「りっちゃん…… 澪ちゃん、大丈夫?」
「いや、まだだ……」

 文化祭から四日……壮絶な失態(?)を見せた澪は、あまりの恥ずかしさから真っ白に燃え尽きて、次の日は授業に出る事が出来ませんでした
 さらにその次の日からは、律が無理矢理学校に連れ出し、教室に着く直前に和か奈三子の手に引き渡す事に決めました
 そして、この日……ようやく自分の足で学校に行こうとする事は出来た物の、それでも完全復活には程遠い状態だったのです

「おはよう、なずなちゃん……澪ちゃんは大丈……夫じゃないみたいだね」
「あ、おはよう、リムちゃん…… うん、まだみたい……」

 そんな時に、なずな同様心配だったのか、プリムラも現れて、澪の様子を見に来て、その澪の様子に少しだけ溜息を吐きたくなってしまいます

「アレ……?」
「……どした?」
「あそこ、木の上……!」

 ふと、なずなが見上げると……そこには一匹の猫がいました

「おりられないのか……よぉし……」
「りっちゃん?」

 木の上で只鳴くだけの猫に、律は腕まくりをして、木に登って行きます

「りっちゃん、無理しないでねー!」
「おうよ〜!」

 なずなの声に、元気よく答えつつ、猫に向かって進んで行きます

「よし、着いた……!」

 そして、なんとか猫をその手に抱き上げたその瞬間でした…… 足場にしていた木が綺麗に折れ、律は猫と一緒に落ちて行ってしまいます

「律ッ!」
「いたた……」
「りっちゃん、大丈夫!?」
「おいおい、騒がしいが、一体どーしたんだ?」

 そしてそのまま地面に叩きつけられた律に駆け寄るなずな達でしたが、その騒がしさに、半分野次馬根性な気分で、律太も現れたのでした


  ひだまりメイドラプソディー 第五十六話 成長!


「ったー……まさか落ちるとは思わなかったぜ……」
「りっちゃん、ホントに大丈夫?」

 さて、実際落ちた律は、なずな達の気づかいに笑顔で応えます

「ま、こんな状況だ……痛みが無いのはしょうがないわな……おい、リリか十条あたり呼んで来いや」
「……え?」

 しかし、そんな律の態度に、律太は意外な言葉を発します
 なずな達はその律太の言葉に首を傾げますが、律太はその態度に、律の腕を指さします

「ってぇ……なんじゃあこりゃあ!」
「りっちゃんの腕が! りっちゃんの腕が!」
「変な方向を向いてるっ!」
「見たくない見たくない見たくない見たくない…………」
「おーい……落ち着けー……」

 その律の腕を凝視した律たちは……全力で驚愕の表情をし、律は腕を動かそうとして失敗し、なずなとプリムラは動揺し、澪は耳を手でふさいで、明後日の方向に向いてしまいます
 そんな律たちの態度に、律太は思わず無駄だと分かっても、呆れた様な声をあげてしまいます

「……ったく……ちょっと待ってな……誰か読んでくるわ」
「ちょ、ちょっと待って!」

 そして、踵を返して、誰かを読んでこようとしますが、プリムラに呼び止められます

「大地に満ちる活力よ……風の力と混ざり、癒しの力となれ!」

 その意外な程の力強さに、律太も思わず足を止め、プリムラの方向を向きます
 そのプリムラは、律の目の前に座り、魔法の詠唱を開始します

「ッ……風が……!」
「凄い力……なのに怖くない……優しい感じがする……」

 プリムラの詠唱に、周りに風が吹き、なずなと澪はその強さに驚きます

「わ、わ……ッ!」
「ハーベスト!!」

 それはプリムラを目の前にした律も同様で、その強さに思わず後ずさりしかねない程の驚きの表情になってしまいます
 そして、その風はプリムラの意思が宿ったかの如く、律の腕に集まって行き、折れた部分を優しく包み込みます

「……大丈夫?」
「……え? あ……」

 そして、プリムラの笑顔に、律は自分の腕を動かしてみます それは、律の骨が元通りになった事を、雄弁に物語っていました

「リムちゃん、凄い! 何時の間に使えるようになったの!?」
「わ、分からないよ〜! 使ってみたら出来たんだよ〜!」

 その律の態度に、なずなは思わずプリムラの腕を取って、親友の新魔法習得を自分の事の様に喜びます

「なずな、お前も負けてられないな?」
「う……私だって頑張るもんッ!」

 そんななずなの気を引き締めるような律太に、なずなは頬を膨らませて抗議します
 そのなずなの態度に、律達も明るく笑い声をあげるのでした

「あ、澪……そーいやもう大丈夫なのか?」
「え……あ……なんか、プリムラを見てたら、なんか大丈夫になった」
「リムちゃん、魔法で澪ちゃんも助けたんだ〜 すごーい!」

 そんな中、いつの間にか澪も笑っており、その立役者(?)であるプリムラは、なずな達に褒められ、只顔を真っ赤にするだけでした

 しかし……なずな達は気付いていませんでした…… このプリムラの行動で、一つの大きな波乱が起きる事を……

 あとがき
 ……うーむ……前回展開が重くなる、とありましたが、まだまだ先でしたね(ぁ 次こそは……次からは、展開が重くなります 今度は嘘じゃ無いですよ?(ぁ
 んで、今回Shuffleファンなら気付いたと思いますが、今回から暫くは原作プリムラルートの後半部分にあたる部分になります プリムラの設定を上手く使いたかったので……
 あ、ちなみに今回のタイトル、なずなの成長ではなく、プリムラの成長です なずなの成長はもうちょっと後で〜

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