それはバレンタイン、そして年度末試験が終わっての、次の月曜の朝でした……

「今日は、テストの返却の前に、みんなに話しておくことがあります」

 担任である宇佐美の言葉に、皆はテストが返却されるものと思っていただけに、互いに近くの生徒と目を見合わせます

「とりあえずみんな、これを取りに来てくださいね」

 そして、彼女が教室に入るのと同時に持ってきた数十枚の紙を、皆が取ったのを確認すると、再び口を開きます

「詳しい中身は、後で確認してもらうとして、一言でいえば、それは来月にここ聖地で開催される、彩井学園生徒の武闘大会の話です」

 その一言に、その教室にいた生徒たちは、皆一様にざわつき…… きっかり一分後に、宇佐美にしばし黙ってもらうようにお願いされるのでした……


  ひだまりメイドラプソディー外伝 激闘!武闘大会! プロローグ


「……武闘大会、か」
「なずなちゃんは出るの?」

 そして放課後……部室でプリムラや風とプリントを眺めながら、なずなは暫し思考にふけています

「やっぱり出ない、かなぁ?」
「そう、だよねぇ…… 私たちはどこぞの錬金術師じゃあないんだし」
「うむ、エ○ーのアト○エだな」
「リムちゃん、風ちゃん、訳が分からないよ」

 しかし、その思考もやや一瞬、なずなは頭を振って、出場してどうなる訳じゃあない、と言う思いに達します

「なるほど〜 なーちゃんは出ないんだ〜」
「……小毬先輩?」

 そんななずな達の後ろから、小毬が声を掛けますが、なずなはその言葉に思わず首をかしげます

「小毬先輩、出るんですか?」
「うん、そうだよ〜」
「え…… 出るんですか?」
「うん、そうだよ〜」
「小毬ちゃん、それだけじゃ伝わらないですよ……?」

 その小毬の表現方法が気にならない訳が無く、なずながその真意を問いかけると、小毬は普段通りの言葉で答えます
 そしてその言葉が信じられず、再確認すると、やはり普段通りの小毬の言葉で返され…… 佳澄美、楓、愛佳の三人は、小毬のその態度に少し呆れ顔になってしまいます

「えっとね、私達は選手として出場するわけじゃあ無いの」
「……? それって?」
「なーりゃん、いるかー!?」

 そんな小毬の補足をしようと、佳澄美が補足をするため、口を開いたその瞬間、部室のドアが蹴破られます
 そこから現れたのは、元生徒会の朝霧真亜子……通称まーりゃんが現れます

「朝霧、毎度毎度悪ふざけが過ぎるぞ…… これ以上行動がひどくなると、溶鉱炉行きだぞ?」
「……律太さん?」

 その勢いの良さも一瞬……後ろから現れた男によって、まーりゃんは首根っこを掴まされ、その身を宙に浮かせます
 その男の顔を見ると、それはなずなが幼いころから兄のように慕う律太の姿がありました

「律太さん、どうしたの?」
「ああ、そうそう……元生徒会メンバーとして、なずなに頼みたいことがあってな」
「元生徒会メンバーとして?」
「ああ、元生徒会メンバーとして、だ マツリ、久寿川、先輩方」

 そんな律太とまーりゃんの来訪の理由を問いかけると、律太はまーりゃんから手を話、後ろを向いて同行者を呼び出し……
 その律太の後ろから、マツリとささらの二人意外に、男女一人づつが現れます

「へぇ、君がなずなか 話は内藤からよく聞かされてるよ ……俺はKN科大学4年の吉野屋って言うんだ」
「え! 吉野屋!?」
「まぁ、驚くよな、普通は 多分、お前らの予想通り、あの吉野屋先生の弟さんだ」

 まず男が自己紹介すると、プリムラが驚いたような声を上げ、なずなも風もプリムラに同意するような表情になり……
 律太もそんな三人に共感するように頷きます

「えっと、私はMG科3年で……風見透夜って知ってるでしょう? 彼の従姉のユミール・エンロード、って言います よろしくお願いしますね」
「はっ、はい! こちらこそ!」
「ユミール先輩は俺の先代の、吉野屋先輩は先々代の生徒会長なんだ」

 そしてもう一人の穏やかそうな銀髪の女性……ユミールから差し出された手を、なずなは思わず手を握り返します

「それで、なずなちゃんにお願いって……?」
「ああ、そうだな…… なずな、武闘大会のシステムってどこまで知ってる?」
「えっと…… 実は何も知らないの」
「まぁ、そうよな……」

