それは、プリムラと風が料理研究部に入部してから、ちょうど一週間が経ったその日でした
彼女……なずなの目の前には、まるで魂が抜け落ちたと言わんばかりの雰囲気を持つ、KN科の制服の女の子が一人
「な、何で……? どうしてこうなったの……?」
「な、なずな……」
その女の子を目の前に、思いつめたようななずな
そんななずなに、和や奈三子、そして乃莉はどう声をかけていいのか分からないのです
「乃莉ちゃん! 何で澪ちゃんは……!」
「ごめん……私には、止められなかったんだよ……!」
「いや、ちょいストップ」
自身に詰め寄るなずなに、只謝ることしか出来ない乃莉でしたが……
その声を遮るように、律の声が響きます
「どうせ、今日の授業で澪の苦手な幽霊の話が出てきたんだろ? そんならお前らがあーだこーだ考えても、しょーがねーべ」
「? そうなの?」
「ああ……さっきの授業、確かに、退魔の授業だったな」
呆れたような律の言葉に、視線を外しつつ奈三子と和
そんな二人に、律は只呆れた表情をするだけでした
「ほら、澪……とっとと起きろ〜」
「あ……律……」
律に声を掛けられ、澪の表情は徐々に生気を取り戻して行きます
しかし、その直後――
「い、いやあぁぁぁぁ!」
今度は叫び声を上げつつ、澪はその場から走り去って行きました
何で?と思いつつ、なずなは律の顔をのぞくと……彼女は凄まじく恐ろしいお面……般若面を被っていたのです!
「いや〜……ほんっと、澪は脅かし甲斐があるよなぁ〜」
「りっちゃん……いくらなんでも、それは酷いよ……」
般若面を外しつつ、カッカッカッ、と心の底から楽しそうに笑う律に、なずな達は只呆れたような溜息を吐くしかなかったのです
ひだまりメイドラプソディー 第四十八話 退魔?
「そういやあ今頃の一年は、そんな授業を受けるんだっけか」
澪が逃げた後、何が起きたのかと様子を見に来た魚住達は、なずなと和から事情を聴き、昔を懐かしむかの様な表情になります
「そう言えば、懐かしいですね 二年前のあの日……私達も似たような経験をしましたよ」
そんな魚住に同意するかのように、マツリも苦笑を交えつつ呟きます
その魚住やマツリに同意するように頷く朋也や須尭、そして杏に、なずなは何かしらの思い出があるのかな?と感じます
「そう、あれはちょうど二年前だったか……俺達も退魔の授業をしてたんだよ……」
「そして、外間先生が持ってきた人体模型と骨格模型を持ってきたその時だ……」
「あ、あなた達! 一年生に何を教えてますの!?」
そんななずなの態度に気を良くしながらも、過去を懐かしむかの様に語る須尭と魚住でしたが……横からそれを遮る声が響きます
その方向を見ると、風紀副委員長の貴子が、瑞穂や紫苑と一緒に昼食を持って現れていたのです
「チッ……きやがったか……」
「き、きやがったですって!? 魚住さん! そんなつまらなそうな顔でそのような事を仰る……!」
「まぁまぁ、貴子さん……」
心の底からつまらなそうな魚住の表情に、肩を震わせて詰め寄りますが、瑞穂に止められ、その荒れた息を無理やり止めようと必死の努力をします
「だが、まぁ……確かに厳島も酷かったが、それ以上に酷いのがいたよな……」
「ああ、そうだったわねぇ」
「? そうでしたっけ?」
「そりゃあ、お前は覚えてないだろうよ……」
そんな瑞穂と貴子の様子に呆れながらも、朋也と杏も当時の事を思い出しつつ、噴き出しそうになるのをこらえます
「確かに人体模型目にして壊れた厳島に、剣を投げられた春原のあの表情は凄かったな」
「お、分かるか、魚住!」
「あ、アンタら、何気に酷い事言ってますよねぇ!?」
その朋也のセリフに、貴子は頭に「?」を浮かべますが、それに相対する魚住の態度に、朋也は心の底から嬉しそうな声を上げます
そんな朋也達に、一歩離れた場所で寂しく昼食を取っていた春原が、憤然と抗議を行います
「まあ、ともかく……だ」
「?」
最早グダグダとなってる空気の中、それを別の場所に置くような手の動きをした須尭は、不意に真面目な表情になる
「確か別の学科も対アンデットの授業をそろそろやるんじゃなかったのか?」
「そ、そうなんですか……?」
その須尭の一言に、なずなと律は少し怯えた様な表情になります
「俺も話に聞いただけなんだが、MEやTHは対アンデッド用の魔法習得だし、BSはアンデッドが苦手とされる銀製品の作成、そしてMGはアンデッドを使役する魔法だって話だ」
「使役……」
「なずな、お前、まさか……!」
そして、須尭の「使役」と言う一言に、なずなはとあるイメージが頭に浮かびます
それは雅が動く人体模型を使役して、お茶を入れさせたり、料理を作らせる物でした
そんななずなの考えを理解してしまった乃莉達は、思わずそんな考えに同意してしまうのでした
「あだだだだだだだだ! 割れる割れる割れる割れる!」
そんな時、なずな達の耳に空気を切り裂くような叫び声が上がります
その方向を見ると、環が弟の雄二の顔にアイアンクローをしかけていました
「……あの、今私が思った事、言っていいですか?」
「……マツリさん、多分皆同じ事思ってると思いますよ?」
そんな様子に、マツリは上ずった声を上げますが……心底呆れたような声の瑞穂に、止められるのでした
そう……「実は環の弟って、アンデッドなんじゃあ……」と言う疑惑の声を上げてしまうのを……
次回に続く
あとがき
と言う訳で、珍しく授業関係のお話となりました と言っても、なずな達メイドの話では無く、乃莉達騎士のお話になったんですけどね
そして、今まで出てきたKN科三年が勢ぞろい……ある意味凄い光景……になるのかな? でも、雄二ってある意味凄いんじゃね?と思ってしまいましたが……違う?
次は、唯とプリムラになる予定です 原作けいおん!の某人物とプリムラって、なんか似てるんだよねぇ……って話だったり(笑)