!」
雪花「確かにその通りだけど……それを会則にするのは、どうなの?」


 ひだまりメイドラプソディー!外伝 生徒会役員の日常! 第二話 しゃっくり!


「と言う訳だから、なんとかすれ」
「なんとかすれって……」
「律太さぁん……流石に横暴だよぉ……」
「ひっく ひっく」

 そして場面は料理研究部部室として使われている家庭科室
 律太の言葉に、亜沙はどう言えば良いのか分からない顔をし、なずなも思わずため息を吐いてしまいます

「でも愛佳ちゃん、ここまで凄いと心配するのを通り越して尊敬してしまいますね」
「楓先輩、無茶苦茶言わないてください……」

 楓の大真面目な顔に、律太たちも、料理研究部の面々もどうコメントして良いのか、分からない顔になります

「しかし、どう止めるべきか……」
「ここはオーソドックスに、驚かせるのがよろしいかと思いますわ」
「驚かすねぇ……お、お前を殺して俺も死ぬー」
「律太さん……包丁を首に持って行くのは良いとして、そんな演技力皆無じゃ驚かないよぉ……」
「そのわざとらしい演技力は、逆に吃驚ですけど、ね」
「ひっく ひっく」

 カレハの提案に、律太は自分の首に包丁を向けてちょっとした演技をしてみますが、その演技力は稚拙の一言以外見当たらず、勿論愛佳のしゃっくりが止まる事は有りません

「先輩、とりあえず色々飲み物を持ってきましたが……」

 そんな混沌とした状況の中、様々なコップを持ったマツリと雪花、そして智代が入ってきます

「炭酸入りも有るみたいだが……何故に?」
「いえ、なんか炭酸入りだと強そうな気がする、と稟殿が仰っていたので……」
((稟君って一体……と言うより、それを真に受けるマツリ先輩って……))

 一つだけ泡の出てる水……炭酸水の存在の真意に、佳澄美と楓はどう突っ込んで良いのか、分かりませんでした

「そう言えば、しゃっくりと言えば、横隔膜が痙攣していたんだっけ?」
「ああ、確かそうだったな」
「と言う事はここに衝撃を加えれ、ばぁ!」

 しかし、その水も効果が無く……次に律太に向いて、しゃっくりについて確認した後……智代は、愛佳に一撃を加えます
 ……が

「坂上さん……そこって鳩尾じゃ……」
「む」

 マツリの一言に、智代は愛佳に申し訳なさそうな表情を向けます

 その後、雪花の言葉で、舌をのばしてみる、眼球を刺激する等様々な方法を試してみますが、結局目立った効果が現れませんでした

「しつっこいしゃっくりだな」
「雪花先輩、もう無いんですか?」
「えっと……人にうつす……」

 そのしぶとさに呆れるしかない律太に対しての、まだ諦める訳には行かないと言いたげなマツリに対する雪花の言葉に、その場にいた皆の顔がハニワに変わります

「なんと言うか……いきなり胡散臭くなったな……」
「ひっく ひっく」

 その場にいた皆の気持ちを代弁した律太に対し、愛佳は何も言わずに小毬の方に向かいます

「あのー……まなちゃん?」
「まさか、小毬ちゃんにしゃっくりをうつすとか!?」
「ふぇっ! 酷いよ、まなちゃん!?」
「だ、だってぇ〜」
「そうだぞ、小牧……どうせうつすなら朝霧呼んでくっから、そいつにうつせ」
「あんまり酷いようだったら、病院に行った方がいいかも……」

 錯乱する愛佳と小毬、そして妙に情け容赦のない律太を余所に、雪花は至極冷静な……一歩間違えれば何も考えてないような表情で言います

「つまりは病気って訳だよな……? どういう所が悪いとか、そんな感じで?」
「うん……脳が……」

 その言葉に汗をたらしつつ、律太のその問いに対する雪花の答えは、再びその場にいた物をハニワに変えてしまいます

「た、確かに愛佳ちゃんは小毬ちゃん並にお菓子大好きでぼんやりしてるけどー! 脳が悪くてお医者様に掛る程酷くないですよー!」
「そ、そうですよ、先輩! 脳は流石に酷いですよ!」

 いち早くハニワから元に戻った佳澄美と楓は、あわあわと言わんばかりに、だけど憤然とした態度で雪花に抗議をします

「……あのー ひゃっくり、止まってませんか?」

 そんな中、一人冷静ななずなの呟きに、その場の皆の視線が愛佳に集まります

「ホントだ……! よかったぁ」
「だが、どれの効果が出たんだ? それっぽい事無かったよな?」

 心から安堵した愛佳に対し、律太はその治った理由を探ります
 そんな時でした

「ひっく ひっく」
『な、なずなちゃん!?』

 今度はなずながしゃっくりをし始めたのです! 勿論、その場にいた皆の気持ちは「人にうつすのが効果があったとは」だと言うのは、いうまでもありません

「で、どうします……?」
「放送部使って朝霧呼び出す あいつにうつせば問題は無かろう」

 律太のその一言に、皆一様に思わず酷いと思ったのですが……しかし、反対する者は結局出てこなかったのです

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、ひだまりメイドラプソディー番外編、こんかいはしゃっくり編となりました(ぉ
 元ネタは現在の4コマ人気に拍車をかけた、あのアニメです
 しかし、まーりゃんの扱い、何気に酷かった気も……(笑)

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