「よーし、全員集まったな!」

 前四日間における、予選の全日程が終わり、二日後の昼食後……
 この日は、三日後から開催される、闘技大会の本戦のトーナメントの抽選が行われました

「みんなも知っての通り、次の日曜から闘技大会の本戦が始まる訳だが」

 4月から大学部に進学するささら、及びマツリを含めた元生徒会の面子となずなを前に、吉野屋は皆を確認しつつ、声を上げます

「今日の午前、そのトーナメントが決定した! 久寿川!」
「は、はいっ!」

 そして、吉野屋はこの面子を集めた理由を語り……
 午前中、その理由……本戦のトーナメントを決める教室に行っていたささらを呼び、そのささらから一枚の紙を受け取りました

「…………成程…… 面白い……」

 そして、その受け取った紙を眺めつつ、吉野屋は楽しそうに笑顔を浮かべます

「さて、改めて言うが、次の日曜から闘技大海の本戦が始まる」

 直後、その笑顔は真剣なものに変わり、その顔を律太達に向け……

「当然の事ながら、俺達もどこかでぶつかる、と言うのは、みんなわかってるな?」

 そして、その吉野屋の言葉に、皆一様にうなずき返します

「そういう事で、改めて言う必要もないと思うけど、みんな優勝を目指して頑張りましょう!」

 その皆の行動に、吉野屋は拳を上げ、それに応えるように、元生徒会役員達も拳を上げるのでした



   ひだまりメイドラプソディー外伝 激闘!武闘大会! 第五話 本戦前夜!


「ともかく、まずは第一回戦…… 改めて確認するまでもないが、俺達が同じチームでも、互いに相争う事になる」
「あ……」

 その場にいた皆が、一様に真剣な表情になったその瞬間、主に唯一初出場であるなずなに確認するように、吉野屋はなずなが気付かなかったことに改めて確認させます

 「もちろん、一回戦からシード選手同士が当たることはないけど…… セカンドシードが出てくる二回戦からはそういう訳には行かないぞ!」
「という訳だから、そうなった時には、セコンドチームも相対する、という訳だ ……なずな、わかったか?」
「まぁ、予選で乃莉ちゃんにも宣戦布告されてるから、大丈夫だと思うけど、ね」
「は、はい!」

 そして、その吉野屋の言葉を引き継ぐ律太と柴田の言葉に、なずなも只頷く事しかできません

「そういう事で、これから俺達の出番を発表する!」

 そんななずなの態度に満足した吉野屋は、皆に改めて気持ちを引き締めるように声を張り上げます

「まずはサードシード……KN大学二年内藤律太! そしてセカンドシード、MG大学二年、南リリ!」
「はい!」
「オッス!」
「お前たちは三日目……二回戦で南館最終戦ででぶつかるようだ」

 直後の吉野屋の言葉に、律太とリリの視線が、正にライバル意識丸出し、と言わんばかりに激しく交差します

「それで、律太さんの第一回戦の相手は?」
「えっと…… KN高等二年……フェインのようだね」
「ああ、あの風見の友達の単細胞、か……」

 そんな二人の様子を横目に、なずなは律太の緒戦の相手を問いかけますが、その吉野屋の答えに、律太は透夜の友達の単細胞の表情を思い出します

「同じくサードシード、KN大学2年神谷雪花……西館初日の第一試合で、相手は生徒会真鍋和、次に曽我辺恵…… そして三回戦まで上がると、トップシードの藤田浩之と当たることになる」

 そして、同じく律太を横目にしつつの、吉野屋の言葉に、声を掛けられた方……雪花は只淡々とその言葉に頷きます

「そしてトップシードの俺は、南館…… 内藤やリリとは、準々決勝で上がったらあたる可能性がある」
「マジすか……」
「ああ、大マジだ」

 そんな雪花から目を外し、次に未だに火花を散らす律太とリリの頭に手を力強く抑え込み、その耳元で声を張り上げます
 その言葉に、律太は頬を引きつらせますが、吉野屋はそれを無視します

