「お、来たな」

 なずな達が二年になって三日目……
 先代副部長・カレハの妹である、ツボミを始めとした、新入部員の勧誘を考えなきゃ、と思いつつなずな達が料理研究部の部室に入ったその時でした
 現三年である小毬達の他に、彼女達の作ったおやつを目的に来たであろう、透夜や律太、上野や柴田の存在が有りました

「どーしたの? 今日はあんまり作れないと思うけど」
「嫌だな…… 俺が毎度毎度佳澄美の手料理を目的にここにきてると思ったのか?」
「え……違うの?」
「プリムラぁーッ!」

 なずなもそういう目的で律太がここに来た、と思っての言葉の後の透夜の発言に、プリムラは心底以外な顔になってしまいますが……

「いやな、俺と上野と柴田の会話の流れて、さめちゃん先生とかキクヱ先生が怒った姿を見たことが無い、って事になってな」
「成程、教室にトラップ仕掛けて先生たち怒らせようって事?」

 そんな透夜を制しつつ、律太はここに来た理由を説明しますが、プリムラはそれをまさに皆まで言うな、と言わんばかりに苦笑を浮かべます

「それで、宇佐美先生怒らせるのは良いけど…… それってどうするの?」
「いや、それは聞くまでもないだろう……?」

 しかし、その呆れ顔も一瞬……透夜にその方法を問いかけますが、その問いに律太は態度で示します

「それって…… まさか!」
「その……ッ! とぉーーりっ!」

 律太が出したのは、そう…… 私たちの学校でも、教師が毎日のように使う道具……
 所謂黒板消しと呼ばれるものでした……!


   ひだまりメイドラプソディ―! 第八十二話 トラップ!


「ね、ねぇ、律汰さん…… これ、辞めた方が良いんじゃあ……?」
「まぁまぁ、なずな…… 叱られるのは俺たちなんだし、止めてくれるなや」

 そしてなずな達が教室に入って数分…… 二年生三人がお茶を飲んだのを確認すると、律太はドアに罠と言う名の黒板消しを設置します

「だ、大丈夫なのかなぁ?」
「う、う〜ん……」
「あはは……」
「な〜に、大丈夫大丈夫〜」

 そんな律太を眺めながら、なずなは不安を口にし、プリムラもそれに同意し、小毬も苦笑を浮かべ、そんな彼女たちに透夜はいい加減な言葉を口にします

「あれ? そーいえば、宇佐美先生って今日来るの?」

 そんな時、なずなはその脳裏に浮かんだ事を、思わず口にし……
 その言葉に、その場にいた皆は思わずその身を固めてしまいます

「……そういえば、宇佐美先生ってたまに殿や山中に顧問代理押し付けるんだっけ」
「どどど、どーすんだ!? 山中は別に怖くないが、殿は……!」

 そしてなずなの言葉を、心の奥底まで届いた透夜達は、思わずその身を震わせてしまいます

「来るぞ!」

 しかしその逡巡も一瞬…… 上野が家庭科室……なずなたちが今現在いる教室に向かう足音に気づき、その場にいた皆の視線が交差します

「どうする?」

 そして律太の言葉に、透夜達がその答えに迷ったその瞬間、無常(?)にもその扉は空いてしまいます
 その直後、皆の視線はその扉に向かいますが……

「え?」

 その扉を開けた主…… 宇佐美真由美は、教室内にいる全生徒の視線に、思わず狼狽えるような声をあげます

「あれ?」

 そしてその宇佐美の言葉と共に、なずなたちはその宇佐美の頭上に視線を持っていきますが、そこに有る筈のものが無くて、思わず声をあげてしまいます

「えーっと…… どうしたんですか?」

 そんななずなの声と共に、律太達も戸惑うような表情を浮かべ、宇佐美もそんな顔にどんなリアクションをしたものか、と言わんばかりになってしまいます

「あ」

 そんな何とも言い難い空気の中、透夜が何かに気づいたような声を上げ……
 その声に、その場にいた皆の視線は、透夜の視線の先に目を向けます

「な、なにぃっ!」

 その視線の先…… そう、宇佐美の足元にある物がなんなのかに気づき、その意味を理解した瞬間、律太は思わず声をあげてしまいます
 そう…… 律太達が宇佐美に仕掛けたトラップは、宇佐美が扉を開けた瞬間にそのまま宇佐美の頭上に行かず、そのまま落ちて行ってしまったのです!

「なんてこった……」
「なんてこったじゃないよ、律太さん……」

 その目先の現実に、律太は膝を付きますが、そんな律太になずなは、もう心の底から呆れています、と言わんばかりの声を上げるしか方法は有りません

「えーっと、紅薔薇先生に報告……」
「「そ、それだけは勘弁をッ!!」」

 そんななずな達の態度を見て、宇佐美もここに来て今現在の状況を理解したのか、律太の元担任にて、透夜の現担任である紅薔薇撫子を探しに行こうとしますが……
 それはその二人に止められようとします

「ど、どうしましょう?」
「ほっといて良いよ 止めなかった私たちも私たちだけど」

 そんな律太と透夜のあまりにあまりな姿に、なずなはどうしようかと佳澄美たちに問いかけますが、彼女たちはその二人をスルーする、と言う選択を選びます

「それよりなずなちゃん!リムちゃん!風ちゃん! 新入生勧誘のポスターを作りましょう!」
「あ、はーい!」

 そしてこの日の本来の活動である、新入生勧誘の準備を始めるのでした……

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、今回はちょいアホな展開とさせてもらいました
 元ネタは、スケッチブックで空閑が根岸にしてたトラップからです
 次回からは……そろそろいい加減あずにゃんださなきゃ、って感じですね いや、それ以前になずな達の部活やらなんやらが先なんですが
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