「……ねぇ、なずなちゃん……」
「……なに? リムちゃん……」

 何だかんだでとうとう始まった文化祭、なずなとプリムラは、最初に二人して見学させて貰う事にしたのですが……
 暫くして見つけた、とある一人の少女を見て、二人はどうコメントして良い物か、迷ってしまいます

「アレ、空ちゃんだよね……?」
「うん、空ちゃん……」

 その少女……空は、人ごみの中で両手を上げて、それで踊るように左右にあちこち移動しています

「……何やってんだろ……」
「……そうだね……」
「……多分、アレは客引きをやってるかと……」

 その行動に疑問を持つ二人ではありましたが、隣で二人と同じように空を眺めていた少年が、その空の行動を解説します

「あ、ねーちゃんの友達ですか?」
「ねーちゃん、って空ちゃんの事?」
「あ、はい」

 その少年に問われて、改めてその少年を見たなずなとプリムラは、彼がどことなく空を真面目……もとい真っ当にした印象の強い事に気付きました

「空ちゃんの弟さんなの?」
「はい、梶原青、と言います」
「へぇ〜 よろしくね」
「それで客引きって言えるかぁ!」

 そんなこんなで頭を下げ合うなずな達を余所に……客引きと言う名の変な踊りをしていた空は、根岸に叱られていました……とさ


  ひだまりメイドラプソディー 第五十三話 学園祭!(前編)


 そんなこんなで、青と一緒に須尭やゆの、ヒロが作った焼きそばをたいらげたなずなとプリムラは、友達と学園祭を見る、と言う青と別れて自分たちの部活に戻る事にしました

「お、戻って来たなー」
「はい!」
「んじゃ、接客は俺達に任せて、二人は料理の方、頼むぜー」
「はーい」

 そして、亜沙達と一緒に文化祭の出し物である、喫茶店を頑張ろう、と気合いを入れなおすなずなとプリムラでしたが……とある一つの違和感を覚えます

「って、律太さん!?」
「……もしかして、気付いてなかったのか?」

 その違和感の正体を確かめたその瞬間、執事服を着ている律太の存在が、二人の目に飛び込んできました

「何で律太さんがここにいるの? そんな事より、その格好……」
「む、似合わなかったか?」
「う、ううん……凄くカッコいいよ?」

 なずなの態度に、少々彼女が自分の格好に残念な物がある、とも思いましたが、なずなの答えに、安堵した様な表情になります

「彩井始まってからの生徒会の伝統でな……文化祭本番の時は、生徒会と風紀委員は、他の部活の手伝いもする決まりになってんだ」
「「へぇ〜」」

 律太の説明に、なずなとプリムラは、納得したようにそろえて声を上げます

「……全く、素直じゃないんだから……」
「? 雪花先輩?」

 そんな時、なずなの耳に飛び込んできた、心の底から呆れかえった様な声
 その方向を見ると、本当に心の奥底から呆れてる様な、雪花の存在がありました

「律太……こう言う時に変に誤魔化すのは、どうかと思うわよ」
「誤魔化すって……何を誤魔化すってんだ」

 そして、律太に対して、注意をしますが……律太の本気の答えに、雪花は一瞬言葉を失います

「ねぇ、時雨さん……律太は本気で言ってるのかしら?」
「本気だと思いますよ? ……多分気付いてないのかと〜」

 どこからどこをどうコメントして良いのか分からない、そう言いたげな雪花に、同じ表情をしていた亜沙は、ありきたりな答えを出すしか方法はありませんでした

「ねぇ、みんな……そろそろ仕事しようよ……カレハや風ばかりに押し付けてないでさ……」

 そんな微妙な空気の中、プリムラの一言によって、皆弾かれた様に動き始めました……とさ

 そして、次の日……三日間開催される文化祭の中日……
 なずなとプリムラ、そして風の三人は、午後に開催される唯達の軽音部演奏を見る為に、午前中は自分たちの持ち場に集中していたのですが……

「なずな! なずないる〜!?」

 もう少しでお昼にしようか、と三人で教室を出ようとしたその瞬間、その教室の入り口を壊さん勢いで、乃莉が現れました

「の、乃莉ちゃん、どうしたの!?」
「そ、それが大変なの!? 澪が、澪が!」
「澪ちゃんがどうしたの?」

 唐突に表れた乃莉は、なずな達に事情を説明しようとしますが、息が切れたままなので、それも上手く出来ないでいます

「もう、のーちゃん……まずは落ち着いて、水かお茶を飲まなくちゃ、だよ?」
「あ、ありがとう、ございます……」

 そんな状況を見かねてか、小毬は二つのカップを持って、乃莉に差し出します

「な、なずな……唯と澪が大変な事になってるの……」
「大変な事? もしかして、演奏が出来なくなったとか?」
「今はそこまで酷くないけど……一歩間違えると、そうなるかも……」

 それを受け取りつつ、事情を説明した乃莉によって、軽音部の状況を理解します

「ともかく、一緒に来て! 奈三子さんも和に呼ばれてる筈だから!」
「う、うん! 分かった!」
「なーちゃーん! 頑張ってねー!」

 そして、乃莉と一緒に教室を出ようとしたなずな達でしたが……事情を完璧に理解してるのかしていないのか、理解に苦しむ小毬の一言に、少しずっこけそうになってしまったのでした

 次回に続く

 あとがき
 と言う事で、前回以上の難産となってしまった、ひだまり本編です 何気に律太が目立ってたなー(笑)
 次回は、ちょっと試してみたい事が一つあったり……はてさて、成功するか否か……

inserted by FC2 system