8月が終わり、9月になりました
 暑い太陽と、キラキラ輝く海が支配する夏の季節から、大地の恵みと優しい風が支配する秋の季節へと、この世界も移り変わろうとしています
 そんな中、私達が住む国(一部除く)同様、彩井学園でも二学期が始まろうとしています

「暑い……眠い……」
「暑くて眠いのは分かったから、とっとと起きなさい!」

 彩井学園学生寮、通称ひだまり荘のとある一室、これから二学期の始業式が始まろうとしているのに、その部屋の住民である唯は、寝ぼけ眼で相棒の和に叩き起こされようとしています

「唯ちゃん、まだ寝てるの?」
「やっぱりねぇ……」

 そんな唯を予想していたのか、なずなと乃莉も、二人の部屋に入って唯を起こそうとします

「ねぇ、乃莉ちゃん、ムギちゃんのケーキを……」
「ケーキ!?」
「わっ! 吃驚した!」
「「あはは……あははは……」」

 紬のケーキを持ってくれば起きるんじゃあ……なずなはそう言おうと思ったのでしたが、その前にその意味を理解した唯は、一秒でその身支度を終了していました
 そんな唯の態度に、乃莉と和は、只乾いた笑みを浮かべることしか出来ませんでした


   ひだまりメイドラプソディー 第四十三話 二学期!


「にしても、今日から二学期かぁー なんってーか、憂鬱だなぁー」
「奈三子さん、溜息つくと、幸せが逃げるって言いますよ?」

 唯が起きたのを確認したなずな達は、如月や奈三子と合流して食堂に行く事にしましたが、これから始まる二学期に、奈三子が溜息を吐きます
 それに対しての如月の返しに、なずな達は「近所に住むお婆ちゃんみたいな事言うな、如月は」と思ってしまいます
 その直後、蚊を叩き落とすような音が聞こえてきます

「その幸せ! 私が捕まえました、奈三子さん!」
「野田ちゃん……幸せの捕まえ方は、蚊を叩き潰すのと違うと思う……」
「「なずな! それ反応する所違うからね!」」

 野田の一言に対するなずなの言葉に、奈三子と和は思わず声を荒げてツッコミを入れてしまいます

「でも、奈三子さんが二学期が憂鬱だと思うのは、学校生活の中で、二学期が一番長いからだと思うのです!」
「聞いてたのか」
「なんか、嫌な予感がするんだけど……」

 そして、野田の次のセリフに、乃莉と奈三子は嫌な予感が汗となって背中を伝います

「なら、毎日のちょっとした刺激を加えれば、いいのです!」
「メリハリって訳だね!」

 ツーと言えばカー……そう言わんばかりに、野田の一言に唯が乗っかります その状況に、なずなも少し嫌な予感が出てきます
 それでも、野田の言ってることも間違っていない……そう信じて、彼女の次の言葉に従おう……そうなずな達は思うのでした

 そして食堂―――

「野田、なずな、おはよー」
「おはよう、野田殿、なずな殿」
「おはよー!」

 友兼と大道が食堂に入ってきてすぐの所になずなと野田を見つけ、声をかけます

「あれ?乃莉はどうしたんだ?一緒じゃねえの?」
「え、えっと……」

 乃莉じゃなくて、野田と一緒なんて珍しいモンだ――友兼と大道の視線に、なずなは思わず視線を逸らします
 その直後、大道が閉めた戸が激しい音と共に開けられ、それに驚いたなずな達がその方向を向くと―――
 その場には、何と奈三子が倒れていました その様子に、友兼は何が起きたんだ!?と言わんばかりの表情になってしまいます

「うぅ……や、やられた……」
「な、奈三子さん!?」

 倒れたまま呟く奈三子に、友兼は思わず助けようとしますが、その近くには唯と和、そして如月と乃莉の四人がすでに駆け寄っていました

「お、俺はもう……ダメだ……!」
「さあ、敵襲により、見方軍勢の大半が成すすべも無く壊滅しました!」
「な、なんだとぉー!」
「何……やってんだ? 如月と唯はともかく、和と乃莉まで……」

 唐突に始まっていた寸劇に、友兼はどうコメントして良いのか、分からない……そう言いたげな表情になります

「た、頼む……故郷で帰りを待っている恋人に……あ、愛してると……」
「「え、えーせーへー!えーせーへー! えーせーへーは何処だぁっ!?」」
「二学期の始まりだってのに、元気だな」

 二学期の始まりが、こんなバカ騒ぎで、いいのかなー? 至極真面目にコメントする大道の隣でなずなは、思わずそう思ってしまうのでした……

 そして二学期初めての教室――担任の宇佐美が入ってきて、朝のHRが始まろうとしています
 彼女の後ろには、三人の女の子 その中の一人を見た時、なずなの顔は嬉しそうな表情になります
 夏休みの最後の方、奏と一緒に学校から帰ったあの日出会った、サイドポニーで、無表情だけどちょっと偉そうな雰囲気の、風と呼ばれた女の子――

「まず最初に、二学期から一緒に皆と一緒に勉強する子たちを紹介します」

 宇佐美がまず、最初に前に出るように促したのは、金髪のストレートロングの美人だけど、その笑顔から来るなずなの印象は、唯や野田、律に近い物を感じました
 そしてその少女と風の間にいる女の子は、金髪でちょっと変わったツインテールであり、三人の中では、真面目と言うよりは誠実と言う表現の方が正しい雰囲気をなずなは感じました

「ケイトと言いまーす!宜しくお願いしまーす!」
「マリアンヌと申します 出来ればマリ、と読んでください」
「風と言う 宜しく頼む」

 その三人の自己紹介を終えると、クラスから盛大な拍手が巻き起こりました
 なずなは、彼女たちとこれから何を学ぶのか――それが楽しみでなりませんでした

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、ようやく二学期がスタートです 今回はスケッチブックからケイトが、ゲーム版GAからマリが初登場となりましたが、この二人は外国から来た、と言う設定ですからね……
 その為のフォロー設定をどうしようか、正直かなり悩みましたが、まぁ、ファンタジー設定を上手く使えば、なんとかなるような気がします ちょうど魔界や神界とかもありますし、と考えてます
 次からは、二つ三つはシリアスとなりますね ふーすてっぷの風の過去と、SHUFFLEのヒロインの一人の設定と……って感じになるかと

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