「さて、予選も後半半分になった訳だが」

 聖地主催の彩井学園闘技大会も、予選の三日目……
 出場者のうち、シード選手以外の半分が振り落とされ、その残りである約150名のうち、本戦に出場する78名がこれから決められますが……

「なずな、秋山は大丈夫か?」
「……りっちゃんと友兼さんと野田ちゃんが昨日、部屋を追い出されて、そのまま……」

 ひだまり壮女子寮の前で、律太はなずなに先日予選落ちした選手の一人・秋山澪の容体を問いかけますが……
 なずなの方は、只々頭を振ることしか、その答えとせざるを得ませんでした

「まぁ、追い出された方は、澪をそそのかして出場させたから、良いバチだよね〜」
「そのせいで、秋山の容体を確認することができないが、な」

 そんななずなと相対して、乃莉の方は、その澪を無理やり出場させた三人に只呆れ以外の感情を持つことしかできず……
 故に、その容体を心配する以外の選択肢を持てない律太は、腕を組んでどうすべきかを熟考します

「内藤君、澪ちゃんは私と美佐枝の二人で見てるから、あなたはなずなちゃん達と見学に行ったら? 乃莉ちゃんは後半戦行けるんだし、早く行った方がいいわよ?」
「すんません、杏子さん…… 頼めますか?」

 結局、時間がおしてきたために、ひきこもった澪は、寮の管理人である杏子と美佐枝の二人に任せる以外の選択肢を取ることは出来なかったのでした


  ひだまりメイドラプソディー外伝 激闘!武闘大会! 第四話 予選後半戦!


 さて、そんなこんなで予選三日目が始まって、数十分…… 事件は唐突に起こりました

「はは…… 正に阿鼻叫喚だな……」

 前の二日間同様、観客席で予選出場選手を見ていた律太達は…… 否、闘技東館で見学していた観客はそのすべてが(その度合いに差があれど)苦しみの表情を浮かべていました

「り、律太さぁん……」
「まぁ、なんだ、その…… あー…… 頑張れ……」

 その中で、なずなは涙目になって、隣にいる律太にその原因を問いかけますが、律太は只言葉を濁すこと以外の選択肢を取ることができません

「まぁ、当の本人としては、戦楽器魔法を使ったつもりなんでしょうが」
「にしても、コレは酷いわ……」

 その律太の表情に共感を覚えつつ、透夜はリングの一歩外にいる、バイオリンを持ちながら、首を傾げるツインテールの少女……一之瀬ことみを眺めます

「まぁ、一番の被害者となった岡崎と古河には、只同情するしかない、わなー……」
「それと、今回の勝負の相手となった魚住先輩やそのセコンドの須尭先輩や芦原先輩にも、ですよ……」

 そして、そのことみの近くにいて、正に生ける屍状態となっている朋也達に、律太やなずな達は只同情することしか、出来ないのでした……

 そんなこんなで数分後……
 結局岡崎朋也対魚住純の勝負は引き分け扱いとなり、あっさりと次の試合と運ばれていきました

「兎も角、次は環先輩と野崎か……」
「気になるか?」

 その勝負……向坂環対野崎奈三子の勝負に、それを真剣に眺める透夜に、律太は真剣な表情を保ちながらも、軽口をたたきます

「律太さん?」
「ああ、去年あの向坂は本戦第一回戦でこの風見に負けたのは、一昨日言った通りだ」
「結果俺が勝ったとは言え、強かったからな…… 優勝を目指すなら、マツリ先輩同様気をつけなきゃならん相手なのは確実だろう」

 そんな律太と透夜の態度に、なずなは訝しげな表情になりますが、その二人の説明になずなは納得した表情になります

「セコンドは…… 藤林の妹の方に……うわ、水斑、か……」
「情け容赦ない、と言うよりは……」
「他にセコンド要因が居ない、と言った方が正しいでしょうねぇ…… 古河先輩も芦原先輩も病院送りになっちゃったみたいだし……紫苑先輩たちは他の会場らしいし」

