「うーわ……ここいらもかなりゴチャゴチャしてるねぇ〜」
「ホントにこんな所に、お宝なんてあんのかよ……」

 遺跡の最深部、それを守護していた魔物を撃破し、その奥に有る扉を開けたそのさらに奥……
 そこもやはり、ゴチャゴチャと足の踏み場も無い、と言う表現が最も相応しい程に散らかっていました
 しかし、入り口すぐの場所と違い、ここ最深部は、ガラスと思しきものや何らかの仕掛けを連想する様な物で溢れかえっていました
 そんな部屋の状況に、野田と友兼はそう愚痴り、何かしら有るかも、と言う期待を持っていた一部は、それに頷いてしまいました

「ここは結構広そうだからな……こうやって固まって動くよりは、数人単位であちこち調べた方が効率は良さそうだ」

 透夜のその一言で、一部は魔物が出るんじゃあ……と言う表情になる者もいましたが、おおむねそのやり方に全員一致となりました

「さて、風見の予想が当たってるのかどうか……楽しみと言えば、楽しみね」
「ああ、例のここにいるっていう、幽霊のダイイングメッセージか……」

 あちこち散らばる編成を決めた後、歩き出す他の物を確認して佳奈多と勇二も歩き出そうとしますが……

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!」
「「!!」」

 そんな時、野田の叫び声があたりに響き渡ります

「み、みんな! ちょっとこっちに来て!? ここに人っぽいのが有る!!」
「それも一人じゃねぇ! 五人……いや、八人か? なんか透明な筒っぽい物に入ってるんだ!」

 野田と友兼の言葉に、散り散りになっていた皆が、徐々にその場所に集まって行きます

「……裸の……女の子……?」

 それを見た皆の中で、透夜が代表するように、呟きます
 そう、野田と友兼が見つけた物は、すべてが死んだように眠っている、可愛い女の子達だったのです


  ひだまりメイドラプソディー 第三十九話 遺産!


「も、もしかして、死んでるんですか!?」
「と、言うよりも、封印されてる、と言う表現の方が適切かもしれないな」

 目の前にいる女の子たちに、如月がうろたえるように声を上げますが、来ヶ谷が目の前の存在に少々興奮したように声を上げます

「んで……コレはどうやって開けるんだ?」
「ちょっと待って……えー……っと……こう言うのは、得てしてスイッチとかボタンが……コレね……」

 勇二の至極最もな疑問に、さわ子がその中の一人が包まれていた透明な筒の下に会ったスイッチの羅列を押して行きます
 そして適当に押して行くと、その筒が上の方に上がって行きます

「よし! 引き下げるから、時雨さんに来ヶ谷さん! 手伝って!」
「「分かりました」」

 その女の子を引き下げると、それをさわ子が代表して、あちこち調べて行きます

「特に腐乱してる訳じゃないけど……コレは凄いわね……多分何かしらの金属で出来てるんだけど、人間と変わらない柔軟さが有るのよ……」
「って事は、金属と魔力で作られた魔導生命体、って事ですか?」
「? 魔導生命体、ですか?」
「ああ、魔界と神界を中心に、各国が共同で開発してる、超強大な魔力を持たせた特殊生命体の事さ 亜麻さんもそれに関わってる」

