部活の部長問題も終わり、二週間…… 後数日で12月になる、その日でした
 なずなも料理研究部の副部長と言う立場に、少しは慣れ始め、今まで以上に真剣に、だけど新たな部長の女の子の様なほのぼのとした雰囲気で料理に取り組んでいました

 そして、今現在、なずな達…… 否、彩井学園全校生徒を悩ます問題…… そう、学期テストを目の前にした、ある休日の朝でした
 なずなの意識が今まさに起きようとする物の、あまりの寒さにその身を震えさせてしまいます

「なーずーなーちゃーん! おーきーてー!」

 そんななずなの行動を邪魔するかの様に、彼女が何時も聞き慣れてる声が、普段の穏やかなそれが、凄く大はしゃぎしてる様な声で、なずなを起こそうとします

「ゆのせんぱーい! なずな起きましたかー!?」
「ゆのっち、急いで急いで!」
「ごめーん、もーちょっと待ってー!」

 勿論、なずなはそんな声の正体……ゆのに対して文句を言うつもりはさらさら無く、それに従おうと思ったその直後、さらに二つの(やはり大はしゃぎした様な印象の)声が乱入してきます

「んんー……」
「あ、起きたー! お休みなのにごめんねー」

 そして、そんな周りの状況に、なずなも起きない訳にはいかず、目を冷めると、申し訳なさと嬉しさ、二つの相反すると言っても過言では無いゆのの表情が目に入ってきます

「なにか、ありましたかー?」
「うん、あった所の話じゃないんだよー! 急いで顔洗って、外に行こう!」

 ゆのだけでなく、宮子、そして相棒とも言うべき乃莉の表情から、とても良い物が見れる、と言う確信を持ったなずなは、未だ半分眠ってる脳を叱咤し、外に向かいますが……

「わぁっ……!」

 その瞬間、その脳は完璧に覚醒し、その目を大きく見開いて、そしてそれと同時にその身をさらに縮めてしまいます

「ねっ? 凄いでしょ?」
「はいっ!」

 そう…… ゆの達が大はしゃぎしていた理由…… それは、なずな達の目の前で今舞い踊る白い物体……
 それは、私達の世界でも、寒さの象徴たる一つ…… 有り体に言えば、それは雪だったのです……!


  ひだまりメイドラプソディー 第六十四話 初雪!


「ま、それでも11月で振るなんざ、結構珍しいわな」
「あ、律太さん!」

 なずなが面前に広がる銀世界に、目を広げていると、先に外に出ていたのか、律太が声を掛けてきました

「流石にこの量じゃ、雪で遊ぶ、って事は無理だろうな……」
「残念……」

 そして、自分たちの足元で解けて行く雪を眺め、なずな達が心のどこかで期待していた事を我慢させるように、優しく語ります

「でもまぁ、あの連中からすれば、そんな事は些細なこったろうけどな」
「あの連中?」

 そのなずな達の表情の意味を理解しつつ、律太が別の方向を向くと……
 その先には、初雪が楽しいのか、小さい子供の様に大はしゃぎをする、唯と律と紬、ケイトとマリ、そして友兼と野田の存在が有りました
 そして、そんな彼女たちの近くには、子供すぎる行動を止めようとする奈三子や澪の姿と、それを何故かスケッチする空の姿も確認出来ます

「まぁ、気持ちはわからん訳じゃあ無いが、アレを止める野崎の妹達も大変だな」
「あはは……」
「それに梶原だっけ? アレをわざわざスケッチするなんざ、結構奇特な性格の持ち主じゃねぇか」

 そんな彼女たちの姿を見て、律太は楽しそうに、だけど静かに微笑み、そんな律太のコメントに、なずなは苦笑してしまいます

「おーい! 遊ぶのも良いが、マズは朝飯食ってからにしよーぜ!」

 ともかく、このまま唯達を見てるだけ、と言うのも問題だ、と言わんばかりに、律太は声を上げ……
 声を掛けられた方も、自分たちの空腹に気付いたのか、遊ぶのを止めて、寮の方に走ってきます

「ねぇ、なずな…… こう言うのって、なんか歌に有った気がするんだけど……気のせいかな?」
「……そうだっけ?」

 そんな唯達の様子に、乃莉はある疑問が頭によぎりますが、そんな彼女に、なずなは只首を傾げるだけです

「……もしかして、犬は庭で駆け周り、とかそー言うのじゃないのか?」
「あぁ! それ、それです!」

 そして、その答えと言う名のイメージを律太が言うと、乃莉は納得したように手を叩きます
 そんな会話をしながら唯達の後を追って寮の食堂に入ると……

「お前ら……こんなクソ寒い日曜の朝に、良く外に出れるモンだな……」
「つまり、猫の方はここで杏子さん特性のシチューを食ってる上野達か……」
「成程、真理ですね」
「律太さんも乃莉ちゃんも酷いよ……」

 その中で最初に目に映った、上野や柴田、雪花が杏子特性の食事を取っており……
 そんな彼らに対し、律太と乃莉は容赦のないコメントを下したのでした

「あぁ、乃莉君になずな君じゃないか」
「「あ、栗原先輩」」

 そんな微妙な空気の中、料理研究部の新部長新任と同時期に、美術部の新部長として就任した、栗原が現れました

「ああ、これかい? 折角雪が降って来たんだし、とりあえず食べてみようと思ってね…… 杏子さんからシロップを貰ったんだよ」

 そして、その栗原の手には、何らかの液体の様な物が入ったチューブが有り……それが気になる様ななずなと乃莉の視線に、あっけらかんと答えるのでした
 そんな栗原の答えに、どう答えようか、と思案するのでしたが、楽しみにしてる雰囲気で外に出ようとした所で、二人は彼女を止めることを決めたのでした……

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、とうとう冬に片足入る時期と相成りました ここまで結構長かったですね、真面目に
 ともかく、次回は……多分、想像してる時期に入る、かと思います
 んで、栗原が美術部の新部長として就任した、と言う話ですが、こちらは外伝の方で軽く触れようと思います 今すぐは無理ですが(ぁ

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