それは、年度末テストが終わった、2月14日…… 私たちの世界同様、バレンタインデーでもあるその日でした……

「……? 小毬先輩にゆの先輩?」
「あ、なずなちゃん!」
「なーちゃん!」

 テストから解放されて何時もよりも機嫌よく部室である家庭科室に向かったなずなと風が見たのは、何時もよりも真面目な表情をする、ゆのと小毬の姿でした

「どうか、したんですか?」
「えー……っと……」
「そのー……」
「……?」

 その真面目な表情が気にならない筈も無く、問いかけてみますが、その答えはなんとなずなから視線を外す、と言う何とも微妙なものでした

「とりあえず、現場を見てもらった方が正しい、と思う ……言葉であれを説明するのは難しい」
「……そうだね」

 そんな二人のフォローに回ったのは、佳澄美の手料理目当てで部活をサボろうと考えていた……訳ではない透夜でした
 そして、そんな透夜達に連れられて、何故か美術部に向かったなずながその目に見た物は……

「俺にもチョコを寄越せ〜〜〜〜〜!」
「えーっと……保村先輩?」
「うん、保村君……」
「と言うより、あの保村先輩の腕に抱いてるのって……」
「うん、春日野先生が飼ってる、ニワトリのピーちゃん……」

 そう…… 何故か腕に一匹のニワトリを抱き、それにナイフを突きつける、と言う暴挙に訴え出ている保村の姿があったのでした……


  ひだまりメイドラプソディー 第七十五話 バレタン!


「えっとね、実は美術部で本命チョコを貰ってないの、友兼君とあの保村君なの」
「えっと……それってつまり、今日が……」
「バレンタイン、ってことなんですか?」
「………………」

 最早どうコメントしていい物かわからない……そんな表情になってるなずなと乃莉に、水斑は首を縦に振って、それの答えとします

「つーか、なんでピー助を人質……もといこの場合ニワトリ質、か? ともかく、何故あんな風に?」
「……深く気にしないで上げてください…… 今の保村さん、気持ちにいろいろあって錯乱中ですから……」

 兎も角、保村の行動の意味は理解しましたが、今度は透夜がその場にいた皆のもう一つの疑問点を口にし……
 その問いに対する友兼の答えに、皆一様に、とりあえず納得するしか方法はありません

「クェケッケッケッケッケッケ……」
「て、てめぇ! 今俺の事馬鹿にしただろ!?」

 そんな中、自分の状況を理解しているのか、いないのか…… ピーちゃんはもう至極マイペースに只鳴き続けるだけであり……
 そのピーちゃんの態度に、保村はもう怒り心頭で手に持っているナイフをさらに近づけます

「……つーか、あれっていつも通りと言うか…… 動物の本能なんじゃねーの?」
「……と、思いますけど……」
「いや、あれは『俺の事は構わないから、この犯罪者をとっちめてくれ』と言っている」
「「それマジ!?」」

 そんな保村に対し、透夜もなずなもどうツッこんでいいのか、と言わんばかりの表情になりますが……
 その直後の雅の言葉に、正に信じられない、と言いたげになってしまいます

「……まぁ、つまりは俺のサンダーボルトか水斑先輩のファイアーボルトでピー助を焼き鳥に、と言う選択肢も出たわけだが……」
「……風見君、それ本気で言ってる?」
「一応は、選択肢のレベルだ 春日野先生のペットとは言え、意味のない殺生は主義じゃあない」

 しかしその表情も一瞬…… 透夜のその真面目な発言に、ゆのや小毬は頬を引きつらせますが、透夜はそれにその表情を崩さずに答えます

「誰か、あいつの後頭部全力でぶん殴りたい、ってやつ、いるか?」
「……あの、先輩…… 気持ちはわかりますが、どうやって保村先輩の後ろに回り込むんですか?」
「……だよなぁ…… 一応美術室だし、影として使える障害物は沢山ある訳なんだが」

 そして直後に周りを見渡しますが、それと同時の言葉に対する乃莉の答えに、透夜もそれに同意をせざるを得ません
 そんなグダグダな空気の中、唐突に事態が動き出しました……

「ぐぁ……」
「クケ―――ッ! ケッケッケッケッ……!」
「って、保村ぁ!?」

 そう……その瞬間、殴られたような音と共に、保村が膝をつき…… それにピーちゃんが驚いたような鳴き声と共に飛び上がりました
 そんな保村に対し、透夜を中心に皆一様に驚いたような表情になりますが……

「ほぉー…… むぅー…… らぁー…………」
「えぇー…… っとぉ……」
「あれって、春日野先生、か?」
「……多分……」

 その後ろから出てきた一人の女性…… 美術部の顧問にて、TH科の教師でもある春日野日和が現れました
 その春日野の足元には、保村が倒れており、その原因が彼女にあることが、雄弁に語っていました

「ピーちゃん捕まえてアンタは何がしたいんだッ! コノッ! コノッ!」
「か、春日野先生! 落ち着いてくださいッ!」

 そしてそれで保村をしばき倒したと思われる竹刀で、更に保村を殴りかかりますが……
 それが数発殴った後に、乃莉達美術部員に取り押さえられるのでした……

  次回に続く

 あとがき
 という訳で、今回はバレンタインのトラブルイズ美術部編でした タイトルは毎度毎度わざとですよ? 一応言っておきますが(何
 今回、敢えてなずな云々……と言うか、料理研究部でのチョコが出しませんが、コレは外伝で期待せずに待っててくださいね(ぁ
 んで、今回スケッチブックから顧問の春日野先生&ピーちゃんが初登場……ですが、先生の方はマジ切れさせておしまいでしたね 次はこんな扱いにしないようにしておかなきゃ……(汗

 ともかく次回…… ネタの出方によりますが、本編は最初の一年の集大成的なものをやってみたい、とは思います その後ホワイトデーかな?

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