「さて、と…… 説明して貰いましょうか?」

 適当な場所にプリムラを置き、宮廷魔術師による治療を眺めつつ、透夜は静かに魔王に問いかけました

「いや、説明と言われてもね……」
「勿論、今のプリムラを使って、アンタらは何を成し遂げたいのか、ですよ」

 透夜の態度に、どう答えていいのか、と言いたげな魔王に、透夜達は淡々とした表情を変える事はありません

「高等二年最強、などと呼ばれてますが、俺なんざ魔力行使技術と総魔力がちょっと強いだけの人間ですよ」
「いえ、透夜様…… それは謙遜を通り越して……」
「お姫さん」

 透夜の言葉に、ネリネは少々呆れを覚えてしまいますが、それは律太に制されてしまいます

「そんな人間に負ける様な子が、世の為人の為の力として、何かが出来る、とは思えませんがね」

 そんなネリネと律太のやりとりを無視し、続けた透夜の言葉に、魔王は何かしらの言葉を持つことが出来ませんでした

「別になずな達の記憶を元に戻せ、とは言いません ……只、世の為人の為、プリムラにさせたい事があるなら、その為の努力を惜しませるな、と言いたいんです」

 そんな透夜の一言に、律太はそれを言いたいが為にここまでやったのか、と少々呆れてしまいますが、それは少々些細なことと思いなおします

「ま、どーするかはお二人が決めてください 俺達は一応、彩井学園の生徒ですから、それを創立した聖地の言うことに従わなきゃなりません ……ま、そー言うことですよ」

 そして、透夜の言葉を引き継ぐ様に、律太が魔王と神王の二人に静かに語りかけます
 そんな二人の表情に、魔王と神王は、自分たちが何をすべきなのか……それを理解させられるのでした……


  ひだまりメイドラプソディー 第六十二話 友情!


 そして次の日――
 何だかんだで、彩井学園退学と言うことが無くなってしまったプリムラは、一人校舎内に入って行きました

(ホント、私って何やってんだろ……)

 そして、家を出てから、幾度となく自身に問いかけた事を、今一度やってしまいます

(あ……)

 そんな時、プリムラの眼に映ったのは、楽しそうにお喋りをしてる生徒達……
 そして、一週間前に、自身の手でその記憶を消した、何よりも大切な友達――

(ど、どうしよう……)

 自分の記憶が無い以上、このまま通りすぎても、問題無い……それは分かっていても、プリムラはどうしていいのか、迷ってしまいます
 そして、それが分からないまま、足早に通り過ぎようとしますが―――

「廊下は走ってはいけない ……佳奈多殿や貴子殿に叱られるぞ」
(え……ッ)

 そして、その友達だった少女達を通り過ぎようとした、その瞬間でした――
 その少女達の一人……雅の一言によって、プリムラは一瞬、その足を止めてしまいます

「それに、私達を無視するとは、少々失礼だな?」
「え……ッ?」

 それと同時に、その雅の口から、意外な言葉が出てきました

「まさか……」
「朝、友達に会ったら、おはようと言うのが、礼儀と言う物だと思うがな ……プリムラ殿?」
「―――ッ!」

 その言葉に、思わずその方向に向こうとするプリムラでしたが……

――暗闇を照らしてただ 地上を見つめてる月

「リムにゃ―――――ッ!」
「プリムラー!」

 その瞬間、プリムラは強烈な打撃を受けた様な、衝撃を覚えます
 その正体が、自分の友達の中で、一二を争う抱きつき魔である唯とマリの二人であることに気付くのに、それなりの時間を要してしまいます

――私もそんなこの眼差しできっと あなたの事を見守りたいの 何時でも

「……どうして……?」
「大事な友達を、忘れると思う?」

 そして、抱きついたまま、頬ずりを続ける二人を無視して、どう言うことか分からない、と言う表情をするプリムラに、普段のイメージとは違った、はっきりとした言葉が聞こえてきます

――あなたと出逢い 初めて知った 切なさが頬濡らしてゆくけど

「なずなちゃん……」
「私、絶対思い出すから」

 その方向を見てみると、プリムラが想像したように、その言葉同様に、真剣な表情をしていたなずなが、乃莉と一緒に立っていました

――前だけを見て 歩いていたい どんな時でも心に輝き 抱いて

「私、リムちゃんがどんな事をして、絶対思い出すから」
「……なずなちゃん……」

 なずなの言葉に、乃莉が、唯やマリが、そして雅が頷いて、彼女に同意します 

――広い宇宙で見つけた奇跡 永遠がもし途切れたとしても

「だから…… この前みたいなこと、絶対にしないで」

 普段とは違う、静かに……そして淡々としたなずなの声に、プリムラは只気圧され、頷くことしか出来ません

――必ず逢える 約束しましょう 月が何回満ちては欠けても

「リムちゃんは、私達の大切な友達…… だから、どんなことが有っても、ずっと友達、だよ?」
「……うんッ!」

 そんなプリムラの態度を見たなずなは、いつもの笑顔に戻り、プリムラに自分の気持ちをはっきりと伝えるのでした……

――忘れない……



「風見、こーなること、全部分かってたろ?」
「わからない方が、どーかしてますよ」

 そんな様子を、いつの間にか眺めていた透夜や稟、律太達……
 その表情は、透夜以外は皆一様に、安堵の物となっていました

「あの子たちにとって、プリムラは何よりも大事な友達ですから」
「……そっか うん、そうだな……」

 そして、律太の問いに、事もなげに答える透夜に、律太達はこの瞬間、一つだけ心に決めました
 そう……今回の友情が起こした奇跡を、友情故に必然だ、とあっさり言ってのける透夜を、敵に回してはいけない、と……

 次回に続く

 あとがき
 挿入歌 アニメ「夜明け前より瑠璃色な Crescent love」エンディングテーマ 「Crescent love 〜月のなみだ〜」

 と、言う訳で、プリムラ編、これにて完結です いや、真面目に長かった ……って言っても、最初の方だけでしたが、ね
 つーことで、次回からは日常編に戻る訳ですが、次は学園祭から色々有って先延ばしにしていた問題で行こうと思ってます まぁ、シリアスではありませんが、真面目な展開かも?
 そして、久方ぶりに挿入歌的な扱いのですが、タイトルからわかる通り、本来は恋の歌となってます(ぁ
 他にも二つ候補が有ったのですが、少々明るかったり、微妙にイメージに合わなかったり…… 色々と難しいですね
 ま、次の挿入歌(予定)は、完璧に時事ネタになるのは確定なんですが……(ぉぃ
 ちなみに言っておくと、今回の挿入歌の歌い手の人、アニメ「あっちこっち」の真宵の中の……ゲフンゲフン

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