「ねぇ、なずな〜、リムちゃん〜 ちょっといい?」

 文化祭まで後二週間を切った10月の半ばの、とある寒い日
 なずなが所属する料理研究部では、それなりにいい場所にある教室を借りきって模擬店をやる事に決まったのですが……
 その模擬店に出す料理の練習をしている最中、部室に入ってきた女生徒が一人
 それは、なずな達の記憶が正しければ、陸上部に所属していて、今はグラウンドで走っているハズの由佳里でした

「どうしたの?」
「うん……最近、奏ちゃんの様子が変だと思わない?」

 部室の隅っこになずなとプリムラの二人を呼び、由佳里は単刀直入に切り出します
 その言葉に、なずなは首を少し傾げますが、直後にふいと表情を変化させます

「そう言えば、お昼が終わった後、手に包帯が巻かれてた!」
「ッ……」

 由佳里の言葉になずなは僅かながらに首を傾げますが、直後にハッとした表情に変わります

「つまり、奏に酷い事をしている輩がいる、と言う事だな?」

 そんな時、なずな達の後ろから声がかかります
 三人が驚いて、その方向を見ると、凄まじいオーラを纏っている風がいました
 その表情から、彼女がそれ相応の怒りの感情を持っている、と言うのを三人は理解します

「由佳里、その連中に心当たりは?」
「え、えぇっと……」

 そして、そんな風の剣幕に、由佳里は言い淀みます
 確たる証拠が無い、と言えば、自分が風に殺されるんじゃあ……そう思ったからです

「ま、まぁまぁ、風ちゃん……落ち着いて落ち着いて」
「なずながそう言うなら、仕方ない」

 しかし、なずなの一言に、風は不満がある物のとりあえず引きさがる事にするのでした


  ひだまりメイドラプソディー 第五十話 いじめ?(前半)


「どの様な理由があるとしても、奏さんの様な方をいたぶる様な真似をするとは――!」
「お前は暫く黙ってろ」
「…………」
「ね、ネリネ……大丈夫?」

 とりあえず、こう言う時は心から信用のおける人間に相談を、と言う結論に達した料理研究部は、真っ先に透夜に相談する事になりました
 そして、事情を説明した直後、透夜と一緒にいたネリネがそう叫び……透夜によって、問答無用にはっ倒されたのです

「ともかく……信用出来るからってだけで、何で俺なのさ……」

 そして、そんなネリネをリコリスに任せた後、透夜の視線は愛佳の方に向かいます

「ど、ど、どういう事〜?」
「……お前、ホントに生徒会役員かよ……」

 そんな透夜の視線に怯えた愛佳は、少し引き腰になりつつ答えますが、そんな愛佳に透夜は呆れたような声しか出せません

「で、でも……生徒会も忙しそうだし……」
「生徒会に遠慮して、俺には遠慮しないのかよ ……まぁ、信用されてる、と言う見方も出来るが……」
「そうそう、信用されてるんだよ、透夜ちゃん?」

  ため息交じりにボヤく透夜を宥めるように佳澄美
 そんな恋人の言葉に、透夜はもう一つ溜息を吐きます

「とりあえず小牧、生徒会と風紀委員に連絡入れとけ」
「はーい」
「で、でも……」
「俺だって暇じゃないの 文句があるんだったら、学園祭における、我らが合唱部の手伝いをしてくれ」

 そして、愛佳に指示を出しますが、そんな透夜になずなは思わずそれを制止しますが……
 透夜の返しに、なずなは只口をつぐむしか方法がありませんでした

「そんな事よか、周防院が心配なんだろ? ここで只あーだこーだ考えてる暇があったら、やる事があるんじゃねーの?」

 そして、そんななずなに透夜はさらに一言
 その透夜の一言に、なずなは弾かれたかのように、掛け出しました

「フン……最初っからそうしときゃ良いんだよ……」
「でも透夜ちゃん、大丈夫なの?」

 なずなの態度に満足そうな透夜とは相対して、佳澄美は少し不安そうな表情です

「良いんだよ、コレで 俺はドラ○もんじゃないからな……」
「……○ラえ○んって……」
「それに、あいつには俺よか頼りになる奴らがいるじゃんか そいつらよりも先に俺に頼るのは、少々どうかと思うしな」
「……そうだね……」

 自分の説明に、恋人が納得してくれた……そう判断した透夜は、倒れたままのネリネを引きずりつつ、そのまま合唱部の部室に入って行くのでした

 そして数日後……

「中々見つからないモンだな……」
「そうですね……」

 昼休み、そして放課後となずな達は奏を探しますが、一向に奏がいじめられてる(?)現場に遭遇する事が有りませんでした

「奈三子さんも如月ちゃんも、ホントにごめんね……」
「何言ってるんですか、なずなちゃん! こんな時に頼って貰わなくっちゃ、友達じゃないですよ!」
「そうそう こう言う時に乃莉だけに声を掛けるのは、少々失礼じゃないの?」

 この現状に、なずなは頭を下げますが、如月も奈三子も気にしない、と言わんばかりの表情で答えます

「でも、やっぱり野田ちゃんや友兼さんやりっちゃんにも……」
「いや、あいつらに声を掛けると、話が変にこじれる」
(やっぱりバッサリだ……)

 なずなと、彼女が真っ先に相談を受けた乃莉、そして最初になずなに相談をした由佳里は、まず如月と奈三子、そして澪に相談を持ちかけました
 そして野田達にも……と言う話にもなったのですが……話が変な方向にこじれる可能性がある、と言う奈三子の一言で相談はしない、と言う話になりました
 そしてそんな奈三子の一言に、なずなは思わず呆れた溜息を吐いてしまうのでした

「あぁ、いたいた!」
「あ、由佳里ちゃん!」

 そんな時、由佳里が現れます その表情から、相当な焦りが見て取れ、なずなはその表情から奏が見つかった事に気付きます

「今、奏ちゃんが見つかって……でも、上級生の人達に……今、乃莉ちゃんが止めて、澪ちゃんは生徒会……」
「分かった! そこに案内して!」

 その由佳里の息は完璧に切れて、たどたどしい言葉ではあった物の、それをなずな達は完全に理解しました
 そして奈三子の一言に、由佳里は今来た道を戻って行くのでした

 次回に続く

 あとがき
 と言う事で、暫くシリアスになるかと思います
 んで、今回は何処の学校にでもある問題だ、って事になるんでしょうかね? まぁ、原作「乙女はお姉さまに恋してる」に実際あったイベントをそのまま使ってんですが
 にしても、ここ数回の内容を見てると、透夜と稟って、モロにカードゲームアニメ・ヴァンガードの櫂と三和のポジションだよな……(ぉ

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