「よう、ちょいと邪魔するぜ」
「あ、律太さん!」

 唯達を見送ってから数分……どこからかこの状況を聞いたのか、律太が現れました

「どうしたの?」
「ああ、小牧から平沢と秋山がヤバい、って話を聞いてな」

 律太の言葉に、なずなと和はステージに向かう道に視線を向けます
 その先には、準備を完璧に終わらせた唯達の存在がありました
 その唯達の中心には、緊張が完璧にぶり返している澪の存在がありました

「……大丈夫なのか?」
「……大丈夫じゃないかも……」
「……ここまで来ると、処置なし、だねぇ……」

 そんな澪の状態に、律太は額に汗を垂らしてどうコメントをして良いのか分からない、と言う表情になり、なずなとプリムラもかなり微妙な表情になっています

「だから、このままカーテンを上げて良いものか……」

 そんな状況に、和も困った様な表情で言いますが、軽音部の後にもまだまだ演目があるのも事実な為、カーテンを上げるしか方法が無いのは、彼女にも分かっているのですが……

「よし、ここはあいつらを信じるしか無い ……行け!」
「は、はいっ!」

 そんな和の表情の意味を理解した律太は、進行を指示し、和もそれに従います

「い、行けって、律太さん……」
「なんだ、なずな……あいつらを信じてないのか?」
「そ、そうじゃないけどぉ……」

 そんな律太の態度に、なずなはそれが正しい選択なのか、と躊躇してしまいます

「少なくとも俺はあいつらを信じる ……お前も俺が信じるあいつらを信じろ」
「うー……」

 律太の言葉に、なずなもその通りと思わずにはいられないのでした……


  ひだまりメイドラプソディー 第五十五話 学園祭!(後編)


「うう〜……」

 目の前で開かれるカーテンを前に、澪は今更ながらに、また震えがやってきます

「澪ちゃん! 大丈夫だよ!」
「唯……」

 目の前の観客たちの前で、澪は自分が上手く歌える訳が無い……そう思ってしまった瞬間、唯から声がかかります

「そーだよ、澪!」
「律……」
「澪ちゃん、頑張って!」
「ムギ……」

 唯だけでなく、律……そして紬の言葉に、澪の震えは僅かながらではある物の、収まって行きました

「……だぁら言ったろ?」
「……う、うん……」

 そんな澪たちの状況に、なずな達は自分達がわざわざここまで出てきた意味を、ついつい問いたくなってしまいました

 ――君を見てると、いつもハートDOKI☆DOKI 揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわ

「さて、歌う奴らが見えないし、立つしか無いのが難点だが、ここはある意味最も近くで見える特等席……お前らも後は存分に楽しめ!」
「……律太さん、そう言う問題じゃない様な気もするんだけど……」
「細かい事は言いっこなしだぜ、なずな」

 ――いつも頑張る(いつも頑張る) 君の横顔(君の横顔) ずっと見てても、気付かないよね

 律の掛け声とともに始まった最初の歌……ふわふわ時間(タイム)が流れると、澪の震えは完璧に止まり、心配していたなずなも律太の言葉にツッコミを入れる余裕が現れました

 ――夢の中なら二人の距離 縮められるのにな

「まぁ、ドラムが少々走り気味、と言うの所とか、気になる部分もあるが……中々にいい感じだな」
「それにこの歌、この前佳澄美や楓が言ってた、合宿で作った秋山オリジナルの歌ですね……結構面白い歌だな」
「それに合わせた音楽も素敵ですね〜」
「あ、あの、風見先輩も、ネリネ様も、あの歌、恥ずかしくないんですか?」
「奈三子さん、この際深く考えない方が良いと思う……」

 ――ああカミサマお願い 二人だけのDream time下さい お気に入りのウサちゃん抱いて 今夜もお休み 

 その歌の内容に、乃莉と奈三子は少々の気恥ずかしさを覚えますが、楽しそうに手拍子を取るなずなとプリムラ、ネリネとリコリス……
 そして少しおかしそうな表情をしながらも、その歌詞を評価する透夜と律太に、あまり深く考えない方が良い、と思ってしまいます

 ――ふわふわ時間(タイム) ふわふわ時間(タイム) ふわふわ時間(タイム)……

 そして、そんななずな達の状況を余所に、最初の曲が終わり……講堂に集まった観客からは盛大な拍手を送られたのでした―― 

 その後、緊張が完璧に解けた澪は、全ての歌を完璧に歌いきりました
 そんな澪に、なずな達はホッと胸をなでおろします 
 しかし…… そんななずな達の気持ちとは余所に……

「きゃぁぁぁ!」

 自身達の全ての演目が終わった安心からの反動なのでしょう……
 その瞬間、澪の可愛らしい叫び声と共に……彼女が転んでしまいます

「透夜様ッ!見ちゃ駄目ですッ!」
「律太さん、下を向いてッ!」

 それと同時に、来ていたドレスのスカートが捲り上がり……その中にある、白と青の縞々が現れます!
 その状況を理解したなずなとネリネの手により、その場にいた男二人は、無理矢理下を向けさせられます
 ……下を見ずとも、彼らの方向からは、その中身を見るには、少々角度が悪かったのですが……
 それと同時に、この二人の目を塞いだ所で、事態の解決に向かないのも、また事実です
 そんななずな達の状況云々はともかくとして、澪自身も、徐々に自分の状況を理解して行きます

「いっ……いやぁぁッぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!」

 そんな状況を理解した澪は……演奏していたその場所……講堂内全てに響き渡る様な叫び声を上げるのでした……

 次回に続く

 あとがき
 第五十五話挿入歌 けいおん!代表曲「ふわふわ時間(タイム)」

 と言う事で、調子に乗って、前回に続いての挿入歌アリと相成りました(笑) まぁ、けいおん!原作を知ってる人は、想像通りだ、と思ってしまうかもですが
 それはそれとして、色々問題こそ残ってる物の、これで学園祭編は終了です 澪の問題を後回しにしたのは、後々のフラグ程度に思ってくれれば幸いです

 さて、次からですか、今までとは比較にならない程の、重いシリアスの展開です 気を付けてお読みください〜

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