「とうとうこの日がやって来た訳だが……」
「は、はい……」

 律太達が、魔王や神王の法律違反によるトラブルから一週間……
 その日決まった、律太や透夜達と、プリムラの勝負の日となりました……

「んで、最初は言い出しっぺの風見、となる訳だが……」

 軽く屈伸運動を行いつつ、律太は視線をある方向に向かいます

「気になるのが、立ち会い人を務める宮廷魔術師の皆様方、だな……」

 その方向……今回の律太達とプリムラの勝負における、立会人を引き受けた、聖地の宮廷魔術師に向かいます

「確か、透夜様のお父様が、その長を務めてるんですよね?」
「ああ、あっちで色々指示してる、赤毛で細身の兄ちゃんが、風見の親父の、風見レニス様だ」
「それで、気になること、とは?」
「ああ、あれさ…… ロッドみたいなのを、俺たちの周りに埋めてるだろ?」

 そして、その中でリーダーと思しき男……透夜の父親の風見レニスを見ながら、律太はとある疑念を持ちます

「もしかして、結界魔法、ですか?」
「……だと、思うが…… 何が目的だ……?」

 透夜とプリムラを中心に、正八角形の形となるようにロッドを置く宮廷魔術師たちに、律太達はその彼らが使おうとする魔法の意味そのものは理解しますが……
 律太達は、その行動の意味までは理解する事が出来ないでいました……

「そろそろ始めようと思いますが、宜しいでしょうか?」
「了解!」
「……わかりました……」

 そしてそんな中……宮廷魔術師の一人の言葉に、透夜はゆったりとした動作で構え、プリムラは持っていたロッドを前に出すのでした…… 


  ひだまりメイドラプソディー 第六十話 勝負!


  開始宣言と共に、透夜が一気にプリムラに接近し、筋力を強める魔法……インスパイアの詠唱成功と共に、プリムラの顎を強打したのです!

「早いッ!」
「決まった、のか?」

 そして、そのまま地面にたたき落とされるプリムラですが……

「……まぁ、そう簡単には決まらない、が…… プリムラが丈夫と言うよりも、風見が手を抜いたか、それとも単に力不足なのか……どっちかと見て、間違いないわな」
「せ、先輩ッ! アレっ! アレっ!」

 ふらふらになりながらも、なんとか立ちあがったプリムラに、律太は顎に手を当てつつ考えますが、その思考はシアの叫び声によって、中断させられます

「エレクトリックに…… ホーリー、か? あいつが使うにしては、何か力が強すぎる様な印象はあるが……」

 そう、透夜の体の周辺に、薄いながらも激しい光と、力強い雷が迸っていました
 しかし、律太には、その二つの力の強さに、一つだけ違和感を覚えます
 そう…… 透夜がその二つの魔法を使った割には、その威力が高すぎたのです……

「成程、そう言うことか……」

 そして、その意味を理解した律太は、少々苦々しい表情になってしまいます

「どうしたんですか? ……まさかッ!」
「多分、その通りだな あの宮廷魔術師の方々が、風見の手助けをしていやがる」

 そんな律太に、マツリは問いかけますが……その表情から、その意味を理解していまいます

「い、一応あの人達は中立なんですよね!?」
「そりゃあ、問題なんだろうが…… もしかしたら今回の策、連中の仕込みかもしれねぇな……」

 そんな律太の言葉に、周りは驚きますが……そんな状況に、律太はそんな中、己の私見を語ります

「それはともかく、透夜君はどうしてあんなことを?」
「要は、自分に貰った補助魔法と、自分の魔力を融合させる訳よ」
「と、言うことは、つまり……」
「ご明察 ……今使える魔法よりも、数段上のやつを使えるようになる、と言う訳さ 勿論、それ相応の魔力行使センスが要求される訳なんだが……」

 その律太の言葉に納得したかどうかはともかく、シアは透夜の戦術行動に疑問を持ちましたが、律太の説明に納得した様な表情になります

「マナよ、我が求めに応じよ…… 太陽の光の力を使いて、最高位の雷を我に与えよッ! アークサンダーッ!」

 そして詠唱と共に、透夜の手から、激しい雷がプリムラめがけて走って行きます
 その自身めがけて来る雷に、プリムラは防御をしようとしますが……

「ったく……宮廷魔術師の援護があったとは言え、非常識な奴だぜ、全く……」
「そ、そんな事より、リムちゃんは……?」

 轟音と共に、最高位の雷の意味を持つその魔法の直撃を受けたプリムラでしたが、そんな二人の様子に、律太は少々呆れた様な顔になってしまいます

「しかし、風見自身がそう仕向けたとはいえ……倒れてた方が、あの子にとっては幸せだったかもしれんかったなぁ……」
「え…… 先輩?」

 律太の言葉と共に、煙が徐々に晴れて行き……その中から、ボロボロになりながらも、なんとか立っているプリムラの姿が有りました

「……プリムラが立っている以上、勝負は続行…… だけど、風見の残り魔力は、恐らく半分前後は残ってる…… つまり……」
「……さっきのアークサンダーレベルの魔法を、リムちゃんはもう一回……」
「……ご明察」

 そんなプリムラを一直線に直視し、律太は戦況を説明します その律太の言葉を受け継ぐ様な楓の言葉に、律太は楽観的な言葉で誤魔化そうとせず、その楓の言葉に肯定します
 その律太達の状況を横目に、透夜の体が…… 否、彼の周辺が徐々に黒く染まって行きます

「……あれはもしかして、属性付与のダークセイバー、か……?」
「つまり、闇属性中心の高位攻撃魔法……」
「マナよ、我が求めに応じよ……」

 その透夜の姿に、律太達はその魔法の方向性を理解します
 そして、透夜は一言一言紡ぐ様に、魔法の詠唱を開始します

(もし、俺の予想が正しかったら……)
「深き闇の力を得し炎となりて、かの者を煉獄の世界へと導け!」

 そんな透夜の姿に、律太はとある一つの仮説が頭によぎります

(風見の狙いは、単にプリムラを殺すことではなく、プリムラの非常識なまでに高い魔力を――)
「フィアフルフレア!」

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、透夜対プリムラ編です 多分わかってるとは思いますが、次回でその勝負は付くんですけどね
 そして、今回聖霊機ライブレードから、設定だけの存在だった、レニス・エンロードが初登場です
 原作では透夜のご先祖様(恐らくは祖父か曾祖父)と言う設定だったので、こちらでは透夜の父親としての設定で登場と相成ります
 原作ライブレードでは大昔の人々が沢山出てる為、そこらヘンの設定をイジんしなきゃ駄目だから、大変だわー(ぁ

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