「リッ!ムッ!にゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
「……ッ……きゃぁぁぁぁ!」
二学期が始まってからしばらくしたある日の放課後……
唯は自分のクラス……宇佐美の話が終わったのを確認してからME科の教室を全力で飛びだし、そのままMG科の教室に掛け出して行って……
目的の人物……プリムラが雅と一緒にいるのを確認すると、そのまま勢いを越さず、全力で抱きついて……
勿論抱きつかれた方は、足を踏ん張りきれずに、そのまま床に唯共々叩きつけられます
「……唯殿、何をしている?」
「リムにゃん、リムにゃん、リぃムぅにゃぁ〜〜ん♪」
そんな二人に、雅はどうリアクションを取っていいのか分からず、無難にそう聞きますが……
唯はそんな雅の言葉が聞こえないかの様に、只々上機嫌にプリムラに頬ずりを続けます
そんな時……
「てめぇ、平沢……プリムラに何してやがる」
「ふにゃッ!」
そんな唯の首根っこを掴んで、そのまま持ち上げる男子生徒が一人、プリムラが「お兄ちゃん」と呼び慕うKN科二年土見稟の相方である二年の風見透夜です
その表情こそ笑顔ではある物の、その声と目は、全力で目の前の相手を殺したいと言う欲求に満ち溢れています
「あ、あの〜……?」
「まぁまぁ、透夜……抑えて抑えて……」
「まぁ、稟がそう言うなら……」
そんな透夜に、只小動物の如く怯える唯でしたが、稟の一言に透夜はその手を放すしかありませんでした
ひだまりメイドラプソディー 第四十九話 スキンシップ?
「……んで? 何であんな真似をした?」
「いえ、その前に透夜様は何をしたいんですか、何を」
場所は変わって、彩井学園の食堂の一角、透夜は唯に先ほどの行動の意味を問いかけますが、その隣にいたネリネに、今度はその行動を問い質されます
それは勿論当然の事 何と、唯の目の前にはカツ丼が堂々と鎮座していたのです!
「……サスペンス小説の刑事じゃあ無いんだ……わざわざこんなモン用意する必要はないと思うが」
そのカツ丼を眺めつつ、たまたま同席していた謙吾もネリネのその言葉に同意します
「……ネリネも謙吾も、形式美ってのを理解しちゃいないのな 稟、楓、お前らは理解してくれるか?」
「……いや、正直コレは、どっちでもいいんだが……」
「……形式美って、透夜君……」
謙吾とネリネに期待できなくなったのか、今度は稟と楓に視線を向けて、同意を求めますが……稟は呆れたような溜息を吐き、楓も只苦笑するしかありません
「佳澄美ぃ〜!」
「いやいや、透夜君? 佳澄美に抱きついたり、形式美を語るよりも前に、やるべき事があるんじゃないの?」
そんな状況に、恋人・佳澄美に泣きつこうとしますが……先ほど唯にしたように首根っこを掴まれます
その相手……リコリスも、稟や謙吾と同じく凄く呆れたような表情をしながらも、視線は透夜とは別の方向を向いています
その視線の先には、十数分前に唯に抱きつかれまくって、精神を思いっきりすり減らして、魂を口から吐き出しているプリムラの姿がありました
「それで? 透夜君じゃないけど、何でリムちゃんに抱きついたの?」
「だってぇ! リムにゃん、可愛かったんだもん!」
「だもんって……」
「……アレ、殴っていい?」
リコリスの問いで、グダグダしていた空気は引き締まった物の……唯の一言にまたもや微妙な物に戻ってしまいます
そのあっさりしすぎている答えに、稟は絶句して、透夜は額に血管を浮かばせて握りこぶしを作ります
「それより、唯ちゃん……リムにゃんって何? リムちゃんじゃ駄目なの?」
「えぇ〜? リムにゃんの方が可愛いよ〜?」
「……訳分かんねー……」
そんな状況にようやく付いてこれたなずなは、その場にいた皆の最大の疑問を口にしますが、その答えはあまりに要領を得ません
「ともかく……プリムラをどう呼ぼうと、人それぞれだからしょうがないとして、だ……」
これ以上議論してもしょうがねーべ、と言いたげに透夜 そんな透夜に、稟と謙吾は「あ、諦めた」と言わんばかりの表情をしますが、透夜は丁重にその視線を無視します
「少なくとも、プリムラが真っ白になるまで抱きつくの、禁止」
「えぇ〜……」
「えぇ〜じゃない! このままだとプリムラが死ぬ いや、真面目な話!」
透夜の一言に、唯は不満気な声を上げますが……なずなや雅を始め、その場にいた皆が透夜の意見に首を縦に降ります
「だぁってぇ〜! リムにゃん、抱き心地が良いんだよぉ〜!」
「どれ」
「って、キョージュさん……?」
唯の一言に、雅はプリムラの下に行き……なんと、プリムラをそっと優しく抱き寄せたのです!
「ふむ……確かに、唯殿の言う通りだな なんとなく、猫を構ってるような……如月殿や唯殿にもお勧めしたい位だ」
「……そうやって、優しくしてる間なら、プリムラも構わんと思うがな、俺も ……なずな、順番だからな?」
「ハッ! す、すいません!」
雅のコメントに、なずなもそれに続きたいと言わんばかりに、手をワキワキさせますが……透夜の一言に暫く我慢することに……
「ともかく、プリムラが好かれてるようで、安心だな」
「そうですね 良かったです……」
「でも、稟君? 視線がお兄ちゃんじゃなくて、お父さんの物になってますよ?」
なずなとプリムラ、唯と雅の姿を見て、稟達は確信します 彼女達の友情は、これからもずっと続く物だと……
しかし、余談ながら……
この日の唯の行動のせいで、プリムラは暫く彼女を避け続けていました
なずなを始め、唯の友人たちは……コレを自業自得とはっきりと断罪するしか方法はありませんでした
次回に続く
あとがき
はい、今回は唯の暴走でした んで、その被害はSHUFFLEの猫系ヒロイン・プリムラですね
んで、原作最大の被害者(?)梓があずにゃん、だからプリムラはリムにゃんと呼ばせることに……(笑)
しかし、キョージュを妙に暴走させすぎたか……? 人の真似を、ついついしたくなる性格とは言え……
ともかく、次からは暫くシリアスが続きます 文化祭での澪のアレ以外は……(ぉ