 その環の方のセコンドの二人の少女の片方に、律太は顔をしかめ……とうや
 それでも、その意図は奈三子を全力で叩きのめす以外の物を、律太達は感じざるを得ないのでした

「どっちにしろ、胸借りるつもりで行くしかなさそうだね……」
「な、奈三子さん…… 自棄になっちゃダメですよ!」
「でも如月ちゃん、奈三子さんの気持ちもなんとなくわかるよ……」

 その一方、その環と相対する奈三子とそのセコンド……如月とプリムラも、何とも微妙な表情で奈三子を見送ることしかできません

「それでは両者……開始!」

 その両者が中央に立ったその瞬間、審判が合図をだし、それと同時に奈三子は環に向かって一直線に走り出しました

「マナよ、我が求めに応じよ……」
「……ッ! あの魔方陣の色はッ!?」

 その奈三子が繰り出す剣を受け止める動作と共に、利き腕の逆側の手から、黒色の……否、闇色と表現した方が正しい魔方陣が現れます

「かの者の剣の力の苦痛を、そのままかの者に返せ!」
「まさか、闇属性魔術……!」
「しかも何気にレベルの高い魔法だっ!」

 その魔方陣の意味を、透夜達が理解したその瞬間、その魔方陣から、無数の闇色の手が現れます

「さあ行きなさい! アイアンメイデン!!」

 そしてその無数の手は、奈三子の剣を受け止め、そのまま弾き飛ばした後、残りの手は奈三子の動きを止め、なんとそのままそん彼女の体をくすぐり始めます

「ぷっ…… くくっ…… うっ……」
「なずな、とりあえず暫く我慢しろ……」

 そんな中、奈三子はこみあげてくる、ある感情を抑えようと必死になり…… 律太は、その奈三子の姿を見せまいと、そっとなずなの目を塞ぎます

「あーっはっはっはははははは! あーっはっはっはっはっはっは! あははははははははははは!?」

 そして、暫しそれを我慢していた奈三子でしたが、もちろんそれに耐えることができず…… ついには大きな声で笑い始めたのでした……

「しかし、環先輩もなんて残酷な魔法を習得したんでしょうね……」
「全くだ…… 多分、水斑や十条に教わったんだと思うが」

 そんな奈三子の姿に、透夜も吉野屋も、何とも痛ましい表情で、只眺めることしかできません

「まぁ、恐らくは神族のマツリ先輩対策も多分にあるんじゃないかと……」
「ああ、成程…… ありえない話じゃあない、か……」

 そして、その姿から目を逸らしつつ、透夜も吉野屋も、只々奈三子の冥福(?)を祈ることしかできないのでした……

「とりあえず、野田や友兼や田井中がアレを見て、分を弁えてくれればいいんですが」
「そうだよなー…… まぁ、連中の存在が一年の出場者たちが、いい意味で冷めた目になれるのも事実なんだろうけど、ねぇ……」
「あ、あのー…… だったら律太さん、手をどけてくれるとうれしいんだけど……」

 そんな中、真面目に話す透夜達の言葉を聞いていたなずなは、目を塞ぐその手をどかすように、要求するのでした……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、真っ先にGAの奈三子さん及びTH2のタマ姉ファンのみなさん、ごめんなさい、と言わせてもらいます いや、真面目に申し訳ない!
 ちなみに言っておくと、奈三子は負けました そりゃあもう、体力切れで負けましたよ? 何とも情けない理由なのも事実なので、重ね重ね申し訳ない、と……
 でもまぁ、今回は「こういう勝負もあるもんだ」程度に思ってくれれば、うれしいですね

 ともかく闘技大会、次回は予選と本戦の中心点にあたる所になる予定です まぁ、今回みたいなギャグばかりグダグダやる訳にもいかないですしね
 その前に、トーナメントをちゃんと決めなきゃダメなんですが、ね…… なんせ、予選突破78名にシード選手24名なので……

inserted by FC2 system