 吉野屋及びユミールの紹介も終わり、律太はプリムラに促される形で本題に入り……
 その確認の答えに、律太は腕を組んで、次の言葉の表現を探すように思考に入ります

「あー…… 武闘大会はな、基本一対一のサシ勝負のトーナメント方式で行われてる、と言うのは、予想はついてるな?」
「流石に数の差を出すなら、複数人同士の戦いになるだろうしね」

 そしてその直後の言葉に、なずな達は納得するように頷きます

「それで、どっちかがぶっ倒れるまで試合が続くと、時間がかかりすぎる試合もあるから、一試合の制限は1ラウンド5分、間に3分の休憩を挟んでの合計10ラウンドで試合は行われる」
「なんか、複雑そう……」
「なに、今日明日試合が始まる訳じゃあない ゆっくり覚えれば構わないさ」

 そんな中、続く説明に、なずなは難しい表情になりますが、律太は安心させるように、肩に手を叩きます

「……ここからが本題だ ……3分の休憩に、選手の治癒を行える訳なんだが」
「なるほど、なずなちゃんにその治癒とかのメンバーに、ってこと?」
「ご明察だ」
「え? えぇ!?」

 直後の律太のセリフに、プリムラは納得したような表情になり、その言葉になずなは只驚く事しかできません

「なずな、お前の元生徒会メンバーのセコンドチームに勧誘したい ……頼めるか?」
「え……えぇっと……」

 そして、律太の言葉に、なずなは困ったように視線をあちこちに巡らせます

「えっと……あ…… もしかして、小毬先輩が出るって……?」
「うんっ、そうだよー?」
「そう、私達二年は真人君や謙吾君、稟君や透夜ちゃん達同じ高等二年のセコンドとして出場するの」

 直後、目があった小毬の笑顔に、そして佳澄美の説明になずなは気持ちが落ち着いていきます

「でも、久寿川先輩もいるし、私が役に立つと思えないんだけど……?」
「まぁ、入学から一年間だけの勉強なんざ、たかが知れてるわな」
「そ、そーじゃなくて……」

 そして、なずなは律太の誘いを断ろうとしますが、律太との会話が微妙に噛み合わず、なずなはまたもや戸惑ってしまいます

「なずな、こう考えるのはどうだろうか?」
「? 風ちゃん?」
「つまり、彼はこういいたいのだろう…… なずな自身が成長をするために、元生徒会の面子を利用する、という訳だ」
「……鋭いな 流石元アサシン予備軍 そういう事だ」

 しかし、その直後の風の言葉、そしてそれを正解と言わんばかりの律太の言葉に、なずなは気持ちが前に行こうとしてるのを、実感します

「お前がどうしても嫌だ、と言うなら、諦めるが…… できるなら、お前自身のためにも、受けてほしい、とは思ってる」

 そして、律太のこの言葉に、なずなは頷きます

「えっと……どこまでできるかわかりませんが、よろしくお願いします!」
「よーし、よく言ってくれた!」

 それと同時のなずなのセリフに、律太は舞い上がらんばかりに喜びます
 そんな律太に、なずなも自分自身に出来ることを全力で頑張ろう、と思うのでした

「あ、ちなみに言っておくと、この吉野屋先輩、去年の覇者だから、そこん所よろしく」
「え? えぇッ!?」
「内藤、君、典型的な詐欺師に見えるんだけど、気のせいかな?」

 しかし、律太の補足に、なずなは内心不安が湧き上がるのも実感するのでした……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、とうとうやっちゃいました、武闘大会…… 正直完結できる自身がありません!(何
 ともかく、この作品の経緯としては、ドラゴンボールなんかでやってる武闘大会的なものを書きたい、と言うのがあったのですが……
 基本的なルールとしては、漫画「リリカルなのはVivid」をある程度参考にしています

 ともかく、今回ひだまりスケッチから吉野屋先生の弟が、そしてライブレードから最年長ヒロインのユミールが登場しましたが、どちらも原作年齢より大幅に下がってます(笑)
 特にユミールの方は、原作設定がいろいろ複雑……特に透夜との関係がそう(透夜から見て、祖父または曾祖父の姪)なので…… こういう部分でファンタジーは難しいような、やりやすいような……

 とりあえず、目標はなずな一年生時の完結ですね 難しいし(何

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