クリスマスから一日が経ちました
 その日から始まった冬休みを、皆一様に謳歌してるかと言えば……そうではありませんでした

「はーっくちゅ!」
「くちゅん……っ!」

 そう……彩井学園の保健室に、そんな可愛らしい、と評すべきくしゃみが響き渡りました

「あー、こりゃあ疑いようのない風邪ね」

 そのくしゃみの主…… なずなと唯を目の前に、冬休み開始から二日しか経っていないというのに、保健室に呼び出された保険医・桑原は、呆れたような、感心したような声を上げるしかありません

「まぁ、皆この半月、無我夢中で頑張ったしな…… 今日はゆっくり休んで、しっかり回復させればいいさ」
「うんっ」

 その桑原の言葉に答えるように、律太は軽音部や合唱部、そして料理研究部……主になずな……を眺めながら、クリスマスまでの皆の頑張りを称えます

「んじゃあ、そーゆー事だから、神北に真鍋…… 後は頼む」
「こまりん、お願いするのだ〜っ!」

 そして、律太は保健室に沢山人がいても病人に邪魔になるだけ…… そう言いたげに、小毬と和に後を頼むのでした


  ひだまりメイドラプソディー 第六十九話 風邪!


 こんなほのぼの雰囲気で終われば、どんなによかったか……
 少なくとも、透夜と律太の二人は、頭に手を当て、ついため息をついてしまいます

「よんひゃくきゅうじゅうなな……よんひゃくきゅうじゅうはち……よんひゃくきゅうじゅうきゅう……ごひゃく……」
「で、この真人…… どーしよっか…… 謙吾と勇二も真似したいオーラを出さない!」

 その二人の視線の先には……
 何故か保健室で腕立て伏せをする真人と、それを真似したいものの、TPOなるものを所持しているが故に、何もできていない謙吾と勇二の二人がありました

「筋肉の躍動を感じるぜ……」
「っさいわ、ボケェ!」

 そして、ひと段落した直後の一言に、鈴の蹴りが真人の脳天に届いてしまいます

「さっきからチラチラチラチラ…… マジにウザい!」
「なんだとぅ! 俺の筋肉にケチつけようってのかっ!」
「いや、そーは言ってない つぅか理樹はどこ行ったよ、理樹は…… 棗先輩と外に出てんのか?」

 もう、その額から本当に血管が浮かび上がらんが如きの表情で、鈴は真人に詰め寄ります
 透夜も透夜で、心底呆れたような表情で、理樹……今や真人を止められる、鈴以外の人材……を探し、視線を巡らせます

「俺への悪口は良いが…… 俺の筋肉に対する悪口はゆるさねぇ…… 見ろ!この大胸筋!」
「……風見、どーでもいいから、直江探して呼んで来い」
「……ですねぇ…… このままじゃ、真人が筋肉バカになるだけだし、謙吾と勇二にバカが映る」

 そして、真人の次の一言に律太は、透夜にその理樹を探させます

「いや、まだだ…… まだ、たりねぇ……」
「……真人?」

 しかし、透夜が外に出ようと、一歩踏み出したその瞬間でした……

「その証拠に、こいつらが熱出してるってのに、何もできやしねぇ…… くそっ、なさけねぇ……」
「……気持ちは、わかった ……つぅか、うん……わかった」

 なずなと唯を見ながら、真面目な表情をしながら語った真人に、透夜と律太はその言葉に同意しつつも、もう心の底から頭が痛い、と言う表情になってしまいます

「とりあえず、気持ちは分かったから、その自分に対する怒りは、紅女史に手伝ってもらってなんとかすれ」
「そうそう…… 当の病人の前でそういうのは、やめとけよ」

 そして、次の透夜と律他の言葉に、感銘を受けたかのごとき表情になった後…… 三人は、我先にと保健室を出ていくのでした……

「まったく…… しょうのない奴らだ」
「あはは……」

 そして、そんな三人を眺めながら、律太はボヤき、なずなも苦笑を浮かべてしまいます

「すまんな、二人とも…… さっき真人自身が言った通り、あいつらもあいつらで目的があってのことだ ……許してやってくれ」
「いえっ、そんな……!」

 そして、そのままなずなと唯に頭を下げる透夜でしたが……
 なずなは「気にしないで」と言わんばかりに、手を左右に振るのでした

 一方その頃……

「…………直枝君、棗先輩、何してるんですか?」

 律太と桑原に頼まれ、飲み物を買いに行っていたゆのは、その帰りに大量の荷物を抱える、理樹と恭介を発見します

「いや、真人に頼まれてね…… うん」
「? 何か、買い物?」
「ああ……」

 そのゆのの問いに、理樹と恭介は言葉を濁し……
 ゆのは、そんな視線を外した二人の荷物が目に入ります

(井ノ原君…… それじゃあ、ほんとにみんなから筋肉バカって呼ばれるのも、当然だよ……)

 そう…… 彼女の目に映ったのは……
 真人が毎度毎度自主トレで使う、ダンベル等のトレーニング機材だったのでした……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で、遅くなりましたが、ようやく更新と相成りました 申し訳ない

 んで、今回は頑張りすぎた故に、スタミナ切れ的な病気、と言う展開です ……ん?わかってる? こりゃまた失礼
 ちなみに、今回の真人のセリフは、リトバスのスピンオフ漫画・ワンダービットワンダリングをモチーフにさせてもらってます
 もう、空気読め、としか言いようのない真人ですが…… それもこれも、ある意味友情故、なんですよねぇ、彼の場合(微笑

 ともかく、次回は…… まぁ、冬休みらしいのを一回は入れたいですが……さて、どーなることやら

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