「宣誓! 我々はスポーツマンシップに乗っ取り、全力を持って戦う事を、誓うものである!」

 選手登録が完了してから一週間…… とうとうこの日がやってきました……
 その場所…… 聖地首都中心にある、議事堂やや東にある、闘技大会開催地のコロッセオの中央に、その数総勢約500名の彩井学園の生徒が集まっています
 そしてその先頭に、綾井学園KN科高等1年……そして、同じく彩井学園生徒会の真鍋和が、開会式の最初にやるべきこと……選手宣誓を行っていました

「さて、とうとうこの日が来たモンだな……」
「す、凄い人ですね……」

 開会式全ての事業が終わり、気合全開と言わんばかりに両の拳を叩く律太に対し、なずなは周りの人数の多さに、その姿を震わせます

「選手登録者その数370名程…… セコンド登録者も130名程…… しかも観客として来てるのが数千から数万だからな…… 初参加としては、緊張しても当然、か……」
「それでも、あっちにいるやつよりは、まだまだマシなレベルなのも、事実だな」

 そんななずなに、吉野屋は共感するように頷きますが、それに対して律太はある一定の方向を向いてそれに対する答えとします

「……ぶつぶつ……ぶつぶつ……ぶつぶつ……」
「……あれは、確か真鍋のクラスメートの……」
「……澪ちゃん…… なんか怖い……」

 もうなんで選手登録なんかしたの?と問いたくなるほど、緊張でその身を震わせる澪に、律太は呆れ、なずなもどうコメントしていい物か、と言わんばかりの表情になってしまいます

「なーずなっ♪」
「あ、乃莉ちゃん!」

 そんな澪をスルーするかのように、なずなに抱き着く影が一つ…… なずなの親友兼ルームメイトの乃莉が現れます

「いやー、とうとう予選が始まるねー♪ 相対したら、宜しくね♪」
「ちょ、直接勝負するのは、私じゃないよ、もぅ」
「それに俺達元生徒会はみんなシード選手だ」
「ま、秋山みたいにプレッシャー酔いしてる訳じゃあないみたいだし、良いこと……なのかな?」

 そしてその言葉に、なずなも律太も吉野屋も、呆れるやら感心するやら…… そんな表情になってしまうのでした


  ひだまりメイドラプソディー外伝 激闘!武闘大会! 第二話 予選開始!


「洋平ぃぃぃぃぃぃぃ! 覚悟ぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ひっ! ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」
「勝者! KN高等三年……藤林杏!」
「あーあー…… 何とも情けない……」

 とうとう始まった予選会…… 中央に設置されるリングの中で、杏の手によって、その顔をどんどんモザイクと化していく春原に、観客席へと続く階段を下りながら、律太は呆れた表情になってしまいます

「お、ありゃあ……」

 そんな中、律太は観客の中に見知った後姿を発見します

「おう、風見……こんな所で何してる?」
「あぁ…… 内藤先輩に吉野屋先輩ですか」

 そしてその声を掛けた相手……透夜も、律太達三人に気付きます

「こんな所で何やってる? 予選は……」
「出ませんよ、俺は ……一応、シード選手ですからね」
「あれ? 確か去年、お前は…… あぁ!」

 その場に透夜がいたことに、律太は疑問を持ちますが、直後にその理由を理解します

「どういうことなの?」
「あー、っとな…… シード選手にも色々あってな…… シード選手が出場しなかったら、別の奴にその権利が移行するんだよ」
「つまり、シード選手の中に出場しなかった奴が、何人かいる、ってことだ」
「? だけど、シード権持ってるんだし、出た方がいいんじゃあ?」

 その律太の態度に首をかしげつつ、なずなが問いかけると、その理由を律太が説明します

「まぁ、大学4年あたりがその出場しないやつの大半だな もう就職も決まった訳だし……」
「二連覇がかかってる吉野屋先輩なんかは、特別なんだよ」
「ふぅ……ん……」

 そしてその説明に、なずなは何とも理解したようなしてないような、微妙な顔になってしまいます

「それで、風見は強そうなのを見つけたか」
「……新入生なら、あいつですね」

 そんななずなを無視し、律太は透夜に問いかけると、その透夜はリングにまっすぐ視線を向けます

「えー……っと…… 高等一年の赤野烈人、かな?」
「ええ 今回は秋山が相手だから、まず勝てるでしょうが…… 藤林先輩との勝負を見れば、ある程度はその実力が分かる、ってところですかね」

