(あれ……?)

 夏休みも残り一週間となったその日、部活も休みと言う事で、乃莉や如月達と一緒に街に出て見ると、とある見なれた人物を見かけました
 学校と寮以外で会った事こそ無かった物の、その神族特有のやや長い耳、そして同じ女の子でもうらやむような美しい金色の髪……彼女がなずなと同じ料理研究部の副部長である事に気付きます

「なずなちゃん、どうかしましたか?」
「あ、ううん! 何でも無い!」
「もしかして、カッコいい人でも見つけた? 愛しの律太さんがヤキモチ焼いちゃうよ〜?」
「り、律太さんとは、まだ……! それに見つけたのはカレハ先輩だもん!」
「「あ、ホントだ」」
「あら、なずなさん達じゃないですか お買いものですか?」

 そのカレハを見ていたなずなでしたが、そのカレハ自身もどうやらなずな達に気付いたらしく、笑顔で話しかけてきます

「先輩は何やってるんですか?」
「亜沙ちゃんとアルバイトをしていますわ♪」

 カレハの問いに頷きつつ、なずなはカレハに問いかけますが、意外な答えが返ってきます

「? アルバイト?」
「ええ、そうですわ すぐそこの喫茶店、なずなさんも知ってますわよね?」

 カレハの言葉に、なずなは少し考え込んだ後、商店街でハチポチと言う名の喫茶店を思い出します
 可愛らしさと大人っぽさの同居した制服に、なずなや如月も一度は行ってみたいね、とは思っていたのです

「どうでしょうか? 亜沙ちゃんにも会っていかれては?」

 そしてカレハの提案に、なずな達は思わず「はい!」と返事をしてしまったのでした


   ひだまりメイドラプソディー 第四十二話 バイト!


「只今帰りましたわ」
「おかえりなさい、カレハちゃん」

 カレハの案内でハチポチに到着すると、どんな事が起きても驚く事がなさそうな、柔らかい笑顔の女性がカレハを迎えます

「あらあら、お客さんを連れて来てくれたのかしら?」
「はい 私や亜沙ちゃんと同じ部活の後輩のなずなさんと、そのお友達ですの」

 その女性……戌亥みいこは、カレハの後ろにいるなずな達を見つけると、さらに柔らかく、そして優しい笑顔になります
 なずな達も、そんなみいこの笑顔に、思わず見とれてしまいます

「あらあらあらあら……まあまあまあまあ……」

 そんな中、みいこはなずなの全身をあちこち眺め始めます

「……? どうか、したんですか?」
「なずなさん、といったわよね?」
「? はい、そうですけど?」
「うちでバイトしてみないかしら?」

 そして、そんなみいこに戸惑うなずなでしたが、次のみいこの一言に、なずなはさらに戸惑ってしまいます

「そ、そんな! 私なんか……」
「あら、そうですか……残念ですわね……」

 しかし、なずなは真っ赤になって俯いてしまうので、カレハも少々残念そうな顔になってしまいます

「でも、したくなったら何時でも言ってね? そっちの眼鏡の子も」
「「は、はぁ……」」

 みいこの言葉に、なずなと如月はどう反応していいのか分からない、と言った表情になってしまいます

「そう言えば、亜沙先輩もここでバイトしてるって言ってましたけど……厨房にいるんですか?」
「あら、そう言われれば、亜沙ちゃん、いませんわね……みいこさん、知ってますか?」

 そんな中、乃莉は一つの疑問を口に出し、カレハもそれに同意しますが、みいこは「うふふ」と少し微笑んだ後……
 客が誰も座っていないテーブルの一つに近づいた後、その下に腕を伸ばし―――
 そこから何と、亜沙を発掘(?)したのです

「亜沙ちゃん、見つけたわよ」
「み、みいこさん……」

 みいこに腕を引かれ、恥ずかしそうに真っ赤になる亜沙でしたが、その目の前にいるみいこの笑顔に、亜沙の表情は凍りつきます

「後輩に見られるのが恥ずかしいのは分かったけど……」

 その満面の笑みなずな達も少し怯えてしまいますが、カレハの案内で少し安全な所に避難することに

「そう言う半端な隠れ方をすると、クビよ?」
「ハイ、スミマセン、ゴメンナサイ、ユルシテクダサイ」
(なんというか、凄い人だな……)

 亜沙の耳を引っ張って厨房に引っ込むみいこを見ながら、なずな達はそれでも、たまにここに来よう、とは思うのでした

 そして数十分後、出されたケーキを楽しんだなずな達は、紅茶とお喋りを楽しんでました

「三人とも、ケーキとお茶はどうだったかしら?」
「は、はい 凄く美味しかったです」
「そう、よかったわ♪」

 三人を代表して、なずなの一言に、みいこは嬉しそうな笑顔を見せてくれます

「今度は好きな男の子と一緒に来てくださいね」

 そして、その笑顔がさらに素敵な物になると、そう言いだします
 その一言に、なずなと如月は、思わず顔を真っ赤に染め上げてしまいました

「ふふっ♪ その様子だと、ホントに大好きな人がいるみたいね」
「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜」」

 その二人のリアクションに、みいこはさらにニコニコ笑顔になってしまいます
 乃莉も乃莉で、ニヤニヤ笑顔で二人を冷やかします

「私はね 恋する女の子の味方なの」

 そして、その笑顔が少し真剣な物に変わると、そう言い始めます

「だから、大好きな人と一緒に来たら、少しサービスさせてもらうわね♪」

 勿論、バイトもして貰えれば、もっと嬉しいんだけどね―――
 そう言って、みいこは厨房のほうに戻って行きました

「二人とも、ホントにバイトしたら?」

 そんなみいこを見送った乃莉は、ニヤニヤとした笑顔で、二人に問いかけますが……なずなと如月は真っ赤になりながら、首を左右に振り続けるだけでした

「うふふ、乃莉さん、そんな無理強いをしてはいけませんわ♪」
「いえ、分かってはいるんですけどね〜 でも、何で亜沙先輩はあんなに恥ずかしがってたんですか?」
「さぁ……亜沙ちゃん、凄く似合ってるのに、なんであんなに恥ずかしがってるんでしょうかね……」

 乃莉の問いに対するカレハの答えに、なずな達は思わず亜沙に同情をしたくなったのでした

 次回に続く

 あとがき
 と言う訳で、久方ぶりのひだまりメイドラプソディー本編の更新となりました
 今回は、新キャラ・みいこさん無双と言うべき展開だった……(笑) 原作あっちこっちでも結構凄い女性でしたからねぇ それを表現出来てれば、とは思います
 伊御さんやつみきはまだまだ出す予定はありません タイミングとしては、けいおん!の梓と大体同じぐらい、だと思います
 次からは、二学期編がスタートします まずはスケッチブックのケイトをどう出すか、が最大の課題、だと思っています(ぉ

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