「ゆーちゃん? クリスマスに用意する料理は、特に火の扱いが難しいの 炎の魔法と氷の魔法、両方を上手く使うことも一つの手段なんだよ?」
「うぅ……難しいよぉ……」
「澪、ムギ、サビの入り方はもうちょっと派手に出来ないかな?」
「でも、曲調と比較すると、難しい部分も有るよ?」
「風見、お前が使うグランドピアノ、準備完了した」
「すみません、内藤先輩……お手を煩わせてしまって……」

 それから、時間は瞬く間に過ぎて、皆一様に一日の時間が倍に倍になれば、と思ってしまうぐらいの目まぐるしく進んで行きます
 唯が妹の為に料理を作る事云々から始まった、小さな、だけど微笑ましいイベントの準備は、慌ただしくも、進んで行きます

 元々唯が料理の更なる鍛錬を料理研究部に依頼したことを発端としたこの事件は……
 透夜の一言によって、(少なくとも)唯には更なる艱難辛苦が舞い踊っていた物の、それでも当の本人も、大事な妹の為、といつもよりも真剣な表情で物ごとに取り組んでいました

「ねぇ、ゆーちゃん、なーちゃんやリムちゃんだけじゃなくて、私達も手伝った方が……」
「えっと…… ここまでやって貰っただけでも、嬉しいんだけど、私……」

 後、二週間もしないうちに、自身の妹が来る…… そんな時、小毬が唯に助力を申し出ますが、当の唯は普段の彼女からは信じられない程の真剣な表情で、それを断ります

「憂の為に作る料理は、出来れば私一人の力で作りたいんです だけど、ちょっとだけ自信が無いから……」
「そっか…… じゃあ、なーちゃん、リムちゃん、ふーちゃん、何時もより真剣にお手伝いをしなきゃ駄目だよ?」
「はい!」

 そして、その唯の決意に、小毬はやはり何時もの如きのんびり笑顔で、なずな達の頭を撫でるのでした――


  ひだまりメイドラプソディー 第六十七話 クリスマス!(中編)


 そんなこんなで、さらに数日……

「琴吹から歌詞が出来たって聞いたけど……?」
「はっ はい……」

 紬からクリスマス用の歌詞が出来た、と言う話を聞き、透夜達合唱部と、なずな達料理研究部の一年トリオが軽音部の部室に集まりました

「んじゃ、早速見せて貰おうかな?」
「え!? いえ、その、すぐに見せる程の物でも、ないんですが……」
「……歌詞が出来たから、呼んだのとちゃうんかい」
「と、透夜様、落ち着いて……」
「でも澪ちゃぁん……先輩の言う通りだよぅ……」

 そして、軽音部の4人と相対した場所の中央にいた透夜が代表して、澪が持ってる歌詞を出させようと、手を出しますが……
 その澪は、持っている歌詞の書かれた紙を胸に抱いて、それを拒否します

「この前の文化祭で聞いた、「ふわふわ時間」ってのと比較すると、ちょっと、な」

 勿論、そんな澪の態度に業を煮やして、それを強奪してから……
 その真剣な表情を維持しつつ、透夜は澪の…… 澪たちの作った歌詞に、はっきりと悪い印象を口にします

「ま、それでもふわふわ時間と比較する、と言う意味じゃあ、そー言う評価しか出来んが、それでもクリスマスを盛り上げるには、十二分に問題無いだろう」

 そんな透夜の態度に、澪たちは俯きますが…… 直後の言葉に、皆一様に顔を綻ばせます

「つーことだ ネリネにリコリス、それから平沢…… コレをクリスマスまでしっかりと頭に叩き込んでおけ」
「えぇ!? 私も、ですか!?」
「……何か問題でもあるのか?」

 しかし、さらなる透夜の一言に、唯は驚きますが、そんな唯のリアクションに、透夜も逆に驚きます

「そもそもお前さんは、妹の為に料理を作りたいんだろう?」
「? そうですけど……?」
「だったら、ついでに妹の為に一曲歌うも歌わないもあんまり変わんないと思うがな」
「……ッ!」

 そして、透夜は今回の唯の行動の原理となる気持ちを確認します
 直後の透夜の(ある意味では)挑発的なセリフに、唯は衝撃的な表情を浮かべます

「わかりました…… 私、やります!」
「よーし…… よく言った!」
((なんというか…… 唯が騙されてるよーな気もするけど……))

 そして、直後の唯のセリフに、透夜は満足げな表情を浮かべます
 そんな二人の態度に、律と澪は、言葉にこそ出さないものの、それでもつい疑問を持ってしまいます
 しかし、それでも透夜の言ってることにも間違いは無いので、言葉に出しませんが……

「ともかく、残り半月を切ってるんだ…… 平沢はきつい状況になるとは思うが……」
「はい! 頑張ります!」

 そして唯は、透夜の激励に、鼻息荒くしつつ、ギターを構え、気合を入れなおします

「なずな、それからプリムラ…… お前ら、こいつの手伝いをしてやってくれ」
「は、はいっ!」
「そ、そうだね……」

 そんな唯の態度に、多少の不安を持ってしまった透夜は…… 後ろの二人に助力を頼み……
 なずなはその言葉を額面通りに受け止め、プリムラは透夜の肩を優しくたたくのでした……

 次回に続く

 あとがき
 という訳で(どういう訳だ)学園祭に続き、クリスマス編も三部作となってしまいました
 というより、憂が影も形も出てきてねー! 正直、大丈夫なのか?とは思いますが…… ま、何とかしてみますよ(ぉぃ
 あ、わかってると思いますが、なずなと律太のラブリマスはありませんからね? 一応言っておきますが
 あくまでも、一年目のクリスマスのメインは、軽音部のお手伝いですよ

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