「なずなちゃん、これをどうぞ」

 年越しまで後数日となったその日、何時もの如く部活に参加するために学校に来たなずなは、数分前に来ていた愛佳に、一枚の紙を手渡されます

「……招待状?」
「そうだよ?」

 その紙…… 半分に折られ、その部分をなずなに見せるように渡した愛佳は、そのなずなの質問に、事もなげに答えます

「えっとね、今度生徒会の会長たちと一緒にお茶会をするの」
「そ、それが私と何の関係が!?」

 そして事情を説明した愛佳に、なずなはなぜ自身が招待されるのかが、気になります

「それはね、来年……と言うより来年度、と言った方がいいのかな? その時に、部活の予算編成とかそういう会議があるんだけど……」
「つまり、それに慣れるために、私となーちゃんが招待される、という訳なんだよ〜」

 そのなずなに、愛佳と小毬の二人が、丁寧に教えてくれ…… そののんびり笑顔に、なずなも納得したような表情になってしまいます

「詳しいことは、今夜にでもりっちゃんに聞くと良いよ〜」
「は、はい……」

 小毬の言葉に戸惑いつつも、なずなが頷いて、そんなこんなで次の日……
 澪や律、小毬や愛佳に連れられて、生徒会室に付いたなずなが目にしたものは……

「あ、なずなちゃん、おはよう〜」
「……えぇ……っとぉ……さわちゃん、だよね?」

 その女性……サングラスとマスクをして、もはや完璧不審者と化しているさわ子と、その彼女にどんなリアクションをしたものか、と言わんばかりの、透夜とネリネでした

「い、一体どーしたんですか?」
「えっと……」

 その場にいた皆が、どうコメントをしたものか、と言わんばかりの表情の中、その場にいた者を代表してなずなが問いかけると、さわ子は顔にあった物を取り外します
 そこから出てきたのは……

「さ、さわちゃん……」
「山中、アンタ……」

 そう……ここ数日、徹底的に肌の手入れをした、と言わんばかりに、光り輝く彼女の顔でした……

「「やりすぎ」」
「だ、だってぇ〜! きれいになりたかったんだもん〜!」

 そしてさめざめと泣きだすさわ子に、透夜と律の二人は、その肩を優しく叩くのでした……


  ひだまりメイドラプソディー 第七十一話 お茶会


 そんなこんなで二十分後……

「はいなーちゃん、どうぞ〜♪」
「あ、ありがとうございます」

  とりあえず、只さめざめと泣くだけのさわ子を無視して、生徒会室にお邪魔したなずな達は、小毬とささらが用意した、お茶とお菓子を楽しむことにしました

「あっ…… 凄く美味しいです……!」
「うむ、ジグリム共和国最大の温泉街と評判のコルネリ村で作られた、アールグレイだな 確か市場で出る物の20倍の値は張る最高級品のはずですが……?」
「ああ、そうだな」

 そして、そのお茶を一口つけて、その味に驚き、透夜もそのお茶の味に、思わずその場の上座に(ちゃっかり)座っていた律太に問いかけます

「実はな、この茶の葉は、こっちの魔界のお姫さんの他に、軽音部の琴吹が少し分けてくれてな…… つまりは、生徒会の予算の懐は、あんまり痛まない訳だ」
「な、成程……」

 そしてその問いかけに対する説明する律太に、なずなも透夜も思わず納得したような表情になってしまいます

「で、でもさ〜 上級生の先輩に給仕させといて、あたしらがこうやってお茶するのも、ちょっと違和感だよな〜」
「ほう、田井中でもそんな繊細な部分があるもんなんだな」

 しかし、律は小毬やささらと言った、上級生にお茶を入れさせて、自分たちはそれを楽しむ立場に違和感を持ちますが……
 律太はその律の言動を、心の底から意外そうな表情を向けてしまいます

「まぁ、特にME科には言えることだが、ただ単に「お世話する」だけじゃなく、逆に「お世話される」事にも慣れろ……その程度に思っておけばいいさ」
「そーなのですよ、りっちゃん、なーちゃん」

 直後の律太、そして小毬と、それに同意をするささらやマツリの行動に、律だけでなく、なずなも澪も、それに納得をせざるを得ません

「ま、あっちの現生徒会長様は、秋山と一緒にお茶をする事そのものが、目的っぽいイメージはあるが、な」
「あー」

 しかし、さらにその直後の律太の視線の先……お茶を飲む澪の姿を、恍惚とした笑顔で見守る曽我部の方を見ると、律は思わず物凄く納得したような表情を禁じえることができません

「んで、ともかく、だ……」

 そして、話が綺麗に纏った、その直後…… その場にいたほとんどの人間の視線が、ある一定の方向に集まります

「え? 何よ?」
「いや、どーもこーも、ねぇ……」

 その集まった先……智代にお茶を入れてもらっている、さわ子は、その視線の意味を問いかけますが、透夜はなずなと目を合わせて、どーコメントしていいか、わからない、と言う顔になります

「えー……っと、さぁ…… 大丈夫、か?」
「……あきらめたわ……」

 そして、言葉を選びに選んだ、透夜のその一言に対する、さわ子の答えに、なずな、澪、律の三人は、思わずため息をつくことしか出来ませんでした……とさ

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、久方ぶりに本編の更新と相成りました
 んで、今回目立ったのは、さわ子先生ですね…… コレはアニメ第二期のあれだったり……(どれだよ
 ちなみに、原作では軽音部の顧問としての彼女が目立ってましたが、こちらでは合唱部の顧問でもあるため、透夜達合唱部とも仲が良い、と言う設定だったり

 んで、次回ですが、本編は主にリアルでは元旦あたりのお話にする予定です ムギ&澪のあれを出すかどーかは、微妙ですが(ぁ

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