 女の子の体をあちこち触って、それにいちいち驚くさわ子に、透夜は知り合いが関わってる、とあるプロジェクトを思い出します

「おい、ちょっと良いか?」
「? 律太さん?」
「こんなのを見つけた 先生、読めますか?」

 女の子を調べていたさわ子達とは別に、色々調べていた律太や上野、柴田達が、何枚かの紙を持ってきました

「ちょっと貸して……これは昔の文字ね……えぇっと……」

 さわ子がその紙を受け取ると、一文字一文字を確認するかのように、視線を巡らせます

「どうやら、風見君の予想は当たったみたいよ……? この子たち、もっと沢山作られてたみたいだけど……!」

 何かしらの事故で、大半の子が潰されたみたい……! さわ子がそれを言う必要が有りませんでした

「とりあえず、偶然生き残った人達が残した手記みたい 何かしらの方法で、今日まで残された……そう思って皆聞いてね?」

 さわ子の言葉に、その場にいた皆が頷いたのを確認すると、さわ子はその文章を読み始めます

『我らは願う……この場所を見つけた勇者たちよ 君たちに、彼女たちの生き残りを託す
 本来彼女たちは、我々人間の生活を豊かにする手助けをする機械として作られた それ故、人の心を持たせようと思った……
 しかし、軍は大陸全てを己の物にせんが為に、彼女達を破壊の兵器にしようと企んだ……
 我らは拒否したが、軍は彼女達に無理やり武器を持たせた……しかし、我らは彼女達に、心まで破壊の色に染める事を拒否した……
 そして、軍はそれに怒り、我らを殺そうとした……それ故我々は、彼女達を逃そうとしたが、時間が間に合わなかった……
 我らは、彼女達に人を殺させる事は望まない! それを我らの「娘」にさせる事など出来ようはずが無い! それ故、我らは、この施設を破壊し、彼女達を兵器にする事を拒否することにした……!
 どうか、この手紙を読む者よ……彼女達に一人でも生き残りがいた場合、我ら人と変わらぬ生活を送らせて欲しい……!
 そして願わくば……彼女たちの力を、全てを破壊する刃では無く、全てを守る盾として、使われる事を願う……ミズシマ、カレリーナ、グレビッチ、シグレ、ヒメユリ、ナガセ……』

 その文章を読み終わると、さわ子は深く息を付きます

「……なんて言うか……凄い、ね……」
「……ああ……」

 ここで研究していた研究者達からのメッセージに、なずな達は胸から湧き上がる物を感じました
 彼らは、この少女達を、兵器にする事をよしとしなかった――出来ることなら、何処にでもいる女の子として、この世界に住まわせたかった筈だ、と言うのを嫌と言うほど理解したからです
 そして、この研究所を破壊する事でしか……彼女達が全て壊れるかもしれない方法でしか、彼女達を破壊の兵器として使われる事を防ぐ方法が無かった―――彼らの無念を思うと、心が痛い位に締め付けられました

「それで……どうするよ……?」
「考えるまでも無いですよ……!」

 律太が口を開くと、透夜は、周りが驚くほどの力強い言葉を返しました

「助けてほしいってんなら、助けましょう! 助かる方法だって、簡単なんだしさ!」
「そんなあっさりと……絶対になんとかなるんですか!?」

 少女達は絶対になんとかなる……!そう言わんばかりの透夜の言葉に、なずな達は思わず互いに目を合わせた後、透夜に目を向けます

「さっきも言ったろ……? こいつらは一種の魔導生命体の可能性があるって…… だからさ、それを調べてる奴らの責任者にこいつらを引き渡せば、こいつらも万事幸せだ」
「成程……確かに、理に叶ってるわね……」

 透夜の言葉に、さわ子も納得したように頷きます

「それで、その連中の責任者って誰だよ?」
「あら? 大体想像出来てるんじゃないですか?」

 律太がさらに透夜に問いかけますが、それに応えたのは、なんと亜沙の方でした

「魔族である、ボクの母……時雨亜麻が研究してる研究所の責任者……つまりは……」
「魔王様か……! んで、信用できるのか?」
「とりあえずの根回しはしてみます 神王様共々娘に甘いですからね……そこん所からのアプローチをしようと思います」

 透夜の力強い言葉に、なずなや乃莉、如月達は、いずれ彼女たちとお喋り出来る日が来る事が、今から楽しみになるのでした―――

 次回に続く

 あとがき
 遺跡編、今回でほぼ終わりです お宝の内容はどうだったでしょうか? 皆さんの納得行くものだったでしょうか?
 私にとっては、このSSを描き始めてから、「彼女達」をどう出そうか……そう考えて、その結論が、今回の遺跡編と言う事に相成りました
 次、何時彼女達を出せるかは、今の所未定ですが、彼女達をどう活躍させるか……楽しみに待っててくださいね
 今回の遺跡編で暫くシリアス風味だったので、暫くはカオスかほのぼのになるかと思います

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