「さて、最後に……」

 そして、律太とリリの頭から手をどけると、吉野屋は自身の腕から皮状の帯……リストバンドを外しました

「それ、外して良いんですか?」
「……それは?」

 その吉野屋の行動に、律太は驚いたような表情になりますが、そんな律太になずなは頭に疑問符を浮かべます
 そんななずなの態度に、吉野屋はそのリストバンドをそのままなずなに手渡します

「……ッ! な、なんなんですか、これッ!?」
「驚いたろ? これは魔界で開発された、特殊鍛練用のバンドなのさ ……重いだろう?」
「は、はい……」

 それをなずなが受け取ると、そのリストバンドの重さに、思わず膝をつき…… その理由を、律太が(何故か)ドヤ顔で説明を始めます

「とりあえず、腕に付けてそこに魔力を込めてみろ」
「……? あ……ッ!」
「わかったようだな つまり、こういう風に総魔力を上げる鍛錬をするのさ」

 そして、説明と共に、律太と吉野屋の二人は、なずなに敢えてそれを腕に嵌める様に促します

「それで腕に魔力を込めるイメージで……」
「えっと…… あ……ッ!」

 その言葉に従うと、最初にリストバンドを持ったときからは信じられない位に、軽々と腕を動かす事に驚きます

「そうやって基本的な魔力総量を上げる、って事さ ……勿論、それで強くなれるわけじゃあないんだけど、単なる重りと一週間毎に交互に付け替えれば、な?」

 そして、その説明に、なずなも納得するように頷くのでした

「兎も角、本戦までは外して、鍛錬も軽く流す程度で……って事になる」
「成程……」
「と言う訳で、本日は解散ッ! 夕方まで軽い自主練!」

 そのなずなの納得した表情に満足した吉野屋は、手を叩いて皆を解散させるのでした……


「……? 赤野?」
「それに和殿?」
「? ああ、プリムラに大道か」

一方そのころ……
授業が終わり、大学部の図書室に向かおうとしたプリムラと雅は、その道すがら同じ学年のKN科である、赤野烈人と、真鍋和に遭遇します

「どうしたの?」
「ああ、一回戦に向けての予習……って所かな」
「赤野に頼まれてね 内藤先輩から貰った、去年の風見先輩の試合のデータを渡していた所なの」
「あ、そっか 赤野の最初の相手って、透夜だったっけ」

 その赤野の態度に疑問を持つプリムラでしたが、それに対する答えに、数時間前に公開されたトーナメント表を思い出します

「それで? 透夜を相手に、赤野はどう考えてますかな?」
「……野田とか田井中あたりは俺が絶対優勝って、バカみたいに騒いでるけど……」
「そうだよね(汗)」

 そのデータ……スフィアと呼ばれる、私たちの世界のビデオカメラの代わりとなる物……を和から受け取りつつ、赤野はプリムラから質問を受けますが……
 それに対しての赤野は、野田や律を思い出しつつ、呆れたような表情になってしまいます

「ああ、そうだ、プリムラに大道」
「? どうしたの?」

直後、赤野は真面目な表情に変え、プリムラも雅も、それに首を傾げます

「風見先輩、どうも剣よりも魔法が得意、って話だし…… 対魔法戦の鍛錬の相手をしてほしいんだけど」
「うむ ……勝てないまでも、情けない戦いをするつもりはない、と言いたいのだな?」
「そういう事なら、喜んで相手をするよ〜」

 それに対して、赤野は事情を説明すると、雅もプリムラも笑顔で(もっとも片方は無表情でしたが)応えるのでした……

 次回に続く


 あとがき
 と言う訳で、今回は本戦の前日のお話、と言うことで 遅くなって申し訳ない(汗
 んで、かなりいまさらですが、オリジナルキャラはブログ「ゆき日記改めゆきの日々精進っ」という所からいただいております(ホント今更だよッ!
 ともかく次回、本戦開始編となります トーナメントを含め、バトルシーンは暫しお待ちを〜 

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