「あれっ? このみちゃん?」
「あ、なずなちゃん、乃莉ちゃん……」
 
 冬休みに入って数日…… 年末年始まで一週間を切ったその日、それぞれの部活に向かうなずなと乃莉は、あからさまに暗いオーラを撒き散らしながら、学校に向かうこのみを見つけました

「どーしたのさ? そんな暗い雰囲気で……」
「ちょっと、ね……」

 そんな暗い表情が気にならない筈が無く、なずなと乃莉は、互いに目を合わせた後に、このみに問いかけますが、彼女は視線を明後日の方向に向け、言葉を濁します

「実はですね! このみちゃんはこの前のテストで赤点をとって、補修を受けに行くのです!」
「……唯ちゃん?」

 そんなこのみの代わりに、二人に説明したのは、恐らくなずな達同様、部活に向かうであろう唯でした
 しかし、その唯の背中には、ギターこそあれど、その唯の表情はこのみほどではないにしろ、少々暗いイメージをもたらすには十分な表情でした

「唯ももしかして、補修じゃあないでしょうね?」
「ほっ! 補修じゃないもーん! 補講だもーん!」
「……違いが分かんないんだけど……」

 そんな唯の態度に、あからさまに怪しい、と言わんばかりの乃莉と、それに同意せざるを得なさそうななずなの表情に、唯は憤然と抗議しますが……
 その唯の一言に、二人はますます怪しい、と言わんばかりの表情になってしまいます

「そこん所は、俺と内藤先輩で説明しよう」
「「? 風見先輩?」」

 そんな疑問な表情に、いつの間にかなずな達の背後にいた、透夜が彼女たちに答えたのでした……


  ひだまりメイドラプソディー 第七十話 補習!


「今朝方、平沢の言った通り、このみはテストの点が悪くて補修を受ける訳よ」

 そんなこんなで数時間後…… 部活及び補修を終えたなずなと乃莉は、昼食がてら透夜と律太に説明を受けることになりました

「でも、確か唯もこのみと似たり寄ったりの成績だった気がするんですけど」
「まぁ、その通りらしいな 生徒会や風紀委員も、生徒のテストの点数を把握できる権限を持ってるから、そこん所はある程度把握している」

 そして、透夜の説明に、少々納得がいかなそうな表情で、乃莉が疑問を口にすると……律太はそれに、同意を示します

「まぁ、平沢の場合、この前のクリスマスで結果を出したからな…… 俺と風見とで、一部補修の免除を宇佐美先生にお願いした、という事よ」
「と、いう訳です……」
「でも、結局部活以外で学校に来ることには、変わんないんだよね?」
「ぐっはっ!」
「の、乃莉ちゃん……」

 その直後の律他の説明に、唯はなずなと乃莉に、Vサインを示しますが、直後の乃莉のセリフに、テーブルの上に撃沈します

「そっ、そーいえば、律太さんや風見先輩の所で、補修とかは……?」
「まぁ、ウチの担任は実技優先だしなぁ…… それさえしっかりしてれば、ペーパーが悪くても、ある程度は気にしないんだよ」
「そういえば、風見の担任は紅女史だったな」

 そんな唯の状況に、話題を微妙にずらそうと、なずなは律太と透夜に視線を向け、問いかけると……
 透夜は答えと同時に、律太の言葉を聞きながら、明後日の方向に視線を向けます

「……あれって、向坂先輩?」
「その紅女史の生徒の中で、唯一補修を受ける羽目になった男だ」

 その透夜の視線の先…… 透夜と同じクラスの雄二が、正に魂の抜け殻と言わんばかりの白さで、テーブルの上に撃沈していました

「そういえばユウ君、終業式の時、タマお姉ちゃんにアイアンクローを掛けられてた……」
「よかったな、このみ お前、男だったら環先輩にあいつと同じ目にあってたぞ?」

 その雄二の姿に、このみはクリスマス前日の日に目撃した事を思い出し…… それを思い出して身を震わせるこのみに、透夜は肩を優しく叩きます

「よかったよね、なずな…… 私達には補修が無くて」
「ちなみに補足だが、乃莉よ…… こいつ、国家歴史と言語学、学年平均と同じ点を取ってんだぜ」
「……珍しいね、なずな」

 そんなこのみに、なずなと乃莉は、冬休みが丸々遊べる(と言っても宿題があるものの)自分たちに、安心感を覚えますが律太の補足に、乃莉はちょっとだけ呆れてしまいます

「ま、夏休みの終わりの環先輩じゃあないが、普段をしっかりやっとけばこういう事になりゃせんかったんだ…… 三学期はしっかりやればいいさ」
「そうだよ、二人とも…… いや、私たちにも言えるけどさぁ……」

 そんなこんなで半分撃沈状態の二人に、透夜は優しく語りかけ……なずなも乃莉も、それに頷いて同意を示します

「こらー、お前ら! そろそろ授業だぞ!」

 そんな時、何故か紅薔薇が竹刀を持って、このみと唯、そして雄二を迎えに来ました

「……紅女史…… 何ともオヤクソクなものを持ってますね……」
「うむ、これが無ければ、向坂はやる気を出してくれないのでな……」
「……乃莉ちゃん、もしかしてこれって、補修や補講じゃなくて『脅迫』っていうんじゃあ……」
「言うな……と言うより、言わないでやってくれ……」

 その紅薔薇が持っていた物に、律太は少々引け越しになりながら口にしたセリフに対する答えに……
 なずなはその場にいた人間の気持ちを代弁するセリフを言い、普段その紅薔薇の授業を受けてる透夜は、あさっての方向を向きながら、なずなを窘めるのでした……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、今回は成績の悪い人たちにとっての、ある意味お約束です
 まぁ、補講の方は、意味的には微妙に違ってますが、こちらでは補修のワンランクダウン的な意味で受け止めてくれればおっけーです
 次回は…… 今の所、年末年始を予定しています 

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