 その視線の先にいる生徒……烈人の姿に、透夜は自分が彼とどう戦うか、イメージを膨らませてるような表情になっていきます

「え、えっと…… もしかしたら、選手の人にこういう事聞いちゃダメなんでしょうが…… 乃莉ちゃん達は今年、どこまで行けるんですか?」
「まぁ、秋山は見ての通りだ、と言わざるを得ないが…… 取り合えず、予選会はリーグ戦で二回行われる、と言うルールは……知ってるか?」
「は、はい 律太さんから聞きました」

 そんな表情に、なずなは前から聞きたかったことを、思い切って聞くことにします
 そのなずなに、烈人にあっさり負けて、担架に乗せられて運ばれていく澪に視線を移動させながら、嫌な顔一つせずに透夜は答えます

「言うまでもなく、予選会に出るやつ全員で総当たり戦、という事は勿論あり得ない ……出場選手が多すぎるからな」
「だから、まず10人一組、35組に分けて、まずその数を半分にしてから、二回目に入る、でしたよね?」
「そういう事だ」

 しかし、その前に透夜は大会の予選会ルールを確認し、なずなが大会についてどこまで知っているかを、確認します

「俺も先輩や先生方から話を聞いただけだから、それを前提にして話をさせてもらうが、それでいいか?」
「は、はい!」
「とりあえず、見ての通り、予選からのスタートは、一年だけじゃあない ……シード選手はたったの24人だからな」

 そして、まず結果をあっさりと言わず、その理由から説明を始めていきます

「もちろん、入学前からも、ある程度鍛錬してるやつは少なからずいるだろうけど……」
「もしかして、予選会を通過するのも、難しいんですか?」
「うむ、そうだな 上手くやっても、それは予選会の通過だけでしかない、と言うのもなずなはわかってるだろ?」

 そんな律太達の言葉に、なずなは只頷くしか選択肢がありません

「俺も去年、環先輩や内藤先輩と戦って分かったんだが、本戦は予選会と違って空気が違うんだよ 観客の数も、今と全然違うしな……」
「……よく言うぜ あれだけの観客の中、堂々と向坂姉に勝った上に、セカンドシードだった俺をサードシードに叩き落としたクセに」
「そう言いますがね…… それでも、やっぱ予選会と比べればやっぱり緊張はしますよ」
「……まぁ、確かにな……」
「つまり……予選を勝つのも難しい、ですか?」
「まぁ、な 無事勝ち残っても本戦でシード選手がいる、という事だ」
 
  そのなずなを意図して無視してるわけではないものの、透夜と律太はつい一年前の大会を思い出し、そんな二人の言葉に、なずなはこの大会の厳しさを理解します

「つまり、一年連中が予選を勝ち抜くのも難しい、という事さ」
「そうです、ね……」

 そして結果論として、透夜がなずなもここで完璧に理解した結論をここではっきりと表明しますが……

「ま、そんなツラすんな」
「え……?」 

 その透夜の言葉に、うつむいてしまったなずなの頭を優しく叩きながら、律太は笑顔を向けます

「要はあいつらのモチベーション次第、という事だ ……今年負けても来年、再来年があるしな」
「それに、あの子たちが今年予選で終わる、と100%決まった訳じゃあないしね」0

 そして、なずなが悲観的にならないように、明るく声を掛け、吉野屋もそれに同意するように大きく頷くのでした

「さて、去年の風見みたいな一年は、出てきてくれるかな……?」

 しかし、なずなの表情が明るくなるのを確認せずに、律太は澪に勝利を収めた烈人を眺めながら、一週間後に行われる本戦を楽しみにするのでした……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、唐突に予選開始です 鍛錬篇で引っ張るという手法もあったのですが(何
 とりあえず、出場選手だけで370人程度とありますが、少なくとも7割はいわゆる「モブキャラ」だったり……
 つー訳で、緊張しやすい澪はともかくとして…… いや、コレはここでいう事ではありませんね
 次回の闘技大会は、今の所未定です 本編なども更新したいですしね

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